第24-1話 「ほら‼︎ 元気‼︎」
翌日、私は楓大の言っていたことが信じられず、頭の中であれが嘘だったのか本当だったのかをずっと考えていた。
結局昨日から今日まで答えは出てないんだけど……。
「……わ」
流石に新谷んに彼女がいるっていうのが嘘だったとは信じ難いよね……。
実際うるはちゃんはどう見ても新谷んのことを愛しているように見えたし、2人の息はぴったりだったように思う。
「……かわ」
やっぱり楓大が面白半分で嘘をついているようにしか思えないだよね……。
「椎川?」
「あ、新谷ん⁉︎ どしたの⁉︎」
私が考え事をしていると、いつの間にか新谷んが私の前に立っていた。
「いや、どうしたも何もどんだけ声かけても反応しないし、何か考え込んでるみたいだったからどうしたのかなと思って」
「べ、別に⁉︎ 何も考えてないよ⁉︎」
新谷んに話しかけられて動揺しているのが分かる。
先程まではそれほど暑くなかった私の顔の温度は一気に上昇している。
というか、新谷んってこんなに格好いい顔してたっけ……。なんか今にも吸い込まれそうというか……。
って何考えてんの私⁉︎
新谷んに彼女がいないって思った途端、新谷んに色目でも使い始めたってこと⁉︎
いや、でも冷静になって考えるんだ私。
仮に新谷んに彼女がいないという楓大の話が本当だったとして、それをいいことに私が新谷んのことを好きになったとしよう。
でも、新谷んは私と同じ理由で彼女がいると嘘をついているのであれば、女子である私に好意を寄せてもらいたくないはずだ。
それなら嫌われないようにするためにあまり下手なことはしないようにしなきゃ……。
っていうかもう新谷んに嫌われたくないって思っちゃってる時点でなんかダメじゃない私⁉︎ それって完全に意識してるってことだよね⁉︎
「別になんでもないってお前な……。なんか明らかに顔赤いし、熱でもあるんじゃないか?」
「熱なんてないよ‼︎ ほら‼︎ 元気‼︎」
そう言って私は腕をブンブンと回して見せる。
「……はぁ。やっぱり変だな。ほら、保健室行くぞ」
「保健室なんて大丈夫だって体調なんて悪くないし」
「体調悪い奴は大体そうやって言うんだよ。ほら、早く行くぞ」
「いや、本当に本当に大丈夫……」
「ダメだ。保健室で寝て休め。行くぞ」
その瞬間、新谷んは私の手を無理矢理掴み、私を保健室へと引っ張り始め、顔の温度は先程よりも更に上昇した。
体調が悪い私を気遣ってか、新谷んは私の方を振り向くことはなかった。
そのおかげで、保健室に到着するまでこの紅潮してしまった顔を見られなかったことが唯一の救いである。
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