第18話第四章4-2荒野
4-2荒野
「連れていけ!」
ゾルダ将軍のそう言うとすぐに兵たちが動く。
「くそっ! 放せっ!!」
ルデンが叫ぶが剣を向けられていれば大人しくするしかない。
俺は既に動かなくなったベニルを見る。
今までずっと一緒に生き延びて来たってのに、こんな所で‥‥‥
そして俺が手に入れた『鋼鉄の鎧騎士』も見る。
俺は大声を上げて言う。
「俺の乗って来た『鋼鉄の鎧騎士』欲しいなら勝手に使えばいいだろう! 俺たちが何をしたというのだ!? ホリゾン公国の為に剣を振っていたのではないのか!?」
「テグの分際で立てつくか? 貴様は大人しく我々の言う事を聞いていればいいのだ!」
悔しさの中に思わずそう言葉を吐き出す。
これが奴隷であるテグに対する扱い?
テグだったから受ける仕打ち?
俺たちは、俺はただ生きる為に剣を振っただけなのに!!
味方に裏切られ殺されるのがテグなのか?
最下層の奴隷だったからと言ってこの仕打ちなのか!?
俺はゾルダ将軍を呪い殺すような視線で見る。
そして思う。
俺にもっと力があったのならば‥‥‥
「だったら呼べばいいだろう? 君はもうその力を手に入れたんだ」
そいつは俺の前に立っていた。
まるで最初からそこにいたかのように普通に立っていた。
「君はもうその力を手に入れている。さあ、彼女の秩序を崩す為に力を振るうがいい!!」
「お、お前は‥‥‥」
俺を囲む兵士たちがざわめく。
それもそのはず、たった今までそこには俺以外誰もいなかったのだ。
それが瞬きした瞬間目の前に現れたのだから。
「おい、お前! 何者だ!? 何処から入って来た!」
「ガキじゃないか‥‥‥しかも女のガキ?」
「とにかくお前も大人しくしろ!」
そう言ってその兵士は彼女の腕を掴もうとする。
「不敬だな。君、消えちゃえ」
ぼんっ!
言われたその兵士はその場で破裂して吹き飛ぶ。
「なっ!?」
「何をした!?」
周りの兵士たちも驚くがこいつはくいっと顎を揺らすと残りの兵士たちも同じように破裂する。
「何者だ!? 一体何をした!?」
「うん? 君がここの一番偉い人か? 僕はアガシタ。天秤の女‥‥‥いや、今は悪魔だったな? 彼に悪魔の力を与えしモノだよ」
そう言って俺を見る。
にたりとあの笑いをしてから両手を上げて言う。
「さあ、呼ぶがいい、君の『鋼鉄の鎧騎士』を!」
言われた俺は向こうに置かれている俺の「鋼鉄の鎧騎士」を呼ぶ。
今はこいつの言う事を信じるしかない。
「来いっ!」
ぶんっ!
俺の叫びに俺の「鋼鉄の鎧騎士」は目を光らせ立ち上がる。
それに驚いたホリゾンの「鋼鉄の鎧騎士」が取り押さえようとするが、俺には「鋼鉄の鎧騎士」との感覚がつながる。
そして伸びくるその手を払い除けホリゾンの「鋼鉄の鎧騎士」の頭を掴む。
そのまま力を込めそいつを投げ飛ばすと頭がもげ向こうに飛ばされる。
「なにっ!? 誰も乗っていないはずなのに!?」
そして俺の「鋼鉄の鎧騎士」はそのまま立ち上がりこちらに真っ直ぐにやって来る。
オリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」は俺の前に座り込み胸を開く。
急ぎ中に乗り込む。
『後は大丈夫だろう? 頑張ってくれたまえ』
また耳元で彼女のささやきが聞こえるが見渡してもその姿はない。
俺は「鋼鉄の鎧騎士」を立ちあがらせ一番守りの少ない東に向かって走り出す。
「アイン! 置いて行かないでくれっ!」
「アインっ!!」
俺はその声を聴き縛り上げられているルデン、ベリアル、オクツマートを拾い上げ一目散に逃げだす。
その動きはここにいるホリゾンの兵士たちの予想を上回るモノで追従を一切許さない。
残ったホリゾンの「鋼鉄の鎧騎士」でさえ俺の動きについて来れず立ち往生している。
俺たちはそれをしり目にこの場から逃げ去っていくのだった。
* * * * *
『ここまで来れば追っては来ないだろう‥‥‥』
俺はひたすら「鋼鉄の鎧騎士」を走らせサボの港町のずっと東、荒れ果てた土地にいた。
確かここら辺は不毛の大地とか言われ草木もほとんど生えず、岩石が多くやせた土地のはず。
戦略的にもあと少し東に行くと断崖絶壁の海になるので使い勝手の悪い地域のはず。
とにかく俺は一旦ここで「鋼鉄の鎧騎士」を止めルデンたちの縄をほどく為「鋼鉄の鎧騎士」から降りた。
「大丈夫か、お前ら?」
「なんとかな、しかし馬よりひどい」
「ああ、死ななかったのは儲けものだがもう少し何とかならんか? 体中痛い」
「畜生、ホリゾンの野郎ども‥‥‥」
縄をほどきながら仲間の様子を見る。
怪我は無い様だ。
「アイン、さっきの女のガキって‥‥‥」
オクツマートは俺を見上げながら聞いてくる。
「ああ、あれが俺が契約した悪魔、アガシタだ」
「あれが‥‥‥」
ベリアルはそう言って「鋼鉄の鎧騎士」を見上げる。
「そうか、あれがアインの言っていた悪魔か‥‥‥ 確かに、悪魔の方が俺たちにとってまだましだな‥‥‥」
うっすらと明るくなり始めた東の空を見る。
それはまるでここにいる仲間たちの気持ちを代弁するかのようだったのだ。
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