お人好し

「そう、ゆっくりして頂戴」

「パパはなんて

 私の言葉に娘のラートが問いかけてきた。

 

「うん、怪我はしたけど撃退したって」

「え、怪我したの!?」


 この反応は無理もない。

 彼はあまり戦いでけがを負う事はない。


「クゥが現れたんだって、相変わらず唐突ね」


 私特製の包囲網に一切あれは引っかからない。

 如何に魔聖が優れているのかが見て取れる。


「相変わらず、クゥは何がしたいんだろ」

「さぁ? 彼は彼の目的があって動いてるからわからないわ」


 彼の目的は世界を壊すと言っているが、何か違う気がする。

 他の三聖は全く現れる気配はない。

 残るは剣聖と賢聖だ。

 クロとハク……かつて魔聖クゥと共に三聖に上り詰めた過去から現在でも最強に名前が石板に刻まれるくらいなのだ。

 

「じゃ、向こうも終わったし……」


 そう言ってラートは目の前にいるカウンの手下を見る。


「行くの?」

「うん、だって知り合いが死ぬのは嫌だもん」


 彼らはこのままいくと誰か死ぬ。

 魔力量においても試合の実践の技術を見ても、全く歯が立たないのは目に見えている。

 ラートは縮地を使い、彼らのいる場所に向かう。


「あの子、本当にお人よしね……誰に似たのかしら」


 見捨てきれないのは彼にそっくりだ。

 彼女はどうせ、自分で行くというだろう。

 だが、しばらくして何かを話している。

 そしてラートは後ろに下がる。

 っという事は自分達で彼を助けることを決めたのだろう。


「仕方ない……私も行きますか」

 

 杖で照準を合わせ、魔力を撃ち込む。

 

「転地」

 

 そう言って彼らのいる場所に向かうのだった。



 

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