永遠
永遠。
それは、ずっと続くと言うこと。
終わりがないという意。
時間と共に移ろい行く物に対し、永遠は未来永劫変わることなくあり続ける。
現実にそんな物はそう簡単に見つかるものではない。この世は諸行無常であり、万物は姿、形を変化させ私達の元へやってきては去って行き、またいつか私達の元へと戻りを繰り返す。
「永遠って聞いて思い浮かぶものある?」
四年付き合っている彼が私に意地悪く聞いてきた。
私は「うーん?」と首を傾げ考える。
永遠を思い描いた時真っ先に私の頭に浮かんだのは、宇宙だった。
特別宇宙に関心がある私ではないが、テレビで宇宙は膨張を続けているという話を聞いたことがある。
ビックバンが起きて以降、膨張を続ける宇宙。私にとってそれは永遠と呼ぶに値するものだった。
しかし、彼が私のその考えは違うと指摘した。
「宇宙にも終わりがあるんだよ」
え?私はその言葉にキョトンとした。
膨張を常に続けているという宇宙。その宇宙に終わりがあるとは一体どういうことなのか。私は鳩が豆鉄砲食らった様な顔で、どういうこと?と聞いた。
「宇宙の膨張もいつか終わりを迎えるんだ。ビックバンによって生じたエネルギーで今現在宇宙は膨張を続けているけど、そのエネルギーもいつか底を尽き収縮を始めるって説がある」
彼はだから残念ながら宇宙も永遠ではないんだよ。と、私に諭す様に言った。
私はそれを聞いて、「じゃあ他に永遠って何かに例えたり説明できたりするの?」と、先ほどの彼の様に意地悪く質問した。
すると彼は、笑って「僕の君への想いは永遠だよ。だから……ね。僕と結婚してくれないか?」
彼の目は真剣そのものだった。
私は、急にそんなのずるいと言いながら彼に抱きついていた。
永遠。
それは、ずっと続くと言うこと。
終わりがないという意。
時間と共に移ろい行く物に対し、永遠は未来永劫変わることなくあり続ける。
現実にそんな物はそう簡単に見つかるものではない。この世は諸行無常であり、万物は姿、形を変化させ私達の元へやってきては去って行く。
結婚してからの数年は絵に描いたような幸せな夫婦生活を送っていた。記念日にはお互いプレゼントを用意してお祝いをした。
だが、いつからだろう。急に彼が私に見向きもしなくなったのは。いくら私が話しかけても相手をしてくれない。「今は、忙しい」だとか「今日は気分が乗らない」と、適当に理由をつけては私を遠ざけた。
そして、時を同じくして彼の出張が増えていった。
彼が口にした永遠とはなんだったのか?
それとも永遠はこんなにも短いものだったの?
私の思い描いた永遠はただの幻だったのか?
私は今日も2人分の夕食を用意して彼を待つ。
ガチャリと錠の開く音がする。
「お帰りなさい貴方。ご飯できてるわよ。それとも先にお風呂にする?」
彼は「あぁ……」と、どっちとも取れない返事をしてネクタイを緩め「今日は外で食べてきたからいらない」と、言い残し寝室へと向かった。
彼の選択は最初から分かっていた。いつものことだ。むしろ今日は日付が変わる前に帰って来たのだからマシだと言えた。
私は彼が寝室で就寝しているのを見て彼の枕元へと近づいた。
静寂だけが支配する寝室に彼の寝息だけが鳴る。
私は彼の寝顔を見る。まつ毛が長く綺麗な顔立ちをしている。なんて素敵なんだろう。
私は彼の寝顔に見惚れながら、彼の耳元で、永遠に私のことを想ってくれるって言ったの覚えてる?と、問いかけた。
けれど彼は眠ったまま。
それでいい。
私は彼の首もとを果物ナイフで掻っ切った。
蛇口が壊れた様にゴポゴポと真っ赤な水が吹き出した。
彼は反射的に目を大きく開けて私を睨み付けたが、それは一瞬だった。秒を刻む毎に彼の目からは生気が抜けていく。そしてその目を見た私もまた、自分の首を果物ナイフで掻っ切った。
私は膝から崩れ落ち彼の体に覆いかぶさる様に倒れる。ゴポゴポと流れる鮮血は彼のものと混ざり合い白いシーツを紅く紅く染め上げていく。
私は意識が遠のいていく中で、彼と共に永遠の眠りにつける事に幸せを感じ目を閉じた。
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