どうしてこうなった3

「落ち着いて、ふた……」

 

 その瞬間、視界が素早くと変わった。

 正確には胸倉を掴まれ、後ろに倒れ込んだのだ。

 机から高さがあったせいか、背中に痛みが走った。


「いたた……」


 目の前を見ると、セシアが馬乗りになり僕を見ていた。

 端から見れば、彼女が僕を押し倒した光景になるだろう。


「セシア?」


 なんていうか、酔っぱらっているせいか目が惚けて少し色っぽく見えた。

 

「サウル……」


 彼女は顔を近づけてくる。

 このままではキスしてしまいそうなほど近くなり、僕の胸の鼓動が早くなる。

 息が荒い……それにアルコールの匂いが混じった彼女の息が僕の顔に吹き抜ける。

 逃げようにも、腕はがっちりホールドされているので動かすことが出来ない。


「セシア……ちょっと……」

 

 僕の唇と彼女の唇が……くっつかなかった。

 彼女はそのまま倒れ込むようにしてスヤスヤと寝息をたてて寝むっている。


「あらあら、もう少しだったのにね~」

「あの、みてないで助けてくれたっていいじゃないですか?」

「いやよ、こんな面白そうなの放っておくに限るわ」


 それでいいのか、母よ……。

 

 他の皆を見ると紅くした顔を両手で隠して指の間で見ている者。

 子供にはまだ早いといった感じで両手で見ないようにしている者。

 温かい目で見ている者。

 驚きすぎてその場を動けない者。


 このいずれかだった。

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