第61話第十二章12-2港の見える村

12-2港の見える村



 ジバル将軍に直談判してなんやかんやで俺たちは今ドドス共和国に潜入をしていた。



 「しかし、よくもまあジバル将軍が単独行動を許してくれたよな?」


 「保険もあるが、まさかアインを出してくれるとは思わなかったな」


 「やっぱりあれが効いたんだろ? しかし勿体ないよな、あの外装を置いてくるなんてよ」



 オクツマートたちはそう言いながらどこから見てもくたびれた「鋼鉄の鎧騎士」にへばりついて一緒に移動している。



 『しかし良かったのか? 俺のわがままに付き合ってくれるとは』


 単独でドドスに潜入してガレントの足取りを掴むと言い出した俺にこの三人はついて来てくれた。


 「何言ってる、俺たちの腐れ縁そうそう切れるもんじゃないだろう?」


 ルデンは屈託なく笑いながらそう言う。

 俺は「鋼鉄の鎧騎士」を通して見える彼の笑顔に苦笑する。



 『すまんな‥‥‥』


 最前線とは言え砦に残り警備の傭兵として残った方がはるかに良いはずなのにこの三人は俺に付いて来てくれた。



 「アイン、忘れてないか? お前さんは俺たちの小隊長なんだぜ?」


 『それはホリゾン公国時代の話だろうに』



 ベリアルにそう言われ俺は更に苦笑する。

 言われてみればそんな時代もあった。

 だがここまで生き延びられたのはこいつらがいたからでもある。



 「なあアイン、お前あのガレントの銀色の『鋼鉄の鎧騎士』倒せると思うか?」


 オクツマートはつぶやくようにそう言う。

 相手は同じオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」。

 どんな攻撃も魔法も効かない。

 勿論それは同じオリジナル同士でやり合っても同じだった。


 だが俺には彼女の、コクと言う少女のあの言葉が頭から離れない。



 『俺の乗るこいつにはまだ隠された力があるそうだ。今はまだどうやってそれを開放するか分からないがアルファードの奴のには無いそうだ。だからそれが分かれば必ず勝てるさ』


 俺はわざと軽めの口調でそう言う。

 するとオクツマートは俺の「鋼鉄の鎧騎士」を見上げ頷く。


 「アインは今まで何度も奇跡を起こしてきた。きっと今度もどうにかしてしまうだろう。だから俺はそれを見届けたい」


 オクツマートのそれに俺は『ああぁ』とだけ答えたのだった。



 * * * * *



 ドドス共和国に潜入して更に数日が経っていた。


 

 このまま南下すればドドス共和国の首都に着くが俺たちの目的はその更に南西にある港を目指していた。



 「あの山脈が見える方がドワーフ王国のオムゾンがある場所だ。だからその反対側を行けば港町や村がある。その辺はサージム大陸へ行く船がいろいろな所から出ているからな。多分ガレントの連中はそっちへ行っているだろう。大型の『鋼鉄の鎧騎士』を乗せられる船なんざそうそうあるもんじゃないからな。ましてやあちらさんは数体の『鋼鉄の鎧騎士』を運搬するわけだ」


 「まだガレントの連中がいればの話だけどな」


 「おいアイン、気をつけろ街道が見える。このまま行けば目立つぞ!」


 オクツマートに説明を受けながら目立たない様に街道から外れた場所を移動していた。

 ガレントの連中がその後何処まで撤退したかは分からないがどちらにせよ俺たちもサージム大陸に渡るつもりだ。

 そしてアルファードの奴を倒せれば‥‥‥


 俺はジバル将軍との会話を思い出す。



 * * * * *



 「アイン殿、それは本気か?」


 「すまんが将軍、俺は本気だ。それに黒龍から聞いた話が本当であれば勝算はある。どちらにせよこのままアルファードの奴を放っておくわけにはいかない。あいつの事だ回復すればまた何かしらの方法で襲ってくるだろう」


 「だがそれならば守りを固め更にジマの国と連携を取った方が良いのではないか?」


 「オリジナルの力は知っているだろう? 全部で十二体もあるそうだ。一対一では何とかなるかもしれないがもしガレントが他の機体も見つけ出して襲ってきたら俺の『鋼鉄の鎧騎士』だけじゃどうあがいても無理だろう? ならば主犯であるアルファードの奴を討つしかないだろう?」


 「確かにそれは‥‥‥」


 「それに魔導士たちの話では学園都市ボヘーミャでは最初の『鋼鉄の鎧騎士』に関する記録があるそうじゃないか? だとすればますます行く必要があると思うが?」


 俺の言葉にジバル将軍は渋っていたがオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」の外装を置いて行くと言うと最後には承諾をしてくれた。



 * * * * *



 その後も俺たちは数日間南西へと進み、小高い丘を越えた頃だった。



 「アイン! 見ろよ海だ!!」


 ルデンが指さし右側の方を見ている。

 街道から離れてはいるがどこかの町か村に向かってるだろうそれと並行して進んでいる。

 いずれかはどこかの町か村に着くはずだった。



 「ドドスの首都からはもだいぶ離れているはずだ。方向も南西だからこのまま行けばどこかの港に着きそうだな」


 「そうだなって、おい見ろ、あれあれ!」


 オクツマートも海を見ながら反対側の街道を確認する。

 するとベリアルが海の方に何かを見つけた様だ。



 『小さいが港のようだな。よし、あそこへ行ってみよう』




 俺たちはその港村に向かうのだった。

  

 

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