帰宅

「これに魔力を込めてみてくれ」

 

 言われた通りに、魔力を注ぎ込むと文様のようなものが浮かぶ。


「登録完了だ、もう一度魔力を込めて念じてみてくれ」


 魔力を込めて念じる。

 先程と違って、魔力がスッと宝石の中に入っていく感じがした。

 さっきので回路が完成したのだろう。


 聞こえてますか?

 うん、聞こえてるよ。


 ラートの声だった。

 その声は石から鳴り響くものではなく、頭に直接響く。


 よし、これで大丈夫そうだな。

 

 今度はナオトさんの声が聞こえる。

 

「何かあったら、いつでも連絡してきてくれ」


 そう言うと、咲の方に視線を向ける。


「さて、これで言う事は言った……咲、頼めるか?」

「あぁ、彼の宿屋でいいんだろ?」


 そう言って彼女は手を翳すと、目の前の空間が歪む。

 そこは通ってきた門と呼ばれる物の様だった。


「また、何かあれば呼んでくれ」

「はい、ありがとうございます」

「あと、ラートの事は皆の前ではクレアで頼む」


 そうだ、彼らが偽名を名乗っているのだった。

 すっかり忘れていたが、ラートはクレアと名乗っているのだ。

 

「僕達の事はいい、だけどラートだけはそうしてくれ」


 その名前で呼ぶことは何か不味いことがあるのだろう。

 それが何かを聞いてもはぐらかされるだけだ。


「わかりました」


 そう言って、僕は皆に頭を下げた後空間に飛び込んだ。

 

 



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