インド三部作完結編 −インドの大地を行く−
インドとか、豪華なツアーで行くならまだしも、個人旅行で行くならかなりハードだろう。行くなら若い今だ。 平成25年のゴールデンウィーク、思いったってインド旅行を企画した。
まずはビザ。インドのビザは大使館か領事館に行くか、旅行会社に代理で申し込んでもらうか。当時僕は対馬勤めだったため、東京や大阪に申し込みと受け取りに行くのは考えられなかったので、多少割高だが、旅行会社に代理でビザをとってもらった。
三週間ぐらいかかり、インドのビザがパスポートの1ページにでかでかと搭載されたときは、いよいよインドに行くんだなと、テンションがすごく上がった。そして、福岡からのチケットを、インターネットで探した。ANAの、福岡・成田、成田・デリー便、成田での乗り換え時間は二時間程度でベストである。それにした。最後に、対馬・福岡間のANAを別途予約した。福岡空港での乗り換えは四十分。勝手知ったる福岡空港、四十分あれば十分。ANAで対馬からその日のうちにインドに行く、なかなかないプラン。出発が待ち遠しくてたまらなくなった。
やっと、出発当日。首尾よく路線バスで対馬やまねこ空港に到着。空港の受付で、
「乗り継ぎはありませんか?」
と聞かれたけど、
「インドです」
って、答えたら空港の人、びっくりするだろうな。福岡で時間はたっぷりあるし、ここは「ありません」と答えておこう。
この考えが甘かった。
対馬空港から飛行機が飛び立った。対馬は狭いもので、同乗者には知り合いもいた。ふん。同乗している人やスタッフは知らないだろうけど、僕はひそかに雄大な旅を始めている。なんだか嬉しい。
さて、通常なら三十分分ほどで福岡空港に着くんだけど、福岡空港上空で、飛行機は旋回を始めた。着陸態勢に入っているので、機長の指示で皆シートベルトをすでに着用している。 乗務員がアナウンスする。
「皆様、只今、管制塔より着陸の指示があるのを待っております。」
ゴールデンウィークだし、そんなこともあるんだろう。 二十分ぐらい、旋回している。
僕は、普段は、皆で待っているとき、一人だけ待てないでなんか行動を起こすという勇気はないが、もうヤバい。対馬空港でインドまで搭乗手続きをしておけばよかったが、福岡空港で、改めて搭乗手続きをしなければいけない。僕は福岡空港の受付カウンターに、責任もって搭乗前に行かないといけない身分。十五分前に搭乗手続きを福岡空港のカウンターでやるとすれば、移動時間も踏まえればもう限界だ。まだ、飛行機が着陸しようと高度を全然下げないのを確認して、僕はシートベルトを外して、乗務員のいるところへ。 飛行機内には知り合いがいるが、この際関係ない。恥も外聞もなく僕は乗務員に助けを求めた。
「実は福岡で乗り換えなんです。」
「そうなんですか。」
「どうにかなりませんか?」
インドへの雄大な旅が福岡で終わってしまう。
「あいにく、着陸態勢に入った段階で、管制塔以外との通信はできません。」
「ええっ!?」
こんなに『あいにく』という言葉で傷ついたのは初めてだった。
「着陸したら、ただちに連絡を入れてみますので。」
「ううう・・・」
僕は、雄大な旅が、ほんのちょっと、くだらない、なんにもならない、自己満足の気遣いでおじゃんになるのを覚悟した。
「お席、お出口のすぐ近くに用意しますので、せめて、ドアが開いたらすぐに行ってみてください。」
僕は荷物をもって、席を移動した。よかった。荷物預けてたらこの時点で終わりだった。でも、よかったとか言ってられない。間に合わないかもしれない事態には変わりない。知り合いの目も気にせず、僕は、入り口そばの席でソワソワしながら飛行機の着陸をまった。 成田行きの飛行機の出発の二十分前過ぎに、飛行機が高度を下げ始めた。間に合うか・・・・?半分諦めていた。
飛行機は着陸した。ドアが開いた。乗務員は空港に連絡してくれているようだ。僕は思い切りボー-ディングブリッジをダッシュした。
ボーディングブリッジを渡り切ったところに、空港スタッフがいた。私には関係ない人だと思って、振り切って行こうとしたところ、呼び止められて、
「中島様、こちらでございます。聞いております。こちらへどうぞ。」
特別に乗客ゾーンから一般客ゾーンへ柵を開けて通されて、誘導された。 助かった――。
すごいな。乗務員と空港スタッフの対応。
自分のせいで起きた、本来しないでいい無駄なトラブル。多くの方の協力を得て、どうにか乗り越えた。間一髪の危機を乗り越えて、十数時間後、僕はインドの大地に降り立った。
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