第63話 ヘキサゴン大攻防戦⑥
そんな中で、全身土のアーマーで防御力が上がっているリチャードは、瘴気弾の直撃をものともせずに突撃を掛けている。
「すげえ強度だな、あれ。ciws当てても大丈夫じゃねえのか?」
瘴気弾をまともに浴びながら突っ込んで行き、そのまま
「試しに当ててみましょうか?」
「おいバカやめとけ。いいな? 大丈夫かも知れんがやめとけ。フリじゃねえからな?」
冗談か本気か分からない、満面の笑顔で答えるアンジーを慌てて制する三戸。心なしか、アンジーの表情が残念そうに見えなくもない。
「ですが、使う能力は今まで通り『土』だけですよね?」
覚醒したというにはそれほど劇的な変化にはみえないというアンジーだが、三戸の見解は少し異なる。
「あの動きを見てみろよ。あんな機動、無理だろ。あれを戦闘機でやったらパイロットの身体が持たねえ」
「……確かに」
土属性であるエクスカリバーは、所有者であるリチャードの足下全てが支配領域だ。土が彼の意のままに動く。急発進、急加速、急制動、後退。それどころか急停止からの平行移動や急旋回なども信じられない切り替えの早さでやってのける。どれも『車両』では不可能な動きだ。ある意味力学や法則を無視した動きに、三戸は舌を巻いていた。
「あれを出来るようになった事が、覚醒の成果なんだろう。ありゃあ強いぞ」
「確かに、あれでは当てるのも難しいですね」
「それに、硬度も上がっているみたいだ」
リチャードが作り上げた防壁にはかなりの数の瘴気弾が着弾した。破壊や崩落とはいかないまでも、その痕跡はくっきりと残っている。しかしリチャードはそれよりも至近距離で喰らっているはずなのだが、彼自身が纏う土の装甲にしても
「ありゃもう土と言うより鉱物だな」
防壁の上でそう苦笑する三戸の言う通り、リチャードは撃ち込まれる瘴気弾をものともせず、真っ直ぐに魔物に突っ込んで行っては
さらに、三戸の見解にはやや誤解があった。確かにリチャードの土の装甲は固くなってはいる。しかし無敵の硬度を持っているのではなく、破損した箇所を瞬時に修復しているのである。三戸が誤認したのはそのためだ。
「むう、手応えがない! 大物狙いに切り替えるか、エクスカリバーよ!」
『そうだな。雑魚はミト様達に任せても問題あるまい』
どうやら、鎧袖一触で敵を倒し続けていたリチャードが退屈してきたようだった。ターゲットをデーモンクラスへと切り替えて突撃していく。
立ち塞がる魔物を蹴散らしながら、リチャードは一番近くにいたデーモンクラスに狙いを定めた。
「手始めに貴様から片付けてくれるッ!!」
土のミサイルをばら撒きながら、猛スピードで自分に迫るリチャードを脅威と判断したデーモンクラスの魔物は、回避行動に移る。今までもあの
しかし魔物は理解していない。
「はっはっはー! 無駄無駄! 逃げられはせん!」
ニヤリと笑みを浮かべながらリチャードが叫ぶ。地面そのもの動かし移動する。それはつまり、敵が地に足を付けている限り、敵の位置すらも意のままに操れるという事だ。リチャードの言う事は決して誇張などではなく、単に事実を述べたにすぎない。
「――!!」
逃げようとしても何故か
「こういう場合はこうするのだ!」
リチャードの持つエクスカリバーに土が纏わりついてくる。それは剣身をどんどん延長させ、長さ五メートルにもなろうかという、黒光りする長大な剣へと姿を変えた。彼はその超重量に負ける事なく、エクスカリバーを大上段に構える。
「ぬうん!」
「ゴアァァァァ……」
断末魔の悲鳴と共に魔物の身体は中心から真っ二つに斬り裂かれた。
「まず一つ!」
リチャードは後ろを振り返る事もせず、次の獲物を探して
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