87話 開会式

 残された僕らは訓練を中止し、待機する。

 向こうの生徒が来たので、変に戦力をひけらかすのを避ける為だ。

 セシアはというと、ずっと黙ったまま笑っている。


 こっわ!


「あの、セシア……さん?」

「何?」


 その声色は凄まじいほど低かった。


「いえ、何でもありません……」

「そう……」


 いつも怒るギャ〜ギャ〜騒ぐセシアが非常に静かなのは不気味だった。

 皆雑談する事なく、静かに座っている。


「……ねぇ皆……」


 その言葉と同時にその場にいたAクラス全員がセシアを見る。

 首を横に向けこちらを向き、


「負けたらわかってるわね?」


 その目は負けたら恐らく僕は殺される。

 彼女のその目の奥には怒りの炎が燃えていると錯覚させるような感じだった。


「も、勿論だよ……ね、皆!?」


 僕の言葉と共に全員がコクコクと首を縦に振る。


「そう、ならいいのだけど……」


 そういうと再び空を見上げている。

 そうして僕らはビクビクしながら全員が来るまで待機するのだった。





 しばらくして全員集まり、それぞれの配置場所に着くと壇上にサリスとフィオレスの学院長が壇上に立つ。


「あー、今回もまた、この時期が来たな……そちらの学院生は初めてだから自己紹介しておく。 私はサリスだ、よろしくな……」


 そうして長々とサリスの話を聞き、次は向こうの学院長話をする番になった。


「やぁ、諸君今年もこの年が来たねぇ〜! 皆、楽しんでいこ〜! 以上!」

「もっと何かあるじゃろ!」

「え〜、だってさっちゃんが話長いから皆退屈してると思って〜」

「ここではそう呼ぶなと言っておろうが! 全く……」


 皆に笑いが起きる……。


「じゃあ、もう少しだけ……それぞれが競い合い高めあう、そしてお互いを敬えるようなそんな試合をしてくれる事を私は心より願っております」


 そういうと、サリスと共に宣言をする。


「アルスと」

「フィオレスに」

「「栄光あれ!!」」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る