第280話 十字の星屑

 目の前に再び現れた黒いスカルゴースト。明らかに新品のそれは1機目とは違い、手には大型ライフルの代わりと言うように巨大な黒い槍を持っていた。


 いや、スピアと言うより馬上槍ランスかね。


 馬に乗ったまま突進して正面の敵に突き込むためだけに特化したスパイク。腕で保持するには重すぎるから腰の金具で固定する前提だった金属の棒切れ。取り回して使う事なんて最初から考えちゃいない代物。


『まっすぐ行ってドカン』そのためだけに生まれた特化武器。


 ただしそれは人間が使う場合の話。巨大ロボットが扱うとなったらまた違ってくる。どんな仕掛けがあるのやら。


X2‐2.<野蛮で下劣な有色人種カラード。奴隷階級の分際で白色人種ホワイトに逆らう異教徒。主の御名の下に決闘を申し込む>


 黒いスカルはこちらに突き付けていたランスを振り、降着姿勢を取っているオレの白いスカルを指し示す。キザッたらしい。


(決闘ねえ。聞いて呆れらぁ)


 さも両者にとって神聖な勝負のように言っておきながら、その実はルールの外で自分が有利であることに常に腐心して悪びれない性根。


 実にらしいっちゃらしいわ。西洋の島国女が。


《正々堂々とは言ってない。キリッ》


違いないちげえねえ


 1戦して多くの武装と左腕を無くしているこっちの乗機に対し、向こうは再びフル装備。しかも何かしらオレのスカルに細工した空気が通信越しでもアリアリだ。


 なんせ審判なんざいないからな。忖度された試合判定が期待できない分は自分でシコシコ動いて決闘をより有利に、確実に勝てるよう試合前から細工に走ってんだろうよ。


 アウトと話していた時間は5分もなかったはずだからそう大した事は出来てないだろうが。照準でも狂わせたか? あるいは爆弾でも仕掛けたか。


 何より嫌らしいのがこのタコの言い分を拒否出来ないって現状だ。


 ブリテン女はオレが断ったら即座に殺しに来るだろう。スーパーロボットに乗っているなら人間ひとりを殺すくらいどんなヘタクソでも簡単だ。


 つまりどんなに白々しかろうが、形だけでも応じなければここでデッドエンド。


 これは決闘と称した処刑だ。


 向こうがプライドを満たすためだけに決闘の体をなしているだけ。まともな勝負なんざ初めからやる気は無い。


 別に肌の色が白でも黒でも黄色でもやってる八百長儀式だろうがな。建前が死ぬほど欲しい連中がよ。


「いいだろう。背中を向けてテクテク歩いて、合図で撃ち合うか?」


《それは現地侵略時代のアメちゃん方式では?》


(開拓時代と言ってやれ。少なくともあの国家としてはそういう認識なんだろうしよ)


 ――――視界に映ったランスの挙動に条件反射で体が動き、アクセサリーの重力制御と合わせて思い切り横っ飛びをする。


「まだ乗ってないぞ!」


 オレのいたステーションの床を無造作にランスで突きやがった!


 引き抜く動作ではく離した床材が散弾のように四方へ飛び散り、いくつかの破片がオレのジャージをナイフのように引っ搔いていく。


《ああん♪ ダメージ描写なんて屈辱》


(嘘つけ! 破けて喜んでんじゃねえよ)


 本来ならスーツちゃん製の高性能ジャージが破けるわけはない。だがこの無機物は衣服としての辻褄を合わせるためか、たまにわざと良い感じに破れやがる!


X2‐2.<無礼な口を聞くな劣等種! そらっ、手袋代わりよ!>


 決闘に手袋を放るってのは欧州の作法だろうが! 再び雑な突き込みで床を抜いた黒いスカルは、今度はただ引き抜くのではなく横に裂くようにしてランスを振り回した。


 当然として先ほど以上に破片の雨が宇宙に飛び散っていく。


「野郎っ」


 思考加速で見えていてもどうこう出来るもんじゃねえ。せめてもっとも破片が少ないルートを選んで飛び退き、そのままオレのスカルゴーストの操縦席に逃げ込む。


 クソが、貫通しないにしても当たったら痛いんだよ!


《爆弾その他、操縦席に増えている物は無し。コンソールを弄った形跡とかはちょっとわかんにゃい》


(とりあえず乗った途端にドカンじゃないならいい! スカルを立ち上げるぞ!)


 そこにまだ開いたままの操縦席を目掛けて黒い切っ先が迫ってくる。決闘と言ったくせにオレの準備を待つ気はさらさらないようだな!


 メインモニターはまだ立ち上がっていない状態。カンだけでとっさに右に躱し、横っ腹を蹴り飛ばす。左腕が無い分だけとしちゃ小さくなったのが幸いしたぜ!


X2‐2.<このっ、足癖が悪いわね!>


 バルカンとビームの掃射を回避しながら風防キャノピーが閉じるのを待つ。メインモニターは風防キャノピーが閉じないと映らねえ。サブとレーダー頼りだ。


 あークソ、なんかあちこちギシギシ言ってるがしっかりしてくれやスカルよぉ! こんなタコに負けていいはずがないだろうが!


《敵の細工が分かったゾ。ロボット側じゃなくてザンバーだナ》


(ケッ、武器のほうかい。カッコつけて決闘とか抜かしつつ、壊れた武器や弾の出ない銃を持たせそうな連中だとは思ってたよ! クソが!)


 どんな機械も人の手が入れられるようメンテナンスハッチってのがあるもんだ。そこから弄って調整を狂わせやがったな? 悪い意味で向こうもこっちと同型で同じ装備。ちょっと知識があればそのくらいの細工は難しいこっちゃねえわ。


《粒子加速の形成バランスが狂ってる。これだとソード状にならずにすぐに霧散しちゃうナ》


(直りそうか? もうこれしか武器が無いぜ)


 戦闘中だった事もあってコンテナの武装で拾えたのはこれだけだ。勿体ないが話だが後はもう宇宙の彼方に飛び去っちまったい。


《キビシイナー。スカル側からだとザンバー側の設定と干渉してうまくいかないデ。普通は操縦席から設定変更できるんだけど、生産優先の急造品だからそのあたりの規格統一がうまく出来てないみたい》


(つまりこの銃身兼用の細い鞘をこん棒代わりにブッ叩くしかねえってか。ロボットの装甲に効くかねぇ……)


 ひとしきり射撃をして無駄弾と悟ったのか、こっちへの攻撃をやめて浮き上がってくる黒いスカル。


 はためくマントが機体色と相まってやたら昔の創作に出てくる悪役っぽいぜ。


 全身を包むマントってデザインは作画コストを減らす意味でもよく使われてたらしいな。確かにマント付けてるだけで無駄に偉そうにも見えやがる。歴史的に見てもお偉いさん用の装飾なのは間違いないしよ。


 付けてるのはだいたいいけ好かないスカしたジョンブルだがな! 心が貧しい分だけ着飾りやがるぜ!


X2‐2.<行儀の悪い奴隷階級が。主人に歯向かった事を後悔するがいい>


 人がロボットに乗り込むのを邪魔したあげく、あれだけ必死に乱射していたタコがすまし顔でなんか言ってら。取り繕えてるつもりかよ。


「まだ言ってんのか……カビたパンと腐った葡萄酒で出来た体の原始人が」


 世界の覇者気取りの新参め。


 てめえら白人の先祖が文明人を名乗る遥か前から、こちとらの先祖はデカい文明築いてんだよ。


 もしかしてその差別感情、ついこの間まで槍持って穴の中でウホウホ言ってたからじゃねえか? テメエらより先に文明人だった有色人種に、先祖の本能でコンプレックス抱いた結果なんじゃねえの? ええ?


X2‐2.<っ! Monkeyぃぃぃぃぃ!!>


 マントを翻して飛び込んでくる黒いスカル。接近戦――――いや、白兵戦の間合いがお望みかい。


 頭のバルカン、肩のビームガン。そして手持ちの長いランスを生かせる距離。


 それは中距離より近距離に近い、射撃戦にも白兵戦にもすぐ移行できる間合い。


 多少照準が狂っていてもなんとか当てられる距離。遠近どの武器が壊れてもすぐに切り替えられる距離。最悪体当たりぶちかましに賭けられる距離。


 つまり――――オレが一番好きな距離だぜ! この野郎!


 ランスの突きをすり抜けて、剥き出しの頭部にザンバーの鞘を叩きつける。


 ここまでやってくれたんだ、ガキだからってもう加減しねえぞ!


X2‐2.<Ouch!?>


 こっちと同じ性能なら装甲表面にわずかではあるが対エナジー防御がされているはず。まずはそのコーティングを物理殴打で引っぺがさせてもらうぜ。


 スカルの頭部はセンサーの塊だ、だらこそ戦闘中はマントをすっぽり被るわけにはいかず剥き出しにするしかない。


 ここへの衝撃ならある意味で操縦席以上に効く! センサーが壊れればロボットの中なんざ真っ暗な箱の中と一緒だ!


 だが、これでどうこうするって事は無い。今やってるのは言わば『通り道』を作るための下準備。


 対エナジー効果を持つマントを羽織ったロボットを潰そうってのに、こっちの持ってる武器はテメエのせいで酷いもんでな。


 目指すは破損させて露出した内部機構への串刺しだ。首の下にある操縦席までザックリとなぁ。


 ザンバーのブレード発振部分を捻じ込んで、エナジーブレードを直接おまえに味わわせてやるよ! 粒子を超加速したエネルギーの激流だ、集束が甘かろうが人間なんざ一瞬で蒸発するぜ。


「もう一丁!」


 デュアルカメラのある正面を今一度。木刀でもぶつけるようにブッ叩く。


 さすがにこっちの鞘が持たねえか、ひん曲がっちまったい。


 まあ完全じゃないがブレードの筋道はできた。装甲に浮いた亀裂が見えてるぜ。


 二撃でヘシ折れた鞘を捨て、いよいよトドメとザンバーの柄を構え――――かけたところで強引にランスを振り回された。


(っ? ――――クソ)


 初動は見えていたのにこれはもう躱せねえ。スティックに伝えた感触よりスカルの動きが明らかに悪い。


 仕方なく黒いランスをザンバーの柄で弾く形を取ったが、そのせいで間合いを取られちまった。


《スカルゴーストの機体性能がさらに低下中。稼働当初の62パーセント。あと1分で50パーを切ると予想》


(6割か、鈍いはずだぜ)


 こいつを渡されたとき最初から言われていた事だ。全力戦闘は1回が限度だってよ。


 今のこれはまだその1戦の最中、ロスタイムですなんて言い訳を機械は聞いちゃくれねえわな。


X2‐2.<あアAッ、Aaaaaaaaaaッッッ!!>


 こっちへ寄るなと言わんばかりに半狂乱で得物を振り回す黒い海賊。その姿は追い詰められて狼狽した小物の犯罪者のよう。


 だが有効だ。チッ、普通ならタイミングを読んで飛び込むだけで済むが、こうも動きが鈍ったロボットじゃ近づくのも難しいや。


 手持ちのランスはそう怖くない。厄介なのは頭部のバルカンと肩のビームガンだ。ああも乱射されるとラッキーヒットを警戒してどうしても飛び込みの踏ん切りがつかん。


 まあいずれは弾切れになるだろう。恐怖で冷静さを欠いたビビリってのは、放っておいても無駄弾を垂れ流すもんさ。


「ぼちぼち決めるぞ。もうガキを殺したくないとは言ってられん」


 一度は勘弁したんだ。大人として世間的な義理は果たしたろう。ガキでも何度もバカやったら死ぬもんさ。


 2門のバルカン砲の砲口から流れていた曳光弾の光が途切れる。


 それを合図にスカルゴーストのブースターを吹かして、一気に肉薄しようとスロットルを踏み込んだ。


「うおっ!?」


 ガスッ、という強い振動と共に進行方向が大きく乱れる。


《フレキシブル・バーニヤ、1番ノズル停止!》


 背後右上に展開していた噴射口から火が途切れ、4基のスラスターバランスを崩したスカルはあらぬ方向を向いてしまう。


X2‐2.<死ねぇぇぇぇぇぇぇ! Yellowぉぉぉぉ!!>


 こっちの機体トラブルから絶好のチャンスを見て取ったブリテン女は、ここまでの狼狽から一気に覚醒した。


 だがやつが突き出したランスは明らかに間合いが遠い。


 ここはまだ飛び道具の距離。いかに長物のランスといえど届く距離ではない。


 無論、やつも届かぬ攻撃を繰り出すほど愚かではなかった。


 持ち手から紫の噴射光を迸らせて『発射』されたのは、ランスの本体そのもの。


 その鈍く輝く弾芯から、それ以上に光り輝くビームのフィンを展開して宇宙の闇を突き進む。


 まるで触れたもの何もかもを粉砕していく破砕機の如く!


《両脚部全損! 電力カット!》


「やっっっ、ろう!」


 胴体への直撃こそ免れたが、反応が遅れてスカルの膝から下をゴッソリ喰われた!


 あのランス、槍の先を発射できるうえにエナジーブレードをまとえるのか! ドデカい暗器だぜクソが!


X2‐2.<しぶといっ! いいかげん死ねぇ!!>


「1番をニュートラルに! 残りを再調整!」


 挙動のおかしい1番を完全に止め、他のスラスターのパラメーターをザックリ再調整! トラブルまみれの人生ナメんなゴラァ!


《回避回避回避! もうどこに当たっても終わりだヨ! 死んじゃうー、死んでしまうー》


「うるせえ! 死ぬか!」


 因縁の5回を潜り抜けてやっとここまでやってきたんだ! ボーナスタイムは終わらせねえ! 生き残ってやる! 生き残ってやるぞチクショウが!!


 再調整の時間を稼ぐため、ザンバーのスイッチを入れて形成され切らない刀身を出す。


 これでなけなしのシールドとしてビームを弾――――ああこの! 一発で壊れんな! まあ何とか間に合ったがよ!


 左腕。両足。メインスラスターの四分の一。そして唯一の武器。


 失ったのはこんなもんだ! まだまだ戦えらぁ!


「推力調整プログラム、オーバーロード! 吹かせ・・・! 亡霊!!」


 それまで十文字に展開していたフレキシブル・バーニヤが、緊急プログラムに従って背中の真後ろに畳まれる。


 その姿はまるで背中から棒を串刺しにされたかのよう。


 4つ。否、残った3つのスラスターを同調噴射させることで、ごく短時間だけ爆発的な推力を獲得した。


 足の無い体でなお鬼火を引いて、骸骨は宇宙の闇を駆ける。ジャパニーズゴーストってのは足が無いらしいなぁ!


《ちょーっ、体当たり!? 死んじゃうって! それに高度! 重力に捕まるよ! 特攻エンドにしちゃうの低ちゃん!?》


X2‐2.<当たれ! 当たれ! もう、死ねぇぇぇぇ!!>


「死ぬかよぉ!!」


 鳴りやまない耳障りなロックオンアラート。乗機の位置を警告し続ける高度低下を示す警報・累積したダメージを警告するレッドランプ。


 そんなものはどうでもいい。


 武器は無くなった。左腕も無い、足だって無い。


 それでも! 得物右腕はまだあるわぁっ!


 こするようにカスっていくビームガンの雨を受けながら、それでも広げた腕でラリアットをブチかます!


X2‐2.<Ouch!?>


「フックワイヤー!」


 そのまま敵を掴んで腰裏の装甲から射出されたワイヤーを展開し、グルグルと2機そろってフン縛っていく。


「(いっっっ……あ゛ーっ、痛ってぇなぁクソ!!)」


 衝突タックルの衝撃でコンソールにしこたま顔をぶつけちまったが、なんとかやりたい事はできたぜ。


《鼻血。鼻の骨折とかは無し》


(おう。なら怪我のうちに入んねえよ)


X2‐2.<~~~っっっ、こ、これは!?>


 向こうも追突の衝撃から復帰したか。なら目の前に見えてる光景は驚きだろうぜ。


 白と黒のスカルゴーストは射出されたワイヤーによって折り重なり、正面からタックルされたような形で完全に括られた状態だ。


 やつのメインモニター、操縦席の前面にはオレのスカルの腕のアップしか見えてねえだろうよ。


「あばよ」


 スカルゴーストは脱出装置を兼ねた戦闘機を胴体に収めている。

 その格納方式は背面ホリゾンタルから・イン差し込まれる形式ザ・ボディ


 そして背面に展開した大型の4基のフレキシブル・バーニヤは、そのままこの戦闘機の推進器でもある。


 メインモニターが一瞬だけ暗転し、やがてガコンと重い振動を響かせてゆっくり後ろへと操縦席がズレていく。


 再び灯ったモニターに見えるのは背中から脱出装置を吐き出したスカルゴーストの内部機構と――――未だ白いスカルに抱きしめられたまま足掻く黒いスカル。


X2‐2.<この! monkey!>


 スカルの肩にあるビームガンは内蔵式。射角はほぼ取れず真正面にしか撃てない。射線に入らなければいくら撃っても当たりゃしねえよ。


 ついでに言えばこのワイヤーは対エナジーコーティングをされた代物だ。ビームでもヒートでもすぐには切れねえ。


 そもそも足のヒートナイフを抜ける体勢でもねえか。両腕ごとグルグルだもんよ。


《あーなるほど。予めフレキシブル・バーニヤを畳んでいたのは3基の推力を直進1点に結集するだけじゃなくて、後でワイヤーから抜けるためだったんダ?》


「そういうこった」


 そうじゃなきゃわざわざ機動力の要を扱い辛い配置にするかよ。


 おかげでビームが躱し切れなかったからヒヤヒヤしたぜ。やつがここまで散々撃ちまくってパワーダウンしてなきゃ、こっちが撃墜されてたかもしれねえ。


X2‐2.<この卑怯者! 放せ! 放せぇ!> 


(……悪い、スカル。そのタコがおまえの取り分だ。好きにしな)


 戦闘機側の姿勢制御スラスターを噴射して回転。ステーション側に機首を向けて進発する。メインの推進剤はもうギリギリだ。


 ――――何より、あと少しでこっちまで重力圏に捕まるところだった。


《こっちはバーニヤを畳んでいたからワイヤーに干渉せず抜けられた。でも向こうは脱出できないナ。前はスカルの腕が邪魔で、後ろはワイヤー。そしてもうすぐ重力の脱出圏外》


(ああ。連中の大好きな十字を抱えて流れ星になりゃいいさ)


 ベッヘレムだったか? まあどうでもいいこった。


 タックルの運動エネルギー+ワイヤーが絡まってうまく稼働しないバーニヤ。これに半身とはいえ自分と同じサイズのもう1機を抱えては、もう減速は出来ねえよ。


X2‐2.<おのれ! おのれぇ! この悪魔! 悪魔がぁ!> 


「……決闘は『神は正しいほうに味方する』から、おまえらの国でも諍いの決着に使われたそうだな?」


 これで最後だ。ここまで散々に劣等だ猿だと差別表現で罵られたんだ。このくらいの嫌味は言ってもいいだろう。


X2‐2.<っっっ!! 悪魔ぁぁぁぁぁぁぁ!! 主よぉ! なぜ!? 主よぉぉぉぉぉぉっっっ!!>


 通信を切る。女が焼け死ぬ声なんざ聴きたくねえ。


《2機、大気圏に突入開始。一応、崩壊までモニターする?》


「いらねえ」


 サブモニターに映る光で十分だ。


 輝く流れ星が母なる星へと落ちていく。


 じゃあな、海賊兄弟。悪いがそのガキを親元まで送ってやってくれ。


 ……いるかどうかも分からん放任主義の父とやらより、今日までおまえをずっと愛してくれた地球母ちゃんに抱きしめてもらいな。




※TS男側で出した〇ロスボーン〇ンダムのフックワイヤーですが、原作漫画の描写で対ビームコーティングしていないと説明できない場面があるのでビームコートありとしています。

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