異世界帰りの元剣聖、二度目は王子に転生し、魔法を極める〜恵まれた家柄と才能で世界最強〜

茨木野

プロローグ

01.異世界帰りのサラリーマン、王子に転生する


 俺はブラック企業に勤める、平凡なサラリーマンだ。


 今日も今日とて、帰ってくるのは日付をまたいでから。


「つかれた……しぬ……」


 俺は玄関で、崩れ落ちるように、うつぶせで倒れる。


 ……社会人になって6年目。


 ガキの頃思い描いた、カッコいい大人なんてものからは遠く離れた姿。


 毎日夜遅くまで働き、趣味に費やす時間もなく、こうして家と仕事場を行ってかえっての日々……。


「……なんで、生きてるんだろうな、俺」


 ずりずり……とまるで芋虫のように動きながら、ベッドルームへ向かう。


 腹も減らない。食べる元気もない。


 ベッドに横になるときだけが至福。

 寝転んでスマホをいじってるときだけが、……ああ、心地よい。


「……あ、もう秋アニメはじまってるんだ」


 サブスクに配信されてるアニメ一覧。


 だが……見なくなっていた。


「見る元気ないし……な」


 一クール12話のアニメ。

 中高大、と大好きだったアニメも、大人になるともう見なくなった。


 12話を最後まで見る元気がなくなってきた、と言えばいいだろうか。


「明日も6時おきだ……もう寝ないと……」


 スマホをいじってるだけで眠気が襲ってくる。


 ああ……ほんと、嫌な人生だ。


 どうしてこうなったんだろうか……。


    ★


 ……その日、俺は夢を見ていた。


『追い詰めたぞ、魔王!』


 夢のなかで、俺は【剣聖】だった。


 剣聖。剣を極めしもの。


 夢のなかの俺は、魔法の才能が一切ない代わりに、天から超人的な肉体を与えられていた。


『死ぬがよい、人界の英雄よ!』


 俺の前には黒い肌に角を持った、恐ろしい存在……魔王がいる。


 魔王は手を頭上に上げると、巨大な魔法陣を一瞬で展開。

 

 青い炎の鳥が出現する。


『摂氏数千度の炎だ! 焼かれて死ね!』


 空気も肺も焼いてしまうほどの炎を前に……。


 俺は、こう思った。


「美しいな……」


 俺はもとより、魔法に憧れていた。


 だってそうだろう?

 ラノベやアニメで、主人公達の使う魔法の、なんと魅力的なことか!


 空を飛んだり、炎を飛ばしたり……。


 異世界に来たら、まず魔法を使いたいって、そう思っていた。


 けれど、そのときの俺には、魔法の才能がなくて、がっかりした。


 魔法が当たり前にある世界で、俺だけ魔法が使えないで居た。


 剣聖の力があったけれど、やはり、あこがれるのは魔法だ。


 魔王とは、魔の王。

 つまりこの世界の誰よりも、魔法の腕に長けた存在。


 そんなやつが使う魔法は……魔法の極致ともいえる。


「こんな綺麗な魔法の炎を、けすのはもったいねえが……」


 俺は聖剣を抜いて、人の目では終えないスピードで、剣を振るう。


 天から与えられたのは、魔法の才能ではなく、強靱な肉体だった。


 一説によると、魔法が使えないという【しばり】が、俺に神の奇跡を宿らせたという。


 すなわち……。


 ズバンッ……!


『ば、バカな!? 魔法を斬っただと!? 人の身で!?』


 俺の力は常人を遙かに凌駕する。


 魔王の強大な、魔法でさえも、俺は切って捨てることができた。


『悪いな、魔王。俺は手加減するつもりはないぞ』


『フンッ……! それでこそ、わがライバルに相応しい……!』


 ……それから、数日の死闘を繰り広げた。

 夢のなかの俺はボロボロだった。

 しかし、そのかいあってか、魔王を死に追い詰めることに成功した。


『ここまでか……だが、負けぬ! これで最後だ!』


 魔王が隠し持っていた術式を解放。


 天より降り注いだのは、神の雷。


 俺の体を雷が焼く。


 死に近づきながら……俺は笑っていた。


『す、げえ……魔法って、すげえよ……!』


 剣聖の肉体は、神をも凌駕すると言われていた。


 そんな俺に、ダメージを負わせるほどの魔法。


 ああほんと、なんで、俺には、こんな素晴らしい力が宿っていないのか……。


『ば、バカな!? 神の雷をうけて、まだ肉体を保っていられるだとぉ!?』


 驚愕する魔王めがけて、俺は最後の奥義を放つ。


 強力な、上段斬り。


『【陽光聖天衝ぉおおおおお】!』


 ……かくして、俺は魔王を討伐した。


 そして……。


 そして……………………。


    ★


「ふぎゃー! ふぎゃー! ふぎゃー!」



 ……気づけば、俺は赤ん坊になっていた。

 ど、どうなってるんだ……?


【解。マスターは異世界に転生しました】


 うぉ!? な、なんだぁ……?


 どこから声が!?


【告。わたしはマスターに付与されたエクストラスキル《回答者》。マスターからの疑問に正しき回答を示すもの】


 む、難しい……。

 もっと簡単に頼む……


【解。ネット小説によくある天の声】


 あ、なるほど。天の声ですか。

 なるほどー……。


 って、あれ?


 お、俺……どうなってるの……?

 それに異世界って。


「おお! 生まれたか! リディア!」


 俺のことを、のぞき込むおっさんの姿があった。


 ひげ面の、なんだか偉そうなおっさんだ。

 俺の体を、軽々と持ち上げる。


 まじか!?

 え、これって……、もしかして……。


 転生?


【是。マスターはゲータ・ニィガ王国の第13王子として、異世界に転生しました】


 王国……。

 王子!?


「この子に名を授けないと……そうだな。レオン。【レオンハルト】! おまえの名前は、今日から【レオンハルト=フォン=ゲータ=ニィガ】だ!」


【告。称号、《異世界人》、《王子》、《二度転生者》を習得。エクストラスキル《回答者》と統合されユニークスキル《全能者》を習得しました】


 まてまてまて!

 情報量が多すぎるぞ……!


 ……てゆーか、二度転生者って?


【解。マスターは、二度の異世界転生を経験しております。一度目は剣聖として。二度目は王子として】


 ……そうだ、思い出した。


 俺がよく見る夢、あれは、現実に起きたことだったんだ!


 俺は一度この世界に来て、剣聖として活躍して、魔王を倒したんだ!


 けれど魔王からの神の雷を受けて、そのショックで記憶が失われてたんだ!


【是。今世では前世の剣聖の能力に加え、全能者の恩恵による魔法スキルを習得しております】


 魔法!?

 俺、魔法使えるの!?


【是。試しにユニーク魔法を使いますか】


 もちろんイエスだ!


【是。《神の雷》を使用します】


 あ、やっべ……


「む? どうしたレオンよ……」

「国王陛下! 危ない!」


 護衛が、国王を突き飛ばす。


 俺は……右手から凄まじいまでの、魔法を放つ。


 ずっがぁああああああああああああああああああん!


 耳鳴りがする。

 これは、魔王が使った神の雷だ。


「な、なんということじゃ……レオン。おぬしは……生まれながらに、ここまでの魔法力を身につけておるとは!」


 親父は俺を叱らず、むしろ褒めてくる。


「すごいぞレオン! おまえは、きっと将来すごいものになる!」


 ……こうして、俺の二度目の異世界転生ライフは、スタートしたのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【★あとがき】


読者の皆様へ、大切なお願いがあります。


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