003
開きかけた扉から逃げるように降りると、外には他にエレベーターを待っている人がいてほっとした。
「ではここで。お気をつけてお帰りください」
機械的ながらにも丁寧に頭を下げる和花と周囲に思ったよりも人がいたこともあり、三井は小さく舌打ちすると大人しく帰っていった。
しばらく三井の行方を目で追っていた和花だったが、見えなくなると途端にバクバクと心臓が落ち着かなくなってしまった。
自分の胸をぎゅっと押さえる。
「……はぁっ、はぁっ」
無意識のうちに呼吸が荒くなりとたんに気持ちが焦り出す。一刻も早くここから離れて気持ちを落ち着けたい。
なんとか階段まで辿り着いた和花だったが、ガクガクと足が震えて動けなくなってしまった。
ますます呼吸が荒くなる。
落ち着こうと思うたび息を吸い、それが余計に過呼吸を起こすのだ。次第に足だけではなく体までが震え出し、ついに和花はその場に崩れ落ちた。
「はぁっ、はぁっ、」
回りの音は聞こえない。
自分の息をする音だけが耳に響いた。
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