シグマ①
ANRデバイス「
旧来のゲームソフトとの
我々はと言うと、鳴海マヤのご神託《しんたく》を得てすぐ、イスラエルに向かった。
彼女の助言により投資で稼いできた僕たちには、しかし「自力で何かを開発する」という機能を持って所持していなかった。
そのためソフトを作ることができるベンチャー企業を
日本国内の企業ではダメか? と問うたが、彼女は「イスラエルが伸びるから」と答えて僕の考えを
実際、彼らの技術力は
日本の会社が3年はかけるであろう製品を、1年半で作り上げてしまったのだ。
既存のVRデバイスではデモプレイができなかったが、鳴海マヤの「偉い人たち」のコネクションをもってしてAB社のテスト機を入手し、動作チェックにこぎつけられたのであった。
ベータ版をプレイしてみてまず思ったのが「帰れなくなる」だった。
映画とVRを組み合わせた遊びはこれまでにもあったが、ANRは10分も体験すると、自分が何者なのかわからなくなるほどの
我々が作ったソフト「Q」は、ANR内での自己の姿を自由に設定することができた。
鳥にも蝶にもなれるのがQの凄いところなのだが、ANRデバイスの超リアルな
そしてもう一つの目玉機能は、体感時間の操作だ。
現実世界での1分を、ANR内では1秒にも1時間にもすることができる。
正に「
言うまでも無いが逆の使い方も
現実時間との
さて、我々FV社がこのソフトと、その使い道を発表すると、当然ながらバッシングが起きた。
しかし
更に、このQが日本社会に影響を与えたのはマネタイズ( 収益化) の仕組みだ。
これまでは高齢者の保有する金融資産は数百兆円とも言われ、経済の流れから切り離されていた。
また、介護施設の利用料は保険料や国庫から賄われ......
簡単に言うと、高齢者はお金を使わないため、施設は利益を出せない。介護士の給料が低いのもそんな理由からだ。
そこにあってQの設備導入費は、利用者からキッチリお金を頂く。彼らの口座にプールされていたお金が消費に回される。
つまり、これも簡単に言えば経済が流通するようになるわけである。
以上の点も評価され、サービスの拡大と共に進めていた準備もつつがなく進行し、その年にFV社は東証マザーズに上場した。
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