彼女がいると嘘をつくことで謳歌できていた俺の人生を、隣席のイケメン彼氏持ち美少女が何の気遣いもなく破壊しようとしてくる
穂村大樹(ほむら だいじゅ)
1章 大きな嘘
嘘その1
第1-1話 「彼氏いるだろ」
高校生の俺、
顔面偏差値は控えめに言って上の下といったところで、彼女がいなかった頃は学校中の女子が俺に好意を寄せていたと言っても過言ではなく、そんな俺に彼女がいるのは不思議なことではない。
彼女がいるという事実は俺が通っている高校の中でも周知の事実となっており、学校内でこの事実を知らない者は存在しないだろう。
彼女の名前は
趣味だったオンラインゲームで知り合って連絡を取るようになり、そこから関係を深めて付き合うに至った。
オンラインゲームで彼女を見つけたと聞くと軽い男だと思われるかもしれないが、俺は彼女を愛している。
彼女がいると公言しているせいか、顔面偏差値が控え目に言って上の下と整った顔立ちをしていてもあまり女子が寄ってくることはない。
寄ってこないとは言っても全く関わりがないわけではなく、楽しく談笑したりはする。
ただ、そこから友達以上の関係に発展した経験はない。
そりゃ彼女がいるのだから、友達以上の関係に発展しないのは当然だ。
負け惜しみでも何でもなく、恋愛対象として見られるとその女子との関わり方や関係性が変わってきてしまうので、恋愛対象として見られない方が個人的には楽である。
しかし、高校2年になりクラス替えをしてからたった1人だけ友人の枠を飛び越えて、やたらと俺に絡んでくる女子がいた。
「ねぇ新谷ん、私と付き合わない?」
急に告白してきたのは隣の席の
告白されたら狼狽するのが正常な反応なのだろうが、俺は椎川に呆れた顔を向けた。
身長は152センチとかなり低い割にやたらと挑戦的な態度で話しかけてくるが、こちらから見ると大人になり切れていない子供が背伸びをしているようにしか見えない。
ちなみに、椎川の本当の身長は149センチらしいのだが、なんのプライドか152センチだと言い張っているという。
なんで3センチだけサバを読んでいるのかは訊かないでおいてやっている。
「毎日言ってるけどな、なんでお前と付き合わないといけないんだよ。俺に彼女がいるって知ってるだろ?」
椎川は毎日俺に冗談混じりで告白をしてくるが、俺には彼女がいるのでいつもこの調子でその告白を拒否している。
「そりゃ知ってるけどさー。だって新谷んいい男だし?」
女子からいい男だと言われればテンションが上がるものだが、椎川には俺をいい男だと言って誑かす資格は無い。
椎川には俺と同じく彼氏がいるのである。彼氏がいる女子にいい男だと褒められてもテンションが上がるわけがない。
「バカなこと言ってんじゃねぇよ。お前も彼氏いるだろ」
「あちゃー。バレてたか」
俺が椎川の彼氏の存在を知っていると知りながら、椎川は毎日こうして冗談で告白をしてくる。
その告白を、「彼女がいるから」と言って断った回数は数えきれない。
それなのに、なぜこうして毎日のように告白してくるのかは何度も訊いているのだが、まともな答えが返ってきたことはなく真相は謎のままだ。
「バレてるも何もお前が自分で付き合ってること言いふらしてんだろうが。そんな奴が簡単に告白まがいのことしてんじゃねぇよ」
「だって新谷んいい男だし?」
「それしかレパートリーないのかよ……」
テンションが上がらないとは言ったが、女子から褒められるのは悪い気分ではない。
黒髪ショートで天真爛漫、お淑やかと言うよりは元気が取り柄で幼児体型の椎川はまさに俺のタイプの女子だ。幼児体型がタイプという部分は聞き流してほしい。
そんな女子から毎日冗談でも告白されれば嫌が応にもテンションは上がる。
それに、テンションが上がる理由はもう一つある。
先ほども述べたように、彼氏がいる椎川には俺に告白する資格も俺を誑かす権利も与えられていない。
しかし、実は俺には資格と権利が無いわけではない。
なぜなら、俺、新谷直生には彼女なんていないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます