遅咲きの恋の花は深い愛に溺れる

あさの紅茶

通りすがりの王子様

001

誰かと二人きりになるのは嫌いだ。


特にエレベーターなんていう逃げ場のない狭い場所。そんな空間に男性と二人で乗るのはかなりのストレスになる。


生活する上でエレベーターを避けることは簡単だ。わざわざ乗らなくとも階段を使えばいいのだから。


だけど仕事でどうしても使わなくてはいけないときもある。


乗れないわけじゃない。

目的地に着くまではほんの数秒のことだから、時間と共にだいぶ克服したはずだった。


チームの庶務を担う橘和花は、仕事柄来客のエスコートをするためにエレベーターへ乗り込んだ。


エスコートをすること自体そんな頻繁ではなく、だから久しぶりの業務に幾ばくか緊張はしていた。今日の来客はHOKUTOシステムズの営業担当である三井だと聞いている。


「三井様、会議室までご案内致します」


軽く一礼をしてから意を決して乗り込んだが、和花も三井も無言のままだったため五階までの短い時間を無事にやりすごせた。


和花は大きく息を吐き出す。


ほら、大丈夫。

問題なくエレベーターに乗れた。

トラウマは克服できている。

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