76話 追跡者

「いらっしゃいませ! なんだセ〜ちゃんか……」


 セシアに連れられ訓練場に入ると受付の女性が声を掛けてくる。

 

「なんだとは何よ、来るって聞いてたでしょ!?」

「あ〜、なんだせ〜ちゃんだったの……てっきりあのボンボン長男かと思ってたわ〜」


 そういうと、紙を渡してくる。


「ここに全員の名前書いてね〜」


 渡された紙にそれぞれの名前を書いていく。


「それにしてもせ〜ちゃんに友達がいたなんてねぇ〜」

「それ、どう言う意味よルカ姉」

「え〜、だって前までは友達なんてって言ってたからさ〜」

「それは…その……」

「でも私は嬉しいよ、誰とも関わろうとしなかったせ〜ちゃんに友達が出来て」


 皆記入できたので紙を渡す。

 ルカさんは記入漏れがないかチェックする。


「あれ、一人足りないわよ?」


 ミナが手を挙げ、


「私はここで待ってます、頼みましたよサウル……」

「大丈夫ですよ、皆いますし……」


 ミナは僕がそう言うと中指を弾き、デコピンをしてくる

 

「何するんですか!?」


 デコを抑えながら訴える。


「私は貴方に頼んでるんです、それと他人任せにするのは感心しません」


 そう言うとおでこを抑えてる手に中指を弾く。


「頼みましたよ、ほら皆行きなさい」


 そう言われ僕達は訓練所へ向かうのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー


「何か御用ですか?」


 サウル達が訓練所に向かったあと、後ろにあった気配に声をかける。


「流石は、魔法学院首席様ね〜」

 

 ローブを被った人が入って来た。


「何者か知りませんが、狙いはセシアですか?」

「いいえ、あなたに聞きたいことがあって……」

「あなたに話すことはありません」

 

 警戒しながらそう言うと、やれやれと余裕な感じで私を見る。


「少しだけでも駄目かしら?」

「お断りします」

「そう、なら仕方がないわね……」


 瞬間、膝から崩れ落ちていた。

 何が起こったのかわからなかった。


「どうか穏便に聞いてくれないかしら?」


 本能的に格の違いを感じる。

 女性は崩れ落ちている私に近づいてくる。


「聞きたいことは一つ、セシア・マックハートとレイス・アルスは婚約出来たの?」

「なぜその事を!?」


 その情報を知っているのは限られた人間だけのはずだ。

 不味い……このままでは彼女の命が本格的に危険だ。


「あぁ安心して、今はまだ国中には知られることはないわ」

「その情報はどこで……」

「あなたが知る必要のないことよ……ありがとう、質問は以上よ……ごめんなさいね」


 そう言うと女性はこの場から出ていく。

 なんだったんだあの女性は……。


「……んぁ、あれ?」


 ルカは何が起こったのかわからず起き上がる。


「ルカさん、どこまで起きてました?」

「えっと、皆が訓練場に向かってそこから……あれ?」


 恐らく魔法を使って寝かせたのだろう。

 今はとにかく待機だ、あの子の護衛を終えたら師匠に相談してみますか……。

 私は近くにあった椅子に腰掛け、持ってきた本を広げて時間を潰すのだった

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