第82話第十五章15-6死闘

15-6死闘



 かがり火がたかれ淡い光が俺の黒い「鋼鉄の鎧騎士」とアルファードの銀色の「鋼鉄の鎧騎士」を照らし出している。


 砦の中庭、そこそこの広さがありここで模擬戦などが出来るくらいだ。

 しかし今は俺とアルファードの決着をつける為の死闘の場となっている。



 『邪魔は入ってこれない、今度こそ貴様の首取ってやるぞアルファード!!』


 『ぬかせ! 下賤な貴様のせいで私の聖戦が汚された!! 貴様の首こそ、今度こそ取ってくれるわ!!』



 俺たちはそう叫びながら剣を構える。

 

 同じオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」、特にアルファードの奴は外装がオリジナルのミスリル製。

 その強度は折り紙付きで同じオリジナルの攻撃でさえ効かない。

 しかし機体は頑丈でも中身の操縦者はそうもいかない。


 それはこちらも同じだが、今回は違う!


 

 どんっ!



 俺の「鋼鉄の鎧騎士」が先に動いた。

 大地を蹴り割り一気に奴の懐に入る。

 そして剣を振るがその装甲に当たっても切り裂ける事は出来ない。



 がんっ!



 『だがっ!!』


 『ぐっ、な、なにぃっ!?』



 ぐぐぐぅ……


 ぶぅんッ!!



 すぐに反撃に出ようとするアルファードの奴を俺はそのまま剣を振り吹き飛ばす。

 普通ではありえない。

 それはたとえオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」でも。



 ずざざあぁぁぁぁ。

 

 

 それでも流石に相手はオリジナル。

 吹き飛ばされはしたものの地面に足をつけこらえた。



 『なんだ、その力は!?』


 『今までの俺じゃぁ無いって事さ! 覚悟しろアルファード!!』


 『貴様ぁっ、アインっ!!』



 アルファードの「鋼鉄の鎧騎士」は剣を振り上げ「操魔剣」を使い一気に飛び込んでくる。

 しかし同調をしてその魔力とマナの流れを見ている俺には奴の動きが先読み出来る。

 

 飛び込んでの一撃はフェイントで剣を振る寸前に右に機体を動かしそして蹴りを入れて来るつもりだ。


 奴の動きに俺はその剣を避ける事無くそのままでいる。

 フェイントの為その剣は俺には届かず右に回り込んで蹴りがやって来る。

 左手を蹴り込んでくる足にぶつけ、それを受け止めたまままたこちらの剣を打ち込む

 

 

 がっ、がぎぃいいいぃぃんッ!!



 『ぐぉっ! なんだとぉ!?』



 俺に剣を打ち込まれアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」は今度こそ地面にその体をつける。

 勿論その位では何ともないだろうがすぐに起き上がっても次の攻撃が来ない。



 『先ほどからどう言う事だ? 同じオリジナルのはずが…… 貴様、まさかその黒い鎧のあの力か!?』


 『いや、これは俺の力だ、そしてこのオリジナルの真の力だ! 覚悟しろアルファード! 貴様のお遊びに付き合うのはここまでだ!!』



 じゃきっ!



 アルファードに剣を向けそう叫ぶ俺。



 『お遊びだと…… この私の高尚なる聖戦がお遊びだとぉ? ふざけるな! 世界は、女神様の教えに従いその意思を伝える私こそ神にも等しい! この聖戦こそが女神様のご意思だったのだ!!』



 ぼんっ!

 ごぉおおおおぉぉぉっ!



 アルファードがそう言って叫ぶと同時に奴の「鋼鉄の鎧騎士」から爆炎が燃え上がり炎の柱と化す。



 『私こそが正しい、私こそが正義、私こそが女神様のご意思を正しく理解する者なのだぁ!! 【紅蓮業火】よ、あいつを、あの傭兵を、アインを焼き殺してしまぇっ!!』



 体に炎の柱をまとい剣を振り俺に突っこんでくる。

 しかしその剣筋は既に見切っていて怒涛の如く撃ち込まれるその剣を俺は剣で弾きギリギリで避け俺の機体には一度も入れさせない。


 正直攻撃力と防御力、そして耐火性の上がった今の奴に同じ火炎系の魔法は効かない。

 それは俺の乗るこの「鋼鉄の鎧騎士」が教えてくれる。


 まったく、そう言った耐火手段もあったのか。

 二度も大やけどを負う必要も本来は無かったという事か。


 しかし!



 すっ

 どがぁっ!!



 『ぐぁっ!』



 斬り込んできたアルファードの剣を半歩前に出て避け拳を叩き込む。

 それは見事にアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」の顔面を捕らえ大きくのけぞらせる。

 いくら防御力が上がっていても純粋な打撃には耐えきれないだろう。


 俺はそのまま剣を手放しもう片方の拳も叩き入れる。


 炎の柱で覆われたアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」だが殴られればそのダメージはそのまま行く。

 俺は素手で奴をぶん殴り始める!



 どがっ!

 どがっ!!



 『これはアーシャの分!』



 どがっ!



 『これはザシャの分!』



 どがっ!!



 『これはベニルの、そしてルデンの、ベリアルの、オクツマートの、みんなの分だぁッ!!』



 どがどがどがどがどがっ!



 『ぐおぉおおおぉぉぉぉっ!』



 両の手を連打で叩き込みアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」を打ちのめす。

 何度も何度も。



 『思い知れ! 神の名を騙り、いや、神と名乗る馬鹿者がぁ!!』



 そう、「神」なんて俺は信じちゃいない。 

 あちらの世界でもこちらの世界でもいつも奴等は俺に「絶望」を目の前に積んできた。

 そしてそれを崇拝し、自らを神と称するのならば俺の敵だ!!


 

 『うぉおおおおおおぉぉぉっ!』



 どがどがどがどがどがどがぁっ!!



 俺は叫びながら何度も何度も奴の「鋼鉄の鎧騎士」に拳を叩き込む。

 たとえこちらの「鋼鉄の鎧騎士」の腕の外装が焼けただれ、はがれ始めても。



 バキッ!!



 どがっ、ずうぅうううぅぅぅん!!



 『はぁはぁはぁはぁ……』


 最後に思い切り拳を奴の腹にぶち込み、アルファードの「鋼鉄の鎧騎士」を吹き飛ばす。

 既に炎の柱も消え、外観上は何とも無い奴の機体だが地面に転がり呻いている。



 『うぐぅうぐぐぐぅぅぅぅ』



 ―― コロセ、コロセ! ――


 「うるせぇ! 貴様にもう飲み込まれる事は無い! 俺は俺の意思でアルファードの奴にとどめを刺す! お前は引っ込んでいろぉっ!!」



 俺は耳元でずっと囁いているあの声にそう叫んで振り切る。

 その声はとても心地よく、その声通りにすれば何でもできるように感じる。

 しかしそのせいで俺はこの手で仲間のオクツマートの命を絶った。


 この呪いの意思を受け入れたばかりに。



 「しかし今はもう違う。俺は俺の意思で戦ってるんだ!」



 言いながら俺はアルファードの「鋼鉄の鎧騎士」の前まで行く。

 そしてその頭を掴み持ち上げる。


 『いくら外装が丈夫でもこれだけ拳を叩き込まれれば中身の方がもたないだろう?』


 『ぐっ、お、おのれぇアイン……』


 俺はそれを聞いてから奴の胸部扉をこじ開ける。

 そこには俺と同じく体を鎧のようなモノで固定されているアルファードがいた。


 俺は俺の「鋼鉄の鎧騎士」も膝まづかせ自分も胸の扉を開く。

 そして固定するものを外しアルファードに話しかける。



 「出て来い! こんなモノで、神と悪魔の力で決着をつける気はない。剣を持て!」


 「ぐっ、貴様どう言うつもりだ?」



 「鋼鉄の鎧騎士」から降り立ち剣を抜く。

 アルファードもよろよろと降りて来る。



 「最後は俺の手で直接貴様に引導渡してくれる!!」



 「ぬかせ、この傭兵風情がぁっ! いいだろう、我がガレント王家に伝わるこの技を受けるがいい!! ガレント流剣技九の型、九頭閃光!!」



 カッ!



 アルファードの奴は魔力を爆発的に放ちそのすべての力をこの技に注ぎ込む。

 その王家の秘剣は九つの光を放ち俺に向かってくる。


 人が放つ技としては最強の部類になるだろう。


 俺はカッと目を見開き瞳を金色に輝かせ剣を振る。



 「操魔剣、八つ切り!」



 迫り来る上下左右、斜め右左上下からくる八つの剣戟を同じく俺の剣戟で弾く。

 しかし最後の突きが俺の心臓へと迫る。



 「ははははっ! とったぁっ!」



 「これで最後だ」



 アルファードのその目にも止まらぬ速さの突きを俺は紙一重で避け、そして剣を持っていない左手をアルファードの胸にそっと添える。



 「【爆炎拳】っ!!」



 そして力ある言葉と共に奴の心臓にその一撃を叩き込む。



 どんっ!


 ぼわっ!


 

 その瞬間手のひらから魔法の炎と衝撃波がアルファードに伝わる。



 「ぐっ!」



 ばんっ!


 びきびきびき……



 衝撃波は心臓を破裂させ体中に伝わり奴の体中から血を噴出させる。



 ぶしゅーっ!



 カラーン



 奴が持っていた剣が力なく地面に落ちる。

 俺はすっとアルファードの奴から離れ踵を返して俺の「鋼鉄の鎧騎士」戻る。



 どさっ! 




 後ろで何かが地面に倒れる音を聞きながら。


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