第19回 ミコト編⑥
「なにかしら?」
いきなりの出来事に少し戸惑ったが、渦中の人物と接触を図れたことに若干の優越感に浸る。そんな思いを抱きながらも、噂のプレイヤーが一体どんな商品を提示してきたことに興味が移り、詳細を確認する。
【鉄の剣】鉄インゴットを使用して作られた剣。石製の剣と比べ、威力や耐久度などのその他の能力が向上している。 レア度:アンコモン 耐久度:120 / 120 効果:【STR 上昇 低小】、【AGI 上昇 最小】品質:最低
「ぶほっ」
あまりのことに吹き出してしまった。女の子にあるまじき行為だが、これは仕方のないことだろう。……なに、どこに女の子がいるんだって? よしそこのお前、ちょっと表出ろ。
とにかく、今は情報の整理だ。見ての通りだが、スケゾーによってもたらされたこの武器は現状では最強というべきものだろう。
その根拠がどこにあるのかいといえば、現段階で生産職プレイヤーが主流としている素材は木製のもので、一部のトッププレイヤーがようやく石製の素材に着手し始めているのが現状だ。
そんな中、さも当たり前のように件のプレイヤーが出してきたのは、品質が最低とはいえ鉄製の武器だ。今の時点で最高峰といっても過言ではない。
「品質が一番下とはいえ、それでも一本5000マニーか……」
今の私の所持金は、彼に売却したドロップアイテムの代金3510マニーと合わせて、合計7000マニー弱程の持ち合わせがある。所持金的には買えなくはないのだが、このあとの予定では他の装備も購入するはずだったので、鉄の剣を買ってしまうと他のものが買えなくなってしまう。
しかし、取引比率十倍というゲームのシステム上5000マニーという価格は、おそらく破格の値段と言える。この剣をオークションに出品すれば、最低でも20000マニーは下らないだろう。
「ええい、ままよ!」
いろいろと悩んだが、この機会を逃せばまたいつチャンスが巡ってくるのかわからないため、結局鉄の剣を購入することにした。
さっそく装備し、ステータスが強化されていることに嬉しさを感じる。しかしながら、ここで調子に乗ってすぐにリベンジをすることはしない。
確実性を高めるべく、私が向かったのは【出立の草原】だった。目的はたった一つ……そう、レベル上げだ。
スケゾーから購入した鉄の剣の試し斬りも兼ねてやってきたのだが、はっきり言ってすごいの一言だ。なにせ今まで複数回攻撃しないと倒せなかったMOBたちが鎧袖一触で倒されていくのだ。
まるでどこぞの無双ゲームの様に倒せる感覚にそう快感を覚える。なんとも心地いい。
それから数時間掛けてMOBたちを蹂躙しまくった結果、ステータスを確認するとこうなっていた。
【名前】:ミコト
【職業】:戦闘職
【ステータス】
HP 120 レベルアップまであと120
MP 25 レベルアップまであと397
STR G+ レベルアップまであと146
VIT G+ レベルアップまであと77
AGI G レベルアップまであと133
DEX G- レベルアップまであと204
INT G- レベルアップまであと313
MND G- レベルアップまであと405
LUK H- レベルアップまであと10
【スキル】:初級剣術Lv12、初級鑑定Lv11、初級槍術Lv7、初級短剣術Lv6、初級盾術Lv9
【称号】:なし
全体的にステータスが一段階向上し、ほとんどのステータスがGに上がった。LUKだけは手に入るポイントの関係上未だにHだが、概ねレベル上げの成果が出ていた。
スキルに関しては、序盤に覚えた初級剣術と初級鑑定のレベルが二桁に到達し、他も軒並み上がっている。
アーツも新たに【ダブルスラッシュ】、【正眼突き】、【クロスリッパー】、【シールドバッシュ】が手に入った。
ダブルスラッシュは剣術のアーツでスラッシュを二回連続叩き込むアーツで、正眼突きとクロスリッパーはスラッシュと同等のアーツらしい。シールドバッシュはその名の通り、盾を使った攻撃で低確率ながらも相手を一時的に気絶状態にさせる効果があるようだ。
「よし、これでなんとかなるんじゃないかしら」
積み重ねてきた努力の結果が、目に見えることでそれが自信に繋がることもある。今回のレベル上げでそれを知ることになるとは、ゲームといっても侮れないなと改めて思った。
とりあえず、ここで一旦レベル上げを切り上げ入手したドロップアイテムを換金するため一度街へと帰還することにした。
ショップでそのまま売っても構わなかったのだが、ギルドランクも上げたかったので、ギルドで依頼が出ていれば受けようと思ったのだ。
ギルドに到着し、受付カウンターでクエストの手続きをしてもらう。結果的にクエストのクリア回数が20回を超えた。手に入れた報酬金は合計で20000マニーだというんだから、私がどれだけレベル上げに専念していたかがわかるだろう。
そして、無事ギルドの昇級規定もクリアした様で、ギルドランクが木級から石級へとランクアップした。
懐具合も温かくなったことで、なにかいい装備ないかとショップを検索していると、興味深いものを発見したので迷わず購入していく。
購入したものをリストにすると以下のような感じだ。
【石のクナイ】価格:400マニー
【石の手裏剣】価格:100マニー
【木刀】価格:300マニー
【投擲玉(木)×五個】価格:五個で150マニー
【トンファ】価格:250マニー
【木の小盾】価格:250マニー
【木のヘルム】価格:300マニー
【木の小手】価格:200マニー
木製が主流となっているもののなかでも、比較的性能が良く価格も手ごろなものを購入した。
さっそく装備をし、ステータスで確認する。
【武器】:鉄の剣(【STR上昇 低小】、【AGI上昇 最小】耐久度120)
【頭】:木のヘルム(【INT上昇 最小】 耐久度70)
【胴】:ビギナーズシャツ(【VIT上昇 最小】耐久度∞)
【腰】:ビギナーズパンツ(【VIT上昇 最小】耐久度∞)
【腕】:木の小盾(【HP+15】、【VIT上昇 最小】耐久度70)
【脚】:ビギナーズシューズ(【AGI上昇 最小】 耐久度∞)
【装飾品】:なし
未だに初期装備のビギナーズ系の装備なのはどうかと思うが、他に目ぼしい防具がないのでとりあえずこのまま保留にしておく。
新たに手に入った装備によってさらに強くなったので、これでようやくリベンジに行くことができる。
「待っていろ、私をボコボコにしてくれた借りを返してやるからな……」
顔にこれでもかという醜悪な笑みを張り付けた私は、そのまま前回死に戻ったエリアへと向かった。道中私の顔を見たプレイヤーが狼狽えていたようだが、そんなことはどうでもいい。
と思ったが、さすがに冷静さを欠いていることに気付いた私は、クールダウンも兼ねてここで一旦ログアウトすることにした。
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