第37話第七章7-3レッドゲイル

7-3レッドゲイル



 ヒドラが逃げ込んだ森には俺たち傭兵隊の「鋼鉄の鎧騎士」を待ち構えるガレント王国の「鋼鉄の鎧騎士」たちが潜んでいる。


 囮のヒドラを追っている所を不意打ちで討ち取ろうという腹積もりだ。

 しかし西の森で既にその事を知った俺たちは逆にダークエルフのザシャに協力してもらいガレントの「鋼鉄の鎧騎士」を倒す為に動いていた。



 「こっちだ! そのくぼみの向こう側に潜んでいる、ガレントの兵もいるようだ!」


 俺の「鋼鉄の鎧騎士」の肩に乗ったままザシャはそう叫ぶ。

 ザシャの精霊魔法、闇の精霊が森の様子を探ってくれたおかげで何処にガレントの連中がいるか分かった。 


 『分かった、イグニバル、ロマネスク、ガイジあの向こうだ!』


 『よし、アイン二手に分かれる。俺とロマネスクは左から! アインとガイジは右から行ってくれ!!』



 そこまで言って俺たちは二手に分かれくぼみの後ろへと向かう。

 くぼみの方にはヒドラが向かっているらしく多分その近くにガレントの「鋼鉄の鎧騎士」とガレント兵たちが待ち構えているのだろう。



 「まやかしの精霊か!? アイン貴様はそのまま真っ直ぐいけ! 森の精霊よ!!」



 ザシャが早速ガレントの精霊使いに気付いたようだ。

 肩から飛び降り木の枝の上に飛び乗る。

 そして呪文を唱え精霊魔法を発動させる。 


 くぼみからこちらに向かってうっすらと靄がかかるが俺は言われた通りガイジと真っ直ぐに進む。

 

 程無くザシャの精霊魔法で森の木々が揺れ動き靄を断ち切る。

 すると木々に潜んでいたガレントの兵士たちがいた。



 『本当にいやがった! アイン突っ込むぞ!』


 『待てガイジ! 奴らの【鋼鉄の鎧騎士】が先だ!!』



 言いながら俺は大剣をガレント兵たちの更に奥に構えていた「鋼鉄の鎧騎士」に叩き込む。



 がいぃんっ!



 俺の一撃にその首が飛ぶ。

 完全に想定外だったのだろう、そいつは身動き一つ出来ずに首を切り落とされその場で右往左往する。

 ガレントの「鋼鉄の鎧騎士」は慌てて体制を立て直そうとするも頭を切り飛ばされて中の操縦者は周りが見えなくなったようだ。

 そいつは視界確保の為に胸の扉を開くがそこへ俺の大剣がまたまた振り下ろされる。

 操縦者が言葉にならない悲鳴を上げているが俺の大剣は容赦なくそこへ叩き込まれる。



 どしゃっ!!



 ガレントの「鋼鉄の鎧騎士」の操縦者は大剣に体をつぶされながら機体ごと倒れる。

 俺は剣を引き抜き周りにいるガレント兵を薙ぎ払う。



 『うわっ! なんだ!?』


 同じくガレント兵を薙ぎ払っていたガイジが悲鳴を上げる。

 見ればガイジの「鋼鉄の鎧騎士」に森のツタが絡み付いている。


 『精霊魔法か!?』


 「こちらは任せろ!!」


 ザシャの声がしてツタにあの黒い靄の様なぼろ服の精霊たちが飛んで行く。

 そのまま絡まっていたツタにぶつかったそいつらは霧散したが同時にガイジの「鋼鉄のより騎士」を絡めとっていたそれが緩む。



 『このっ!』



 ガイジは緩んだツタから抜け出して槍を使ってそれらを切り刻む。

 そしてそのまま残ったガレント兵にその槍を叩き込む。



 どがぁんっ!



 「アイン、向こうだ! イグニバルたちの方へ精霊使いが逃げた!!」


 ザシャはそう言いながら先にそちらに走って行く。

 一番問題だった「鋼鉄の鎧騎士」を倒し、バラバラに逃げ出すガレント兵がいるが残り二体の「鋼鉄の鎧騎士」の方が先だ。



 『ガイジ、イグニバルたちの所へ行くぞ! 向こうにはまだ二体の【鋼鉄の鎧騎士】がいる!』


 『分かった!』



 ガイジの「鋼鉄の鎧騎士」は槍を持ち直し俺と一緒にくぼみの向こうに潜むガレントの「鋼鉄のより騎士」に向かうのだった。



 * * *



 がいぃぃいいぃぃんっ!



 どがっ! 


 

 大地を揺るがし周りの木々をなぎ倒し「鋼鉄の鎧騎士」同士が戦っている。

 身の丈六メートルを超すこの巨人の魔道兵器はその体からは思いもよらない程の力を発揮して周りの木々をなぎ倒しながら戦っている。




 『イグニバル!』


 『アインか!? よく来た助かる! あの【鋼鉄の鎧騎士】は手強いぞ、ロマネスクがやられた!』



 駆けつけ見ればロマネスクの「鋼鉄の鎧騎士」が地面に倒れている。

 イグニバルの「鋼鉄の鎧騎士」も片腕に折れた槍を突き刺されたまま何とか持ちこたえている様だ。



 『ガイジ、イグニバルの支援を! あいつは俺がやる!!』



 大きく飛び退いたイグニバルの前に俺は代わるかのように入り込むと正面からガレントの「鋼鉄の鎧騎士」が剣を振って飛び込んできた。

 俺はそれを同じく剣で受け止める。



 ガギィイイィィィンッ!!



 『ほう、我が剣を受け止めるか? ボロの【鋼鉄の鎧騎士】にしてはなかなかだな!』



 剣でつばぜり合いをしているとガレントの「鋼鉄の鎧騎士」はそう言って来た。


 『ぬかせ! ガレントが何故ここにいる!?』


 俺は脚部に力を込めつばぜり合い事相手の機体を薙ぎ払う。



 『おっと、ボロの割に力があるな? 搭乗者が優秀か? だが女神様の教えに従い世界平定の為我らが秩序に従え!!』


 

 ジャキンっ!



 そのガレントの「鋼鉄の鎧騎士」はそう言って剣を構え直す。



 『ふざけるな! 神などクソくらいだ!! 貴様らの秩序など俺が薙ぎ払う!!』



 俺も剣を構え直し対峙する。


 『ふっ、ならば受けるがいい神の裁きを!!』



 こいつかなりの手練れだ。

 今までのガレント「鋼鉄の鎧騎士」の連中とは違う。



 『行くぞ!』



 ガレントの「鋼鉄の鎧騎士」が動こうとした瞬間だった!!



 『隊長! まだ【鋼鉄の鎧騎士】が来ます! しかもあれは正規のです!!』


 『ふん、動き出したか? 残念だがここまでだな。そこの傭兵、名を何という?』


 『アインだ!』


 『覚えておこう。引くぞ!!』



 そう言ってその「鋼鉄の鎧騎士」は素早く森の奥へ移動する。

 と同時に靄がかかり視界が悪くなる。



 精霊魔法か?

 俺がそう考えていると視界の端に金色の髪の毛の少女が走り去る。


 あのエルフだ。




 しゅたっ!



 ザシャが俺の肩に乗って来る。

 そして緊張した趣で叫ぶ。 


 「アイン、向こうから新たな『鋼鉄の鎧騎士』が来る。数八つ!」


 それに俺は身構え剣を言われた方向に向ける。

 程無く数体の「鋼鉄の鎧騎士」が現れる。

 ガレントのと少し違うがこれは一体!?


 俺がそう思った瞬間だった。

 後ろから声がかかって来た。


 『アイン! あれはイザンカの『鋼鉄の鎧騎士』だ! 肩が赤い、レッドゲイルのだ!!』


 ガイジの「鋼鉄の鎧騎士」がイグニバルの機体を支えながらこちらに来る。

 見れば確かに肩が赤く塗ってある。

 俺は構えていた剣を下げその機体をもう一度よく見る。

 華やかな装飾がされたそれは確かに無骨なガレントのモノとは違った。


 『レッドゲイルの【鋼鉄の鎧騎士】‥‥‥』



 

 俺はただそうつぶやくだけだった。

   


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