11月11日 地下からの訴え

11月11日


 私は海外の国立大学に通う大学生です。築30年を超えた学生寮に住んで二週間ほどの時間が経ちました。今日はそこで見た少し不思議な夢の紹介をしようと思います。

私の住む学生寮はそんなに大きくも小さくもありません。12階建ての2階が男女共同の階。3階から6階が男性寮、7階から12階が女性寮となっています。1フロアにつき30部屋程ですから単純計算で300部屋以上はあるのでしょうか。一部屋につき四人、シャワールームと和式のトイレが部屋の中にある、そんな寮の4階に私は寝泊りをしています。

 12階建ての宿舎には何故か地下があるのです。エレベーターに乗るとB1、B2と書かれたボタンがありますがそれを押しても反応しないのです。地下に続く階段がきっとどこかにあるはずですが、まだ住んで二週間余りの私にはわかるはずもありません。ルームメイトも地下のことについては一切口にはしないのです。恐らく単純に興味がないのでしょう。私も今日の夢を見るまでは地下のことなど気にも留めていませんでした。

 11月11日。少しお酒の入った私は普段なら目覚ましが鳴るまでぐっすりと眠れるはずだったのですがこの日だけは違ったのです。午前三時頃。この時私は起きたのでしょうか、恐らく眠りからは半分覚めたのだと思います。しかしもう半分は寝ている。瞼の裏で夢を見ているのか目を開けて天井を見ているのか、よくわからない状態にありました。目は見えているが身体は動かない。これを金縛りと言ったりもしますが経験上それではないと私は思いました。

 体感時間10分ほどでしょうか。私の顔を覗き込んでくる何かが見えました。不思議と恐怖は感じません。自分よりも随分と幼い子供のような何か、その子供は私の肩を優しく叩くと先程まで動かなかった身体が突然ふわっと動くようになりました。その子に促されるようにそのままベッドを降りた私はちらりと後ろを振り返るとまだそこに寝ている自分の骸がありました。そこで私はすぐにこれが夢であるとここで気付きました。

 夢ならこの子と遊んであげよう。そんな軽い気持ちでついていきました。部屋を出るとエレベーターの方向に向かっていく子供についていくと普段は頑丈な金属の厚い扉で閉ざされている非常階段が見えました。子供はそのまま非常階段のほうに吸い込まれるように下っていきました。それに私もついていきました。3階、2階、1階と下っていくと子供はそのまま地下の方にまで下っていきました。

電気が全く入らない地下1階につくと少し鼻につくカビの臭いと独特な涼しさが私を取り巻きます。そこで初めて恐怖を感じました。何かこう、見てはいけないというのか、それとも何か、言葉にうまく表せない、心臓をつかまれ胃腸は鉛を飲んだようにズンと重くなり、脳の中心から何かが生まれるような、そのような体調不良に陥りました。


 ごめんなさい。そこから先はいけない。


 咄嗟に出たのは日本語でした。それを聞いた子供は酷くガッカリしたような顔をした後、見たこともない憎悪に満ちた笑顔で私に語り掛けてきました。


 またね。















 実際に寮の地下に何があるのかはわかりませんが、もし知れる機会があったら別の機会に書こうと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る