食事と、彼女
バブみ道日丿宮組
お題:正しいところてん 制限時間:15分
食事と、彼女
美味しいものは特に何度でもということはない。
好きなものがあったとしても、毎日食べることはない。
嫌いなものはもっと食べることはない。
だからこそ、
「……また?」
同じ献立が続いてしまうと自然と言葉が漏れる。
「嫌なの?」
彼女は不満そうにほっぺたを膨らませた。
ボクのことを思って作ってくれてることは知ってる。
でなければ、毎日1時間もかけてボクの部屋にはやってこない。
「そんなことはないけど、最近多いなぁって思ってさ」
茶碗に入ったところてんをすりすりと箸でかき混ぜる。
決してまずくて言ってるわけじゃない。どうしてそうなってるかが気になったからというだけ。
「安かったから、たくさん買ったの」
理由を彼女は話してくれた。
「……そっか。なら仕方ないね」
我が家の台所はもはや彼女のものいったほうがいいくらいに、支配されてる。
そんな彼女がただ安いからというだけで、買い占めることはない。きっとそれなりの理由があるのだろう。
ところてんの味は悪くない。それは嫌いなことでもないから、口にぐんぐんと入れることはできることからも証明されてる。
とはいえ、3日毎夜ところてんというのはあまり聞かない話題だ。
そもそもところてんを日常的に見る人のほうが少ないだろう。
かくいうボクも3日前に数年ぶりに見たという感想を抱いたものだ。
「あと一週間ぐらいは続くから」
そういって彼女は自分の分を食べ始めた。
「わかった」
彼女を見つつ、自分も箸を進める。
ボクだけじゃない。夕飯を用意してくれる彼女も同じ夕飯を食べる。つまりは回数の多いところてんを同様に食してることになる。
彼女が苦情を抱くのであれば、こうして続くことはない。ボクがそれに対してなにかをいうのも違う気がする。
「ありがとうね、いつも」
「うん」
わずかに頬を赤らめた彼女がこくんと頷いた。
こんな日常がいつまで続けばいいのにと、ボクは思う。
まぁ、ところてんが永久に続くような未来は勘弁してほしいけどさ。
食事と、彼女 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます