高校デビューに失敗した無能探索者は人間を極める～レベルもスキルも能力値もない俺に何故か美少女が次々と近づいてくる件～

第188話 友の救出と重なる勘違い

「アキ！！ちっ」

　首にモンスターの手の指が食い込み、アキの眼が白目を剥き、口から泡を吹いている。アキの首が今にも折られてしまいそうだ。

　それだけはさせねぇ！！

　でも、ここから走ったんじゃ間に合わない！！

「シア！！」

「ん」

　シアは俺の意図をくみ取ってくれる。それは先ほどのDランクダンジョンのスタンピードの制圧で覚えたばかりの技を繰り出そうという合図だった。

「はぁ！！」

「ん！！」

　俺は拳に気功を纏わせて、シアは剣に魔力を纏わせて打ち出す。

―ゴォオオオオオオオオッ

―ブゥンンンンンンンンッ

　俺から放たれた気はまるで龍のような形を作り、シアから放たれた魔力はブーメランような形をした飛ぶ斬撃がアキを掴んでいるDランクダンジョンのボーナスモンスターもどきに向かってすさまじいスピードで飛んでいく。

『ちっ！！なんだ〇＝＊＋～｛は！？』

　前は聞き取れなかったボーナスモンスターの言葉が所々聞き取れるようになっている。これも会話が進化しているおかげなのかもしれない。ただし、まだまだ読み切るには熟練度が足りないようだ。

　モンスターは俺達の遠距離攻撃を脅威を見たらしく、アキを横にぶん投げて、自身も攻撃を躱した。

―スパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ

―パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパァンッ

　しかし、そのモンスターの後ろのダンジョンの入り口に居たモンスター達は巻き込まれるように直撃を受けて、数百匹が一度に姿を消した。

「アキッ！！」

―ガシッ

　俺は思いきり地面を蹴って飛んでいくアキの背後に回って受け止めた。

「あっぶねぇ。間一髪だな」

「ゴホッゴホッ！！……普人……か？……」

　俺の声に反応したのか、辛うじて意識があるアキが薄っすらと目を上ける。

「おう、生きてるか？」

「……逃げ……ろ……ヤバい……」

　アキにこんなことを言わせるなんて、アイツとんでもない卑怯者なんだな。辺りにはピクリとも動かない探索者達が横たわっている。それも数十人程いるのでDランクダンジョンのスタンピードと言えど、これだけいれば問題ないはずだった。

　ただ、ここにいるメンバーがDランクモンスターくらいに負けるわけがない。ということは、あいつらは話をするだけの知能があるみたいだったから、人質を取るとかしたに違いない。

　許さない。

「分かってる。心配するな。あいつらは卑怯な手段を使ったんだな。そうじゃなきゃこんなことになるわけないもんな……」

「……ちが……」

―ガクッ

　俺が心配させないように出来るだけ笑顔を作って話しかけると、何かを言いかけたアキがそのまま意識を失い、体の力も抜けてしまった。

「アキッ！！」

　俺は死んでしまったのか思い、アキの胸に耳を当てるとトクントクンと心臓の鼓動が聞こえたのでどうやら気を失っただけのようだ。

　ふぅ、死んでいたら生きているのを後悔するまで痛めつけてやろうと思ったんだけど、そうじゃないみたいだからすぐに終わらせよう。

「七海！！すぐに治療に当たってくれ！！」

「うん！！」

「天音はその護衛と怪我人の移動！！」

「りょーかい！！」

「零は二人の様子を見つつ、周辺警戒を頼む！！それから怪我人の移動も手伝ってくれ！！」

「分かったわ！！」

　俺はアキを寝かせ、シア以外の三人に指示を出すと、全員が頷いてすぐに取り掛かる。

　敵はこちらを警戒しているのか何もしてこない。

　七海たちが怪我人を移動しようとすると、相手が動こうとしたので、こっちも牽制するように一歩前に踏み出す。

　睨み合いをしている間に、一人、また一人と少し離れた場所に寝かせられ、七海が回復魔法で治療を始めた。

『おま；‘（’＆はだ？』

「うるせぇよ、死ね！！」

　相手は何か話しかけてきたんだけど、耳を傾ける価値もないので、俺はすぐに相手の懐に潜りこみ、大分コントロールできるようになった気功パンチを打ち込んだ。

―パァンッ

　そしたら、今一瞬でモンスターは消えた。

『～～！？』

　目の前で仲間が消えたことが衝撃なのか、ダンジョンの入り口辺りで固まっているモンスター達の顔が驚愕に染まっていた。

「あれはDランクダンジョンのボーナスモンスターだと思う。確か森林ダンジョンで出会ったのボーナスモンスターはあんな感じだったからな。なんだか知能もあるみたいだから気を付けろ」

「ん！！経験値とお金を沢山ゲット！！」

「はははっ！！その意気だ！！」

　俺はシアに自分の予想を語ると、シアは体の前で両拳を握りしめ、無表情のまますこし鼻息を荒くしていた。俺はいつも変わらないシアに笑いがこぼれた。

「それじゃあ、殲滅だ！！」

「ん！！」

　俺達はダンジョンの入り口付近で固まっていたモンスターの所めがけて走り出した。

　ただ、相手は知能があるとは言え、突然のことに対応できず、周りに人質にできるような相手もいなかったので、十分もせずにボーナスモンスターは壊滅した。

　ただ、その中にはDランクのボーナスモンスターよりも大きい魔石を落とすモンスターがいて、Dランクの超ボーナスモンスターと認定された。

「～～！？」

　しかし、シアが突然体を震わせ、顔を青くする。

　今まで倒したモンスターよりも強い気配が奥から四つやってくる。こいつらはおそらくDランクの超ボーナスモンスターよりも強い。

　おそらくCランクのボーナスモンスター。

　俺はシアよりも前に立ち、その四人が出てくるのを待った。