新谷の理由
第9-1話 「大きな出来事」
高校生の俺、
顔面偏差値は控えめに言って上の下といったところで、彼女がいなかった頃は学校中の女子が俺に好意を寄せていたと言っても過言ではなく、そんな俺に彼女がいるのは不思議なことではない。
彼女がいるという事実は俺が通っている高校の中でも周知の事実となっており、学校内でこの事実を知らない者は存在しないだろう。
彼女の名前は
趣味だったオンラインゲームで知り合って連絡を取るようになり、そこから関係を深めて付き合うに至った。
オンラインゲームで彼女を見つけたと聞くと軽い男だと思われるかもしれないが、俺は彼女を愛している。
というのは真っ赤な嘘である。
俺は自分に女子が寄ってこないよう彼女がいると嘘をついたのだ。
彼女がいると嘘をつき始めたのは高校に入学してから半年が経過した頃。
俺の外見は控えめに言っても上の下。
自分で自分の外見を上の下と言えば嫌味に聞こえるかもしれないが、嫌味でも自慢でもなく客観的に見て上の下と判断できるからこそ自信を持ってそう言えるのである。
とはいえ、それは俺にとって喜ばしいことではなかった。
自分でも控えめに言って上の下と言えてしまう程の外見目当てで言い寄ってくる女子は中学の頃から両手では数えられない人数に上っていた。
内面は全く見ず外見だけを見て言い寄ってくる女子を俺が受け入れるわけもなく、毎度の如く拒否していたのだが、そうする度に男子生徒の間でも女子生徒の間でも俺の評判は急速に悪化していった。
別に俺は何も悪いことをしていない。
俺は俺なりに言い寄ってくる女子の内面と外見の両方を見て、その上で受け入れるか拒否するかを決めるようにしていたし、好きでもない女子の好意を無理に受け入れるべきではないはずだ。
それなのに、俺が大勢の女子からの告白を全て拒否していると、あいつは女の敵だと寄って集って俺に攻撃を始め、最終的には仲間外れにされた。
仲間外れにされた俺と仲良くしていた男子も、俺と仲良くしているだけで女子から嫌われるというので、女子だけでなく男子までもが俺の周りから離れていった。
そんな風に男子生徒からも女子生徒からも仲間外れにされる俺を見て、手を差し伸べてくれる女子は1人もいなかった。
一度は好きになった俺のことを助けてくれる女子が1人くらいはいてもいいのではないかとは思ったが、結局みんな俺の外見だけを好きになり、心の底から俺を好きになってくれる人なんていなかったのだろう。
女子生徒の間でも自分を格好いいと思っている自意識過剰な男だと噂が広まり、俺を取り巻く環境は最悪の状態となっていたが、高校生になれば何かが変わるのではないかと中学卒業時は淡い期待を抱いていた。
しかし、結局は何も変わらず中学と同じ苦い経験を高校でも経験することになる。
高校生になっても同じことが繰り返されるのかと絶望した俺は少しずつ学校を休むようになり、不登校になりかけていた。
ここで俺が不登校になったら負けたような気はするが、このまま学校に行かないようにするのが1番楽で最善の解決策なのではないかと考え始めていた。
しかしあの日、そんな俺の人生を大きく変える出来事が起きたのである。
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