第16-2話 「……ぐふっ」
「ごめんごめん。ちょっと遅れちゃった」
今日は嘘のダブルデート当日。
私たちは新谷んたちより遅く集合場所であるカフェへと入店した。
集合時間に若干遅れてしまったのはギリギリまで弟である陽彩が私とデートに行くのを渋っていたからである。
陽彩は両親に彼女の存在を隠しているので、「デート行ってくれないとママとパパに彼女がいることバラすよ」と脅してなんとかこのデートへ連れてくるのに成功した。
とはいえ、やる気のない陽彩を無理やり連れてきているのでボロが出ないかどうかだけが心配だ。
「遅いから先に入ってたぞ。集合時間くらいちゃんと……」
陽彩を連れて新谷んたちの前に到着すると、新谷んは陽彩に視線をやり話すのをやめた。
まさか家族だって気付かれた⁉︎
いや、流石に陽彩の容姿だけ見て私たちが家族だと気づくとは思えない。
ここは堂々とした態度をしていれば問題はないだろう。
「どうしたの新谷ん。私の彼氏のことジロジロ見て」
「べ、別になんでもない。はじめまして。椎川と同じクラスの新谷です」
「いや、椎川と同じクラスって俺も椎川……ッテ⁉︎」
陽彩が変なことを言いそうになった瞬間、私は陽彩の首を腕でガッチリと掴み、新谷んたちから少し距離を取った。
「ちょっとアンタ‼︎ 何変なこと言おうとしてるの⁉︎」
「変なことも何も、俺も椎川だから……」
「それが変なことだって言ってるんでしょうが‼︎ 自分から椎川姓名乗ってどうすんのよ‼︎ それを隠すためのダブルデートなんだから‼︎ 私とアンタが兄弟だってことがバレるでしょうが‼︎」
「そんなの知るかよ。ただでさえ嫌々付き合わされてるってのに……」
「じゃあアンタに彼女がいることパパとママにバラすよ?」
「ごめんなさい」
陽彩はどうしても自分が付き合っていることを両親に気づかれたくないようで、私がそう脅すと静かになってなんでもいうことを聞いてくれた。
簡単な弟である。
「ご、ごめんごめん。この人が私の彼氏の松坂楓大。年齢は同い年だから」
「ど、どゔも。ゴホッ。まづざがでず」
「それで、そっちの子が新谷んの彼女さん?」
「かっ彼女さん」
「どうした? うるは? おいうるは?」
「彼女さん……彼女さん……」
「ちょっとこい」
そういうと、新谷んはうるはちゃんの首を腕でガシッとつかみ、私たちから離れていった。
「姉ちゃん、新谷さんって普段からあんな乱暴な人なのか」
「いや、普段は絶対あんなことする人じゃないんだけど……」
あれはやはり彼女さんにしか見せない新谷んの一面ということなのだろうか。
私はまだまだ、新谷んの本質を何も知らないのかもしれない。
「こいつが俺の彼女のうるはだ」
「よろしく。椎川さん。松坂さん」
「そんなよそよそしくなくても大丈夫だよ。私たち同級生なんだからさ」
「何言ってんのねぇ……ぐふっ」
私はまた何か訳のわからないことを呟きそうになっていた陽彩に、肘打ちをくらわせてやった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます