(四)

 「ただいま」と力なく言いながら、木葉はマンションの五階にある自宅に帰ってきた。

 「お帰りなさい」と妻の木葉有紗が私の帰宅を待っていてくれた。

 リビングに置かれたベビーベッドでは、娘の木場早苗が寝息を立てていた。

 「ごはんは」と尋ねる有紗に木葉はネクタイを緩めながら「食べてきた」と答えた。

 このとき木葉は帰ってきて初めて有紗の顔を見た。笑顔もなく疲れているように見えた。育児の戦場にいたら、疲れ果ててしまうのも無理ないことだ。だから、俺はもっと笑顔にならないといけない。そう木葉は思った。


(続く)

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