第9話第二章2-3合流
2-3合流
「これが鉄の船か!」
ゾルダ将軍はそう言って上機嫌にこのガレント軍艦、鉄の船に乗り込んできた。
結局あの後動きを封じられたガレントの軍艦たちは次々に俺たちホリゾンの軍勢に乗り込まれ逃げる事も出来なくなり拿捕された。
まあ、数隻はそれでも何とか脱げ切ったのもいたが快挙である事には間違いない。
捕らえたガレントの兵にこの船についていろいろと聞き出しているのだろう、上層部が次々と乗り込んでくる。
「よし、後は本陣に任せ俺たちは先にサボの港町に渡った連中と合流するぞ!」
バッカス隊長はそう言ってまたまた元の小舟に乗り移り俺たちを率いてもう目の前まで来ていたサボの港町に上陸するのだった。
* * * * *
サボの港町は驚くほど簡単に占領出来た。
ガレント軍もこの港には駐留しておらず、近郊には前線が展開もされていない。
そして住民たちも大人しいもんだ。
俺たちが占領して本陣が到着するのもすぐだった。
本陣はさっそくこの街の郊外まで移動して前線を築く。
魔導士どもが出てきてロックゴーレムによる石垣を作成したり物見やぐらを組み立てたりと忙しい。
「どうやらガレント軍はもっと南、ティナの町の北にある砦に集結するらしいな」
バッカス隊長はサボ港町の南に出来上がっていく石垣を見ながらそう言う。
俺たちの目的は達成された。
このサボの港町を占領出来ればウェージム大陸北部の資源が手に入る。
そして海峡の豊かな海産物も手に入る。
本国への食糧供給がぐっと楽になるのだ。
「しかしバッカス隊長、問題はこれからだろう? 前線を構築してガレントの襲撃に備えないとまたすぐにこのサボの港町を奪還されるぞ?」
「ああ、だから上層部がこれから交渉を始める。俺たちは当面ここで前線の維持をするのが今後の任務だ。しかしここまで上手く行くとはな‥‥‥ 正直海峡でガレント軍艦が出てきた時は肝を冷やした。アイン、お前のお陰でもあるぞ。きっと女神様の祝福も訪れるだろう」
ペンダントを取り出しそれをなでる。
俺はむっとしたまま何も言わない。
バッカス隊長は女神教の信者らしい。
だが俺は知っている。
神は残酷だ。
上手く行こうが行くまいが何時も「試練」と言って全てを丸め込む。
そして俺にはあの記憶が徐々に戻ってきている、そう俺はこことは別の世界にいた。
どう言う訳かあっちの世界で死んでこの世界に生まれたらしいが、そんな死んだ奴の記憶などどうでもいい。
俺は今を生き延びる事で精一杯なんだから。
「約束だ、お前らに飲ませてやる。今日は騒ぐぞ!」
バッカス隊長は俺の肩に手を置きながらそう言うのだった。
◇ ◇ ◇
サボの港町を占領して一週間が経った。
その間ガレント側がこちらに仕掛けて来る事は無かった。
しかし、噂ではガレントは北の砦となる古い遺跡らしい所を拠点として戦力を集めているらしい。
それもかなりの戦力らしい。
なので慌てたホリゾン公国もここにきて使者を出し交渉を始めた。
ここサボの港町から北の砦までをホリゾン公国の領土とし、和平交渉を始めるならこれ以上の南下はしない。
それがホリゾン公国の提案だった。
勿論そうそう簡単には話は通らないだろうが、最新鋭の「鋼鉄の鎧騎士」や「巨人」の脅威はガレント側だって軽視できない。
まずはこれで交渉のテーブルには着くだろう。
後はお偉いさん方次第だ。
「アイン、あのガレントの船にあった投石機だが、凄いな。わずかな魔力で人の頭ほどある石が正確に飛ばせる。今うちの魔導士たちが研究して複製が出来ないかやってるらしいぞ。これが前線に配備されれば大きな戦力になるな!」
ベニルは何が楽しいのか俺のいるテントまでやって来てそう言う。
「暇なのか? お前は?」
「いや、さぼりだ。それよりアイン、お前どうする?」
ベニルは小指を立てながらニヤリと笑う。
「報酬が出ただろ? サボの町に遊びに行かないか?」
あまり気が進まないがベニルの言う事ももっともだ。
俺たち奴隷戦士はいつ死ぬか分からない。
アーシャもいなくなってしまった。
俺は苦笑しながらベニルに付き合い仕事をさぼって町へと繰り出すのだった。
* * * * *
「全く遊ぶなとは言わんが仕事はしろ!」
俺たちはバッカス隊長に絞られている。
運悪く遊びに行っている時にお呼びがかかったようだ。
不機嫌なバッカス隊長をしり目に俺たちは大人しく背筋を伸ばし黙っている。
「まあいい、アイン。お前に色々と聞きたい事がある。そしてこれからやらねばならない事がある」
そう言いながらバッカス隊長は一つの書類を取り出すのだった。
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