70話
外に出ると、レイスは魔法を発動する。
レイスは私の頭をポンっと手を置くと離れる。
「聞こえるかな?」
脳内に直接声が聞こえる。
「よかった聞こえてるみたいだね……この魔法知ってるかな?」
この魔法は発動者が魔力を流し、連絡手段として使われる
しかし、名前を知っているだけで実際使われる事はあまりない。
理由としては以下の
1 この連結は魔力量に応じて距離がある。
2 発動者が動きながら維持するのが難しい。
3 これを取得するのは難しいと言う事だ。
「使い方がわからないって顔だね、僕の魔力を見つけてみて」
魔力を身体中に循環させる。
その中で違和感をみつける。
「見つけられたら、それを魔力で覆い隠すイメージで念じてみて……」
「こう…ですか……?」
レイスは人差し指と親指で丸を作る。
「よし、上達が早いね……流石首席」
この男の言い方は少しイラッとする。
こんなイケメンなら、普通何をしても大概の事でなければカッコ良く見えてしまうだろう。
まぁ、それほどまでに私の人間不信が拍車をかけてるって事か……。
「それより、どうしてこの魔法を?」
「少し話すにはこれがちょうど良いんだよ、君に聞きたいこともあったし」
「聞きたい事?」
「うん、君は学院が楽しいかい」
楽しいか……かつての自分ならそんな余裕もなかっただろう……。
私が決断しなければあの子達の未来は永劫マックハートに囚われていたのだから……。
「……わかりません……だけど、学院に入ってよかったと思ってます」
自分の周りは私の家の権力等、下心丸出しの輩が多かった。
だから私は下の、特に《あの子》だけは絶対に守るって決めた。
「あの、ひとつお聞きしても?」
「何かな?」
「女性当主ってなれると思いますか?」
この世界は未だに女性の貴族当主が存在しない。
周りが認めないのもあるが、大体は男性が後継者となるという事が暗黙となっているからである。
「う〜ん、それは厳しいかもね……」
この人も所詮はあっち側の人間か……。
貴族の上位、王族なのだ。
その辺りのことは不可能だと思っているのだろう。
私は目に涙を浮かべた。
どれだけ足掻こうと結局変わらないのだ。
私は下を向く。
必死に泣いている姿を見せないように涙を堪える。
「やっぱり、無……」
「だけど、君がやりたいならとことんやるべきだ」
遮るように私の顎を指で上げ、見つめてくる。
「実はね、僕も王になるのは絶望的だと言われていたんだ……ほら、継承権三位だし……」
「え、でも今じゃ完全に国民も貴方が王になるって言われてるじゃないですか」
そういうと彼は照れ臭そうに目を逸らす。
「うん、でも君のようにかつて僕は諦めかけていた……今の君は僕に似てるんだよ」
そういう彼の笑顔は繕った笑顔ではなく、心から笑っているように見えた。
「君に必要なのは心から信頼できる仲間だ……」
そういうと、目線を私の後ろを見つめる。
「私は心から信頼できる仲間を見つけた……だからここまでなれたんだ、だから君も諦めないで突き進むと良い」
そう言って後ろを見ると、明かりに照らされた影があった。
「僕は君が諦めない限り、応援を続けるよ」
「それって……」
思わず声が漏れた。
レイスも言葉を発する。
「君と婚約させてもらう……これから宜しく」
そうして私とレイスは婚約したのだった。
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