第31話第六章6-2イザンカ王国
6-2イザンカ王国
馬車で一週間くらいと聞いていたイザンカ王国へは「鋼鉄の鎧騎士」で移動することによって思いの外早く五日程度ので首都ブルーゲイルの城壁が見えて来た。
「見えたぞ! あそこがイザンカ王国首都ブルーゲイルだ!」
『オクツマート、なんでこのイージム大陸はどこもかしこも城壁が有るんだ? 途中の小さな村でさえ立派な壁があったが』
オクツマートたちを乗せて移動をしているが、馬車や馬の様に乗り心地いいわけでないこの「鋼鉄の鎧騎士」。
俺は疑問に思った事をオクツマートに聞いてみる。
途中の小さな村に必ず立派な壁が出来上がっていて畑でさえ害獣除けにしては立派過ぎる柵が出来ていた。
するとオクツマートは揺れる中、舌を噛まないように話し出そうとする。
「古来よりイージム大陸は人が住むには過酷な場所だったのだ。それは我々ダークエルフでさえそうだった。この地にはお前も見た通り魔獣や妖魔、幻獣が多い。人の村などすぐに壊滅させられてしまう」
オクツマートが話す前にザシャがそう語ってくれた。
『そうなのか、オクツマート?』
「まあそうさな、ここに来るまでにお前の『鋼鉄の鎧騎士』があったおかげで問題無く来れたが途中何度か魔獣に出くわしたろ? ここはそう言う所なんだ」
確かにノージム大陸に比べれば異様なほど魔獣と出くわした。
だがこの「鋼鉄の鎧騎士」に太刀打ちできるわけも無く、お陰で難なくここまでこれた。
「だからさ、たとえ流れの傭兵が『鋼鉄の鎧騎士』なんてものを個人所有していてもイザンカ王国は何も言わない。むしろ歓迎されるんだ。俺はそんな中ここで冒険者をするのが嫌になってな‥‥‥ 確かに歴史は古いからまだ見つかっていない遺跡もあるが、それ以上に魔獣や妖魔がいれば危険度が上がる。だからここでは冒険者になるのは多くても生き残るのは少ないんだよ」
オクツマートはそう言ってブルーゲイルの城壁を見る。
「さてと、じゃあ予定通りこの辺で始めるか?」
ルデンがそんな重くなりそうな空気の中わざと軽い声を上げる。
俺たちは「鋼鉄の鎧騎士」を止めてその場でこいつの見た目を変える為に採っておいた魔獣の血や泥、そしてぼろの布などで見た目を悪くすることを始めるのだった。
* * *
「とまれ! お前たちは何者だ!?」
ブルーゲイルの門の近くまで来ると衛兵が俺たちに大声で声を掛けて来た。
すぐにオクツマートが対応をする。
「流れの傭兵だ! 仕事が欲しくてこいつらと共に来た!」
「『鋼鉄の鎧騎士』使いか。分かった、何か身分を証明するものは有るか?」
するとオクツマートは冒険者登録のカードをその衛兵に放り投げる。
衛兵はそれを受け取り内容を確かめてからこっちへ降りて来いと言わんばかりに手招きをする。
俺は「鋼鉄の鎧騎士」を座らせみんなを降ろし俺も中から出て来る。
「元冒険者か? 他の者は?」
「傭兵家業になってからの傭兵仲間だ」
するとその衛兵は俺たちを一瞥してから少し驚く。
「ダークエルフがいるのか? 珍しいな。しかし精霊魔法使いがいるのは助かる。分かった、傭兵部隊への紹介状を書いてやる。少し待て」
何ともあっさりとしたものだ。
「鋼鉄の鎧騎士」がいるにもかかわらずたいした調べもせず紹介状まで書いてくれるとは。
その衛兵は紹介状を書き終わり壁伝いで西の方に行くように言う。
しばらく行けば傭兵を受け入れる専用の門があるそうだ。
俺たちは紹介状をもらってそちらに向かう。
「な、ここでは傭兵は何時でも歓迎なんだ。それに『鋼鉄の鎧騎士』やダークエルフまでいれば即戦力だからな。しばらく働いて功績を積めば街の中にも自由に出入りできるさ!」
オクツマートは嬉しそうにそう言う。
『ところ変わればだな』
「それだけここは生きるのに難しい土地なのだ」
俺のつぶやきにザシャは面白くなさそうにそう言う。
しばらく行くと大きな門があってやはり衛兵が大声で声を掛けて来た。
「止まれ! お前たちは何なんだ!?」
「向こうで紹介状をもらった流れの傭兵だ! 仕事が欲しい!!」
オクツマートはそう言いながら俺に座るように指示する。
そしてその門衛の前に膝をついた時だった。
『流れの傭兵か?』
『見た事無い型だな?』
門の中から二体の「鋼鉄の鎧騎士」が出てきた。
そいつらは見るからに古い機体で盾と槍を装備していた。
「悪いが操縦者もおりてもらう。一応安全確認の為だ!」
衛兵はそう言いながらオクツマートから紹介状を受け取る。
そしてそれを見てから俺たちを見回す。
「本当にダークエルフがいるのか! これは助かる!!」
そう言ってすぐに認証のサインをして俺たちを奥の手続き場に案内する。
「傭兵志願者だ! 精霊使いもいるぞ! 後は頼む!」
そう言ってそいつは行ってしまったが精霊使いと聞いて職員が湧きたつ。
すぐに受付の奴が紹介状を確認する。
「男四人、女一人でダークエルフか。『鋼鉄のより騎士』使いか? 良いだろう、入隊試験をしてもらう。それが合格すれば入隊だ」
そう言って入隊試験の説明をする。
俺とザシャは「鋼鉄の鎧騎士」での模擬戦と精霊魔法の具現化をする事となった。
ルデンたちは一般的な試験。
そちらは問題無いだろう。
「さて、ザシャは問題無いだろうが俺の方だな」
「鋼鉄の鎧騎士」同士の模擬戦はその機体の状態と操縦者の技量を見ることになっているがあまり派手にしない様にしなければならない。
何せ俺の乗っている「鋼鉄の鎧騎士」はオリジナルなのでその辺の「鋼鉄の鎧騎士」とは比較にならない。
今は見た目をぼろぼろにしているが、その能力は破格のモノだ。
「いいさ、うまくやるだけさ!」
俺はそうつぶやき俺の「鋼鉄の鎧騎士」に乗り込むのだった。
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