武蔵野の夢
荒川 麻衣
武蔵野の夢
こんな夢を見た。
鳥がさえずる声。
川のせせらぎ。
わたしは、「うわぁ」と思わず声を上げた。
武蔵野である。
もとは城のあった、武蔵嵐山と呼ばれる場所である。武蔵野とはおそらく、ここも含まれるのであろう。
荒れ果てた、いや、広々とした道を歩くと、小さな小屋にたどり着いた。
どうやらここで、2.5次元俳優が映画の撮影をおこなっているようだ。
「撮影場所、ここだったんだ、ここの縁、見た覚えがあったんだ」
懐かしそうにたいちゃん、椎名太蔵が柔らかな笑顔でいとおしそうに縁側に座る。
「知り合い?」
昌成くん、和田昌成がひょこっと、網戸から顔をのぞかせてくる。
「まぁ、そんなとこ」
わたしと椎名太蔵、おない年の1986年生まれとは言え、わたしは水戸のACM劇場、彼は確かNHK名古屋放送局だったはず。まるで接点がないし、生で見たことすらないのに、ふんわりと仲間だと認識しているのは、2000年の、21世紀始まりの年に同じ芸能界にいたから、だろうか。
「これから、ゲームやるんですけど、よかったら、一緒に」
田中涼成が顔をだす。
おそらく、ワークショップ、息抜きなのだろう。彼らはいつも遊んでいる形式のものらしく、早口で始まり、説明も早口で終わる。
「じゃ、あなたから」
「え」
つっけんどんにそう言われ、答えられないでいると、
「見ていればわかると思うから」と、
これまた慣れている彼ららしく、ぐるぐるとものすごい勢いで順番が回ってくる。20年近くブランクがあるとは言え、ここまでメソッドが、しかも自分が経験したのことないゲーム、早すぎてついていけず、黙っていると
「それはないんじゃないかな」
そこで、目が覚めた。目が覚めると、ツイッターの画面が目に入った。
「上手下手のスペース」
どうやら、聞いているうちに寝入ってしまったらしい。
それにしても不思議なのは、そのラジオに出ていた、鳥ちゃん、鳥越悠も、崎山さん、崎山喜乃も、そして。
高橋謙一も聞いていたし、ほかにも何人か聞いていて、「あ」となったのに、出てきたのは出演者の中では和田昌成と田中涼成だけだし、鯛ちゃん、椎名鯛造は今のところ出演すらしていない。
30年は、もうとっくに経っていたんだな、と、わたしは思った。
武蔵野の夢 荒川 麻衣 @arakawamai
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