第043話 犬とダンジョンで遊ぶ

 生徒会長からの呼び出しがあった日は、精神的に疲れてダンジョンに行く気分ではなくなったので、寮に戻ってラックのモフモフに癒されながらベッドでゴロゴロして過ごした。


 明くる日。


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 ■名前

  佐藤普人

 ■熟練度

 ・神・鼓動(99999/99999)

 ・神・代謝(99999/99999)

 ・神・思考(99999/99999)

 ・神・呼吸(99999/99999)

 ・真・五感(76494/99999)

 ・真・直感(76494/99999)

 ・殴打(998/9999)

 ・蹴撃(979/9999)

 ・神・防御(9999/9999)

 ・愛撫(3885/9999)

 ・隠形(5692/9999)

 ・会話(315/9999)

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 熟練度はある程度伸びたけど大きな変化はない。


「ウォンウォンッ」


 ラックが授業を終えて部屋に戻ってきた俺をせっつくように頭を擦り付ける。


「なんだ、散歩に行きたいのか?」

「ウォン」


 しゃがんで頭をわしゃわしゃと撫でてやると、首を縦に振った。


 一度ストレス発散に連れて行ったので、ストレスが溜まってくると、連れてって欲しくなるんだろう。今日は金曜日だし、最悪泊りがけで朱島ダンジョンでボーナス魔石を乱獲するのもいいかもしれない。


「よし、そうと決まれば早速準備をしに、買い物に行くぞ!!」

「ウォン」


 俺はカバンを下ろして着替えて、近所にあるショッピングモールに向かい、キャンプ道具や食材を買い込んだ。それらの荷物は全てラックの力で影の中に仕舞い込み、意気揚々と朱島ダンジョンまで軽く走っていった。


「何をしている!?」


 余りに自然に朱島ダンジョンの目の前までたどり着いてしまったため、俺は警備をしている探索者に声を掛けられてしまった。


「ははははっ。ニュースでやっていた朱島ダンジョンを一度見てみたくなりまして……」

「全く……そういう奴が多くて困る。ここは危ないからあっちへ行きなさい」


 苦笑して頭を掻きながら誤魔化すと、警備員は呆れるように肩を竦めて手でシッシッと追い払った。


「は、はい、失礼します」


 俺は内心ドキドキしながらその場を去った。


「ふぅ~、ちょっと浮かれすぎたな」


 接近してくる警備員の気配には気づいていたんだけど、ボーナス魔石を乱獲できると思うとワクワクしてしまって、うっかりここが封鎖されいているダンジョンであることを忘れていたんだ。


 俺、反省。


「それでは行きますか……」


 俺はダンジョンから少し離れ、辺りを探知して誰もいないことを確認すると、ラックの力で影に潜り、ダンジョンの中へと歩いて行った。


「ふぅ、侵入成功」

「ウォンッ」


 俺とラックは影から飛び出し、お互いに顔を見合わせてニヤリと笑う。


「よーし、日曜日まで泊りがけで朱島ダンジョンのボーナス魔石を取りまくるぞ!!」

「ウォンウォン!!」


 俺が拳を天井に向かって突き上げると、ラックも辺りを飛び跳ねて嬉しさを表現していた。


「よーし、二人一緒に狩りをすると、片方が暇だからな。ここはどっちが多くのボーナス魔石を取ってこれるか勝負することにしよう」

「ウォン!!」


 俺の提案にラックも望むところのようだ。しっぽをブンブンと振ってうずうずとしているのが分かる。


「それじゃあ、一応範囲を決めておこう。期限は今日の二十二時まで。合流地点は四階への階段の前。行っていいのはこのダンジョンの一階から三階まで。影の力は魔石を仕舞うのに使う以外禁止な。俺もパンチしか使わないからな。ルールを破ったかどうかはすぐに分かるからな?ちゃんと守るんだぞ?」

「ウォン!!」

「ちゃんと分かったみたいだな。それじゃあ、この石を俺が投げて地面に落ちたらスタートだ。準備はいいか?」


 俺はその辺に落ちている石を拾ってラックにもちゃんと見えるように顔の前に持っていきながら尋ねた。


「ウォンッ!!」

「それじゃあいくぞ!!せーの!!」


 ラックは準備万端らしいので俺は小石を軽くのつもりで投げた。


―ビシッ!!


 しかし、勢いがう良すぎてダンジョンの天井に深々と突き刺さって落ちてこなかった。


「クゥンッ」

「へへへへ、悪い悪い。ちょっと力加減を間違えたみたいだ。今度こそいくぞ!!せーの」


 何やってんだよ、ご主人様とでも言いたげな表情で悲し気に鳴くラックに、俺は慌て再び石を拾って、へらへらと誤魔化した後、今度こそ力加減を間違えないようにとても軽めに石を投げた。


 今度は天井にぶつかることもなく、緩やかな曲線を描いて飛んでいき、地面に落下した。


―ドンッ!!


 その瞬間、ダンジョン内に振動が走った。俺とラックが思いきり地面を蹴ったからだ。しかし、ラックは俺よりも遅かった。勝負に情けは必要なし。俺は探知で敵に位置を確認し、そっちに向かって最短距離で走り出した。

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