92話

 なんで僕に集る……。


「ん〜、美味しい〜」

「なんで僕が……」

「こういうのは男が払うものよ!」


 そう言ったってクレアだけでなくセシアまで、金持ちなのに……。


「はぁ……」

「………」


 セシアは僕に焼きウィンナーを前に出してくる。


「一口くらいなら食べていいわよ」

「それ買ったの僕なんだけど」

「要らないならいいけど」

「要らないなんて言ってないですよ」


 これはもしや……あーんしてくれるのか?


 誰しも女の子からあーんされるのは男の夢である。

 それに、セシアは控えめに言わなくても美人だ(性格はあれだが……)。

 

「ほら」


 そう言ってあーんしてくる。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて……うん、美味しい」

「………」

「セシア?」


 ぼーっとウィンナーを見つめてる彼女。


 もしかして食べ過ぎた?


「ごめん、食べ過ぎちゃって……」

「おやおや〜? セッシー攻めるねぇ〜」


 レアの言葉で顔を真っ赤にするセシア。


「これあげる!」


 だから、それ僕が買ったんですけど……。


「あ、はい……」

「そのかわり、あれが食べたい!」

「まだ食べるんですか?」

「うるっさいわよ変態! いいから来なさい!」

「えぇ〜」


そう言いながら引きずられていく僕なのだった。





「ふぅ、食べた食べた〜」

「満腹満腹〜」

「それは良かったね」


 こっちは財布がキツキツだよ!!

 

 魔法学院に入り、クエストで稼いだお金が少し消えた。

 幸い、父と母から貰っていた事もあり、被害は少なくて済んだが……。

 

 また稼がないとなぁ〜。


「はぁ〜」

「どうしたの? ため息なんかついて」

「あぁ、うん……何でもないよ」

「はい、これ」


 セシアは僕にお金を渡してきた。


「これは?」

「私とクレアの分……足りるかしら?」

「えっと……」

「まだ足りない? まってて」

「いや、クレアの分は受け取れませんよ」


 初めからクレアの分も彼女は払う気だった。


「お金なら心配しないで、私の家お金いっぱいあるから」


 いいかた!!


「いや、いいですよ……僕の見栄ですから」

「そう?」


 まぁ、僕もお金に困っているわけではないので彼女達の嬉しそうな顔で満足だ。


「それじゃあ、私そろそろいくね……皆、今日は楽しかった」

「送りますよ」

「大丈夫! 私こう見えて皆より強いから!」


 クレアの言葉にセシアが反応する。

 自分が一番でないと気が済まないセシアにとってこの言葉は禁句だ。


「へぇ〜、私より強いと?」

「うん」


 即答した!!


「へぇ〜、じゃあ対抗戦後に戦ってみない?」

「ごめん、必要な時以外は戦っちゃ駄目なの」


 なんだ、その厨二設定……。


「それじゃあ、私いくね」

「あ、ちょっ……」


 セシアが言う前に行ってしまった。

 ふと机を見るとペンダントがあった。

 クレアの忘れ物かな?


「ちょっと出てきますね」

「いってら〜」







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