侵されるアーデンの森と神々

森の異変

 カンカン。

 手に持った細剣を収めた鞘で小突くと、甲高く小気味好い音が響く。

 その音を鳴らした者の周囲には複数人が首を上に巡らせていたり、周辺を警戒したりしていた。

 部落の警戒をしていた者が、遠方に不可思議な落下物を確認してから数日。

 彼等は森の中を注意深く移動しそれに遭遇した。

 森の中という事もあり、その落下物を確認出来たら僥倖程度の期待だったのだが、いざその場所に辿り着いてみれば、そこには見上げんばかりの金属の壁が立ち塞がっていた。

 森の中で活動するに適した格好をした笹穂耳を有した彼等は、その不気味な壁を確認する。

 しかし、壁は何の反応も示さなかった。

 警戒に当たっている守衛すら居ない様だったので、この異様な壁の存在を伝える為に彼等は森の中へと帰って行った。

 その後ろを不可知化した機械知性体が、後を付けていることに気付かずに。


 此処は現地民からアーデンの森と呼ばれる広大な森。

 北にノールデングラシャン王国、南にスードヴェス王国が存在しその緩衝地帯として存在する地域でもある。

 そして、それと同時にこの森の中にはエルフが氏族単位で部落を作り、森と共生して慎ましやかな生活を営んでいる場所でもある。

 ピオニアが降り立ち拠点化している地点より山を挟んだ反対側、そこにはエルフ達から突然変異または先祖返り等の理由により生まれたハイエルフとそれを世話するエルフが住まう部落があった。

 ピオニアの降下ポッドを山越しに確認した目の良いエルフからの報告を受けて編成された調査隊は、謎の壁に遭遇した後再びハイエルフが住まう部落へと帰っていく。

 確認した金属の壁、何の反応も示さなかったその壁の不気味さに心を冷やしながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る