第013話 準備完了

 次の日も昨日と同じように、一日かけてグミックの攻撃を受け続けるという苦行をこなした俺は、限界まで防御を上げることに成功した。


 さらに明けて次の日の四月七日。


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 ■名前

  佐藤普人ふひと

 ■熟練度

 ・神・鼓動(99999/99999)

 ・神・代謝(99999/99999)

 ・真・思考(23340/99999)

 ・新・呼吸(21974/99999)

 ・五感(76356/99999)

 ・直感(76356/99999)

 ・殴打(423/9999)

 ・蹴撃(416/9999)

 ・神・防御(9999/9999)

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 "鼓動"、"代謝"、"防御"は"神・鼓動"と"神・代謝"、そして"神・防御"に至り、もう熟練度が上がらなくなってしまった。


 ここまで防御の熟練度を上げるだけ上げたので、Eランクダンジョンに行ってみたい。


 そう思ったけど今日は四月七日。明後日四月九日が入学式だ。流石に荷造りしないと色々マズい。明日には先行して出発し、ホテルに泊まって次の日に入学式に向かう。そして九日に合わせて必要な私物を送っているので入学式の後、入寮する必要があった。


「普人、荷造りしたの?」


 朝ご飯の時間に母さんにもせっつかれてしまった。俺はすぐに部屋に戻って必要そうな物をリュックとキャリーケースに詰め込んでいく。


 必要なものはあれとそれとこれと……。


「あ~あ、明日から暫く兄ちゃんとはお別れか~」


 荷造りをしていると妹の七海がとぼとぼと部屋に入ってくる。


「なんだ、寂しいのか?」

「べーつに」


 俺は荷造りを中断して立ち上がって七海の前に立つと、そっぽを向く彼女の頭をポンポンと撫でる。


「兄ちゃんはちょっと寂しいけどな」

「私もホントは寂しい」


 俺が悲し気に呟くと、七海は俺にギュッと抱きついてきた。


 思えばなんだかんだ七海は俺にべったりな時期が多かった。俺も七海が遊んでほしいと言えば遊んだし、何かしてほしいといえばしてやった。誰かにいじめられそうになれば率先してかばってきたし、七海のことを極力守ってきたつもりだ。


 そんな俺の宝物のような七海と離れるのはもちろん悲しいけど、そろそろ七海も中学生。そろそろ兄離れも必要な時期だろう。俺がなんでもかんでもしてやるのは七海にとっても良くない。


 とまぁ、色々考えたけど、寂しくて分かれるのが辛い!!


 俺の方が妹離れできなそうだ。


『"撫でる"の熟練度が一定に達しました。表記条件を満たしました』


 妹を暫く撫でていた新しい行為が熟練度に現れたようだ。


 まさかこんな動作が登録されるとはなぁ。面白いもんだ。


 しばらくギュッとしていたら妹も満足したのか俺から離れたので、俺は荷造りを続ける。その間妹はベッドに腰を下ろして足を揺らし、荷造りを眺めながら俺としばらく会話していた。


「ス~っ。クンカクンカ」


 妹が抱き着いていた間、俺の匂いを思いきり吸い込んで嗅いでいたような気がするのは気のせいだと思いたい。


 荷造りが終わった後は、暫く会うことが出来なくなるので、妹とゲームをして遊んだり、家族で話をしたりしてのんびりと過ごした。探索者になってからのことを話すと思いのほか沢山話すことになって結構時間が経っていた。


「ついに明後日には高校デビューか。絶対に失敗しないように気を付けないと」


 やることがすべて終わり俺はベッドに横になる。


 探索者デビューしてからは毎日があっという間に過ぎていった。毎日新しい事の連続で新鮮だった。熟練度しかない俺じゃあ大したところまでいけないかもしれないけど、まだ始まったばかりの探索者人生をもっと楽しめたらと思う。


 でも同級生には絶対バレてはいけない。なにせ適性はあるのにレベルも能力値もスキルもないなんて絶対バカにされるからな。別に顔を隠してはいけないというルールがあるわけでもないから、ダンジョンに潜って出来るだけ早くお金をためてフルフェイスのヘルメットでも被っていくようにしようかな。


 それだけで大分身バレのリスクは減ると思う。後は着ていく服はどこかで着替えるようにしておけば、声もヘルメットで籠って分かりづらいだろうし、大丈夫じゃないかな。


 高校デビュー以降のダンジョン探索のことを考えながら、俺はいつしか意識を手放していた。

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