第34話第六章6-5ガレント軍侵攻
6-5ガレント軍侵攻
「どう言う事だ? ヒドラじゃ無いのがいるかもしれないだと?」
向こうのテント近くでザシャから話を聞いたビブラーズ隊長が声をあげている様だ。
俺は「鋼鉄の鎧騎士」の知覚拡大を使ってその会話を盗み聞きする。
「間違いないだろう。それも数体いるようだ。それに精霊魔法を使った痕跡もある」
「精霊魔法だと‥‥‥ まさかな‥‥‥」
会話からするとビブラーズ隊長は何か知っているのだろうか?
俺がそんな事を思っていた時だった。
「いたぞ! ヒドラだ!! 『鋼鉄の鎧騎士』すぐに出てくれ!!」
ヒドラの探索をしていたレンジャーが戻って来た。
そして森の中のヒドラを見つけたと言っている。
『出るぞ!』
『おうっ!』
バビル小隊長もハイルドもすぐに「鋼鉄の鎧騎士」を立ちあげる。
俺もザシャたちの会話を盗み聞くのをやめバビル小隊長について行こうとした。
が、最後にザシャの驚きの言葉が耳に入った。
「なんだと? ガレントがここに!? ここはイージム大陸だぞ!?」
何?
ガレントだと??
『アイン、遅れるな!』
一瞬ザシャのその言葉に驚き動きを止めて振り返る俺をバビル小隊長が呼ぶ。
気にはなるが仕方ない。
今はヒドラの方が先だ。
俺は仲間の「鋼鉄の鎧騎士」共々森の中に入っていくのだった。
* * *
「この向こうの小高くなっている所だ。仲間が見張っているはずだ!」
そのレンジャーは俺たちの「鋼鉄の鎧騎士」を誘導しながら目的のその先を指さす。
どの程度のヒドラかは知らないが「鋼鉄の鎧騎士」が三体もいれば容易に退治できるだろう。
誰もがそう思っていた。
「くひっ!?」
先行していたレンジャーにいきなり矢が突き刺さる。
驚く中、そいつはそのまま前のめりになって動かなくなった。
『なんだ!?』
『うおっ!?』
すぐ後ろについていたバビルとハイルドの「鋼鉄の鎧騎士」は倒れたレンジャーを見て立ち止まったがハイルドの「鋼鉄の鎧騎士」がいきなり倒れそうになる。
『なんだ? 足に何か絡み付いて‥‥‥ ぐぁっ!?』
どすっ!!
それは一瞬だった。
ハイルドの「鋼鉄の鎧騎士」に槍が突き刺さっていたのだ。
遅れてやって来た俺はその様子を見て驚きを隠せない。
その光景の向こうに槍を投げた張本人がいる。
あれは間違いなくガレントの「鋼鉄の鎧騎士」だった!!
『ぬうっ!? 何者だ!?』
慌ててバビル小隊長も持つ槍を構えるがその横からガレントの別の「鋼鉄の鎧騎士」が飛び出して来てバビル小隊長の「鋼鉄の鎧騎士」の横腹に槍を突き刺す!
『ぐはっ!』
『バビル小隊長!! くそっ! なんでガレントの【鋼鉄の鎧騎士】がこんな所にいる!?』
俺は槍を捨て腰についている長剣を抜く。
そしてハイルドの「鋼鉄の鎧騎士」に槍を突き立てているガレントの「鋼鉄の鎧騎士」に切り掛かる。
が、俺の足にも地面から伸びるツタが絡まる。
『精霊魔法か!? だがっ!!』
俺の「鋼鉄の鎧騎士」にその程度の束縛は無いにも等しい。
それこそザシャくらいのレベルの精霊魔法でなければこの「鋼鉄の鎧騎士」は止められない。
俺は力任せに絡み付いたツタを引きちぎり一気にハイルドの近くにいたガレントの「鋼鉄の鎧騎士」を切り伏せる。
俺の動きに追い付けなかったこいつはあっさりとその胴体を別れさせ地面に倒れる。
ザシュッ!
ぎぎぎぎぎぎぃ‥‥‥
ばたーん!!
『ハイルド! おい、ハイルド生きているか!?』
倒れている仲間の「鋼鉄の鎧騎士」に声を掛けるもピクリとも動かない。
俺は奥歯をかみしめ槍を腹に刺さったままのバベル小隊長の近くへ急ぐ。
そこにはガレントの「鋼鉄の鎧騎士」三体に対して旧型の「鋼鉄の鎧騎士」で大立振舞いをしているバベル小隊長がいた。
『バベル小隊長!! くそっ! お前らぁっ!!』
俺は咆哮をあげそこへ突っ込む。
その様子に気付いたガレントの二体がこちらに向かって動き出すが量産機程度の「鋼鉄の鎧騎士」がこのオリジナルについて来れるはずもない。
すぐさま俺は一体目の頭を掴み地面にたたきつける。
そのあまりの速さにもう一体は驚き動きを止める。
俺はそのまま地面に倒され動きを一瞬止めたガレントの「鋼鉄の鎧騎士」に剣を突き立て中の搭乗者を始末する。
そしてすぐさま立ち上がり動きを止めたもう一体を切り伏せる。
ざんっ!
最初のガレントの「鋼鉄の鎧騎士」同様三体目もその胴体を上下に分け大地に倒れる。
そして返す刃をバビル小隊長と対峙しているガレントの「鋼鉄の鎧騎士」に向ける。
『バビル隊長、加勢する!!』
最初の攻撃と三体同時に戦っていた為に既にぼろぼろになっているバベル小隊長の「鋼鉄の鎧騎士」。
所々装甲がはがれどうやら片腕も動かなくなっているらしい。
ガレントの「鋼鉄の鎧騎士」は剣を振り上げ俺に襲ってくる。
『そんなもので!』
がきんっ!
ばっ!
どすっ!!
振り下ろされたその攻撃を俺は左手の盾で弾き空いた胴体のど真ん中に剣を突き刺す。
それは見事にガレントの「鋼鉄の鎧騎士」の背中まで突き抜けその動きを止め両手両足の力が抜ける。
俺はそれをそのまま剣と同時に振り払いすぐにバビル小隊長のもとへ行き「鋼鉄の鎧騎士」から降りる。
「バビル小隊長! おい、バビル小隊長!!」
既に各座して動かないバビル小隊長の鋼鉄の鎧騎士の出入り口を叩く。
するとその出入り口が開き中から大けがをしたバビル小隊長が出てきた。
「やられたな‥‥‥ この傷では‥‥‥持たない‥‥‥ アイン、すぐに‥‥‥戻って‥‥‥この‥‥‥事を‥‥‥伝え‥‥‥」
がくっ!
俺に支えられてたバビル小隊長そこまで言って力を失う。
「おい、バビル、バビル小隊長!!」
揺さぶり声を掛けるも既に彼は動かなくなってしまった。
俺は支えた手が真っ赤に染まるのを見て静かに彼をその場に降ろす。
「ガレントの『鋼鉄の鎧騎士』がなぜこんな所へ‥‥‥ しかし今は!」
ぐんっ!!
カンッ!!
俺は「鋼鉄の鎧騎士」を感覚共有で遠隔から操って飛び来る矢をその腕で防ぐ。
「なっ!? 『鋼鉄の鎧騎士』が勝手に動いた!?」
驚きの声のした方に俺は「鋼鉄の鎧騎士」の剣を叩き込む。
どがっ!
ぐしゃっ!!
「勝手に動いている! 精霊たちよ! あいつを束縛しろぉ!!」
どうやら近くにいたガレントの兵たちと精霊魔法使いだろう。
周りからあのツタが俺に殺到するが俺は「鋼鉄の鎧騎士」に抱きかかえられながらその中に逃げ込む。
そして声のした方に剣を振るい木々の間に隠れていたガレント兵たちを大木と一緒に切り伏せる。
『このぉっ!』
剣を振り上げ仇とばかりにこいつらを蹴散らす。
「きゃっ!」
と木の枝にでも乗っていたのだろう、足場を崩して落ちてくる小柄な奴がいた。
俺はそいつに向かって剣を振り下ろそうとしてその手を止める。
子供?
いや、細身できゃしゃだがその金髪、耳長の特徴的な姿は過去にも一度見ている。
エルフだった。
まだ若いエルフだろう、見た目が十五、六だった。
俺が剣を止めた瞬間彼女はそのまま一目散に逃げ去る。
まるでリスか鼠のように。
完全に頭に血が上っていた俺はそれに我に返り血で汚れた大剣を振り払い冷静になる。
『すぐに戻ってこの事を伝えなければ‥‥‥』
ザシャの予感が当たった。
俺は急ぎ戻るのだった。
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