135話
起き上がった方を見るとセシアがいた。
頭を押さえ、寝ぼけたように辺りを見渡す。
そして僕の顔を見ながらはぁ~っと深いため息を吐く。
ちょっと失礼じゃないですかね、セシアさん?
「あ~あ、やられちゃったのね」
「あれは、その……」
見て来たようにミリスが言葉を詰まらせると、セシアは拗ねたように頬を膨らませる。
「あのスピード、反則よ……」
セシアはそう言うと立ち上がり出ていこうとする。
「いつまで寝てんの? 早く行くわよ」
彼女は背中を向けて言った言葉は少し震えた涙を堪えたような声だった。
悔しいのだろう。
彼女は誰かに弱音を吐くことが出来ない不器用人だ。
僕はどう声をかけるべきか迷っていた。
するとミリスが後ろから抱きしめる。
抱きしめられたセシアは動揺する。
「ミリス!? 何して!?」
「ふふっ……レアの言う通り、抱き心地最高~」
レアみたいなことを言いだした。
「ちょっ……怒るわよ!?」
顔を真っ赤にしながら引き剥がそうとするセシア。
「こ、こら! どこ触って……や、やめ……」
ミリスはセシアの身体を弄るとくすぐったいのか、笑いだす。
「や、やめ……」
「ほれほれ~、よいではないか~」
「ほ、ほんとに……やめ……て……」
そう言うと、ミリスはセシアから離れる。
セシアは息を整えるとミリスを睨む。
「な、何なのよ……」
「いや~、急にレアのいう事思い出して確かめたくなっちゃって~」
嘘である。
彼女はレアと違って普段こんなことするタイプではない。
ミリスは彼女なりに元気にする方法でやっただけだ。
表情はあまり変わってないが、耳を見ると真っ赤になっていた。
彼女の照れは表情で隠せても、耳は隠せないとA全員が知っている。
セシアはそれを察したのか呆れたようにミリスを見る。
「ミリス、嘘下手ね」
「何の事かな?」
ミリスは当然、気が付いてない。
彼女はあえて嘘を突き通す。
「まぁいいわ、それより試合を見に行きましょう? 今後の為にも」
「私は行くけど、サウルはどうする?」
「あ、僕も行きます」
そう言うと、僕らは皆の待つ会場の観客席に向かった。
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