4章 確信
嘘の判明
第23-1話 「ありがとじゃあねー」
新谷んとデートをしてから1週間が経過したある日、学校から帰宅して夜ご飯を食べ終わり、自分の部屋で新谷んと撮ったプリクラを眺めながらニヤニヤしていると、唐突に扉の部屋が開けられた。
そしてニヤニヤした顔のまま弟の楓大と目が合う。
「……何してんの?」
「ちょ、ちょっと急に入ってこないでよ‼︎」
「ノックしたけど返事なかったから入ってきたんだよ。ノックしてるのに気付かないそっちが悪い」
「本当にノックしたの? するならもっと強くノックしてよね」
「いや、結構強めにしたって」
「さあどうだか。それでなんの用なの? 用が無いなら早く出てってほしいんだけど」
「……へぇ。そんなこと言っていいんだ」
私はが楓大を部屋から出そうとすると、楓大はしたり顔でそう言った。
なぜ楓大が勝ち誇ったように私を見ているのかは知らないが、理由も分からずニヤニヤしている弟を見ているのは気分が悪い。
「な、なによ」
「別にぃ。せっかく姉ちゃんに姉ちゃんのためになる重大な情報を運んできてやったっていうのに、そんなに冷たくされたら教える気もなくなっちゃうなぁと思って」
楓大が言う重大な情報が何か検討が付かないがあそこまで強気で発言できるとなると、かなり重要なな情報を握っている可能性がある。
それなら部屋から追い出すわけにはいかない。
「な、何よ。もったいぶらないで教えてよ」
「えー、なんの見返りもなしに教えるってのはちょっとなぁ」
「あ、はい分かりましたもういいです帰ってください」
「ご、ごめんごめん。教えるからさ」
楓大の態度にイラっとした私は情報を書き出すよりも楓大を部屋から追い出すことを選んだが、楓大は出て行こうとはしなかった。
「それで、そこまで勿体ぶる重大な情報ってのは何なのよ」
「こないだ遊んだ新谷さんの話なんだけどさ」
楓大が新谷んの話? あのデート以来楓大と新谷んは顔を合わせていないはずだけど。
「新谷んがどうかしたの?」
「新谷さんの彼女さんのさ、うるはさんっていたじゃんか」
「そ、それがどうかしたの?」
「あの2人、付き合ってないんだってさ」
……はぁ。聞くだけ聞いて損した。
確か以前にも杏樹からそんな話を聞いた気がするが、2人からは嘘のカップルの雰囲気は感じられなかった。
そんな楓大の嘘、信じるわけがない。
「へぇーそうなんだー。ありがとじゃあねー」
「ちょ、ちょっと待ってその棒読み加減さては信じてないな‼︎」
「信じるも何も、そんな話信じられるわけないじゃない。新谷んが彼女いるって嘘つくメリットってなんかある?」
「はぁ……。鈍感すぎて腹が立つよ」
「お姉ちゃんに向かって腹が立つとはいい度胸してるね」
「姉ちゃんだって、男子に群がってほしくないと思って彼氏がいるって嘘ついてるだろ?」
「ま、まあそうだけど」
「新谷さんも、どうやら同じ理由みたいだよ」
「同じ理由?」
新谷んは身長も高いし顔立ちも整っていてイケメンだ。
それならば私と同じく仲間外れにされたり苦い過去を持っている可能性はある。
だからといって、私と同じ嘘をつこうと思うだろうか。
「いや、あんたそんな情報どこから仕入れてきたのよ」
「そ、それは内緒に決まってるだろ」
「内緒ってアンタね……。そんなこと言われたら余計に信憑性が無くなっていくんだけど」
「でも本当なんだよ。信じてくれ」
「そこまで言うなら少しは信じてあげるけどさぁ。なんでそれを私に伝えようと思ったの?」
「うーん……。姉ちゃんが新谷さんのこと、好きだろうから」
弟の発言に私は目を丸くした。
「--な、何言ってんの⁉︎ 私が新谷んを好きなわけないじゃん‼︎ と、というかそもそも新谷ん彼女いるんだし……」
「だから、その彼女がいないって言ってんの」
「そ、それは……」
「まあ別に急ぐことでもないだろうし、ゆっくり考えてみてよ。それじゃ」
そう言って楓大は部屋を出ていった。
なんなのよもう……。
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