第38話第七章7-4開戦

7-4開戦


 ガレントの「鋼鉄の鎧騎士」が逃げ去った後に現れたのはイザンカ王国の第二首都、レッドゲイルにいた「鋼鉄の鎧騎士」団であった。



 イグニバルたちがその事を知っていたのですぐに俺たちが傭兵部隊で今までガレントが暗躍していたことを伝えるとその騎士団はすぐにでもブルーゲイルに向かった。


 俺たちもこんな所に長居する必要も無く、さっさと倒された仲間たちの「鋼鉄の鎧騎士」を回収してブルーゲイルに戻る。


 「イグニバル、ガイジ、アインご苦労だった。傭兵隊へ戻って待機してくれ!」


 傭兵隊長のビブラーズはそう言って俺たちを門の中に入れる。

 とにかく今はこの「鋼鉄の鎧騎士」から出たかった。

 

 俺たちは城壁の門に入るとすぐに機体を所定の場所に戻しそれから降りる。

 大きく息を吐き搭乗用の階段の手すりに思わず身を投げ出す。



 「おいアイン、無事戻ったか!」



 「鋼鉄の鎧騎士」から降りるとルデンたちがこちらにやって来た。


 「アイン、大変だったらしいな。どうなっている? だいぶ傭兵隊の『鋼鉄の鎧騎士』がやられたらしいな?」


 オクツマートが水筒を差し出しながら言う。

 俺はそれを受け取り乾いたのどを潤す。

 一気にあおるそれは染み込む様に感じた。


 「ぷはっ、生き返る。今回は酷かった。傭兵隊の『鋼鉄の鎧騎士』が半分もやられた。襲って来たのはガレントだ」


 「何っ!? 本当にガレントだと? ここはイージム大陸だぞ? ウェージムじゃない!」


 ベリアルが驚きそう言うが誰だってそう思うだろう。

 しかしそれは事実だった。

 俺はもう一口だけ水を飲んでから言う。


 「間違いない。辛くも数機倒したがあちらにも手練れがいた。そいつらは逃がしてしまったがな」


 俺のその言葉にオクツマートたちもうなり沈黙してしまう。

 まさか逃げ延びたその先でもガレントの影がちらつくとは。

 

 「だとするとあの噂も本当か‥‥‥」


 沈黙していたオクツマートがそう言って俺を手招きする。

 そして他の奴には聞こえない様にひそひそと話をする。



 「これは噂なんだがイザンカ王国に対してガレントが大使を送り込み無茶な話を進めたそうだ。既に南のドドス共和国はそれを承諾してガレントの配下に収まったらしい。女神の僕とされる黒龍のいるジマの国にはガレントは流石に手を出していないようだがこのイザンカにもとうとう来たようだ」


 「それは本当か、オクツマート?」


 もしその話が本当だとするとずっとこのままここにいられなくなる。

 何せ俺の「鋼鉄の鎧騎士」は元ガレントのモノだという。

 イザンカは一体どうするつもりなんだろう?


 俺がそう思っているとオクツマートは更に声を潜め言う。


 「だがイザンカはどうもその話を断ったらしい。だからドドスからガレント軍が侵攻をしているとの噂だ。どうするアイン?」


 「イザンカは戦うつもりなのか?」


 するとオクツマートは周りを見てから頷く。

 そして重々しく言い始める。


 「レッドゲイルにも既に応援を要請しているらしい。俺たち傭兵も確実に戦争に参加だな」


 「だからか、レッドゲイルの『鋼鉄の鎧騎士』がこちらのブルーゲイルに来ているのは。だとすると戦争は近いな。今回の騒動、ガレントの奴ら邪魔となる俺たち傭兵部隊の『鋼鉄の鎧騎士』の数を減らすのがあいつらの目的だったらしい」


 苦笑しながら俺はもう一度水筒の水を飲みそう言う。

 ガレントとの戦いから何とか生還して、自軍と思っていたホリゾン公国軍に追われ、遠路はるばるこのイザンカに流れ着いたというのに。 

 どうも悪魔のアガシタは俺と女神の先兵を名乗るガレントを戦わせた異様だ。

 まったく……



 「戦争かぁ‥‥‥」


 ルデンのその言葉に誰もがもうじき戦争が始まると実感をする。



 * * * * *



 その後一週間ほどでそれは現実となった。

 イザンカ王国はガレント軍と開戦するのだった。 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る