三十三の詩

12、絵画

　高校生の女の子。

　部活動の帰りだな。

　大きなカバンにはvolleyballの文字。

　コンビニの店先。

　カバンをドカッと地面に置いて、肉まんをほうばる。

　ポニーテールが揺れる。

　通り過ぎる自転車の方をちらっと見る。

　肉食動物の目。

　こじんまりしたサイズがいいな、Ｓ４号くらいの正方形がいい。

　やっぱり男はスーツよね。

　出張帰りかしら。

　キャリーバッグを転がしている。

　体が締まってる。

　あの上半身は水泳かな。

　ジョン・ロブ。いい靴履いてる。

　動きがほしいから、木炭だけでいいかも。

　ぶかぶかのスカジャンにダメージジーンズ。

　ショートボブはくせ毛でぼさぼさ、ほとんど顔が見えない。

　でもたぶん美人だとわかる。

　ガードレールに腰かけて、スマホを見ながら音楽を聴いている。

　小さなライブハウスが開くまでまだ一時間ある。

　友達を待っているのか。

　それにしても、女の子が履くジャックパーセルはなぜこんなに可愛いんだろう。

　ガッシュがいい、透明な感じで。

　六十歳前後。

　なかなか難しい年代ね。

　嫌味なくかっこいい年の取り方をしている人は少ない。

　枯れた味わいを持っている人となるとなおさら。

　彼はなかなかいいと思う。

　年季の入ったバーバリーのトレンチ。

　よれ具合が素敵。

　ブルーのベンチの色とマッチしてる。

　スマホじゃなくて文庫本っていういのもいいわね。

　油彩がいいな。

　なんかおっさんばっかじゃないか。

　そっちこそ、若い女の子ばっかじゃない。

　対象に興味がなきゃ。

　まあ、そうよね。