第64話第十二章12-5海を渡って
12-5海を渡って
俺たちは結果的にロブ港村を秘密結社ジュメルとか言う連中から解放し、その代償としてサージム大陸に運んでもらう事となった。
「それでサージム大陸の何処に着ければいいんだ?」
この村の村長であるロバートは俺に目的地を聞いて来た。
そう言えばその辺は何も考えていなかった。
ガレントの連中は多分一番大きな港か可能な限りウェージム大陸に近い所へ向かっているだろう。
だとすれば奴等に追い付ける場所となれば‥‥‥
「サージム大陸からウェージム大陸に一番近い港となると何処なんだ?」
「近さから言えば貿易都市サフェリナだが、ここからだと大海のど真ん中を通るコースとなる。海獣が多い地域だから正直かなり危険になってしまう。この船では少々心もとないがね」
そう言いながらロバートは港にある船を見る。
「ではその次に近い場所は何処なんだ?」
俺のその問いにロバート村長は顎に手を当て唸る。
そしてゼッテンたちを捕らえた納屋を見てから言う。
「あいつらのルシフルの町だな。外見は普通の港町だがいるのは組織の連中ばかりだ。あいつらはそこで魔鉱石を使って『鋼鉄の鎧騎士』を作ると言っていたがな」
「ルシフルの町か‥‥‥ オクツマート、聞いた事は有るか?」
「ああ、確かエルフの森の東にある町だったと思う。あまり良くは知らないがな」
どうやら水上都市スィーフよりは北にある場所の様だ。
通常このイージム大陸からだとウェージム大陸の南方ツエマの港が一番近く大きいのでそことの交易が盛んだ。
「ガレントの連中、ツエマ経由で行くと思うか?」
俺のその疑問にオクツマートはしばし考えてから応える。
「多分そうだろうな。相手はガレント王国の王族、ちゃんとしたルートを移動するだろうさ」
「ならば決まりだな、ロバート村長俺たちをルシフルの港町に連れて行ってくれ」
「それは良いがあそこは連中の巣窟だぞ? 船で港に着けるは良いがゼッテンがいなければ怪しまれるしこちらも危険だぞ?」
心配事はもっともだが何もまともに港に着ける必要はない。
近くの上陸できる場所にさえいければ後はどうにでもなる。
「港に着ける必要はないさ。近くで俺の『鋼鉄の鎧騎士』が降ろせる場所まで連れてってくれ。後はどうにかする」
「分かった。大体サージム大陸付近まで十日、それから海岸沿いに北上するから三日と言う所か。それで良いのだな?」
「ああ、頼む」
俺とロバートはそう言いながら握手をするのだった。
◇ ◇ ◇
船に乗って既に九日が過ぎていた。
イージム大陸とサージム大陸の海峡は海獣の少ない南方の航路が一般的だった。
事実途中に何度か交易の船を見かけたが、この辺は小さな島も多く時間をかければ島伝いでサージム大陸にも行けるそうだ。
「アイン~、まだかぁ~?」
甲板でルデンがぐったりとしている。
ずっと船酔でこの有様だ。
「意外だな、ルデンの奴船に弱いとはな。『鋼鉄の鎧騎士』に乗って揺られても平気なくせに」
「まあそう言うなベリアル。ガレントの鉄の船に比べれば確かに揺れが酷いからな」
オクツマートの言う通りだった。
以前ガレントの鉄の船を奪った時はここまでひどい揺れは無かった。
確かにあちらはスクリューを使った推進方法で帆で風を受ける帆船とは訳が違う。
帆船は風の影響が大きく揺れも半端じゃない。
俺はぐったりするルデンを見ながら水筒を差し出す。
「口をゆすぐだけで少しはマシになる」
「うぅ、すまんなアイン。助かる」
ルデンはそう言って水筒から水を含み口をゆすいで海にその含んだ水を吐き出す。
そんなルデンだったが急に元気になった。
「おい、アイン見ろよ! 島じゃねえ!! 陸だ!!」
ルデンの言う方を見ると島では無い大きな陸地がうっすらと見えて来た。
俺は舵を操舵しているロバートの所まで行く。
「あれはウェージム大陸か?」
「ああそうだ。良い風のお陰で半日早く見えて来た。あの大陸の近くまで行けば北上は今までよりずっと静かに出来るぞ?」
操舵しながらニヤリと笑いながらロバートは言う。
「お前ら陸が見えて来た! 準備をしろ!!」
ロバートがそう言うと途端に水夫たちが帆を半減させロープを引っ張り船の速度を落とす。
そして船の動き自体も北に向き始め先ほどよりは揺れが少なくなってくる。
「ここから大体三日と言った所か。この先の岬があるからあまり大陸には近づけん」
「その辺は任せる。船と海の事は俺らは素人だからな」
俺はそう言いながら今度は左手に移ったサージム大陸を見る。
ゼッテンの野郎から聞き出した情報ではガレントらしい軍隊は南の港町でしばらく滞在してそれからサージム大陸に渡ったらしい。
かなりの船を準備していた様で港でふた月以上滞在をしていたらしいからガレントへの帰還もかなり時間がかかっている様だった。
サージム大陸に渡り奴等の足取りを追ってアルファードの奴を倒す。
俺は荷積みされて幌をかぶせてある俺の「鋼鉄の鎧騎士」を見るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます