62話 喧嘩

 個室に皆で入ろうとすると、人が集まっていた。


「何でしょう? あれ……」

「?」


 そういうと、その場から爆発音が鳴り響く。

 馬鹿が魔法を放ったのだ。


「よくある事なんじゃない? 放っておけば?」


 セシアは興味のない口振りで言う。

 爆発が収まるとしばらくして誰かが宙に浮く。

 そしてもう1人が現れ、蹴りを放つ。

 あれは、確か……テイルだっけ?

 ミリスと決勝を戦ったテイル・ラノスだ。

 そして、運の悪い事にこちらへ一直線に向かってくる。

 一直線にこちらに向かってくる人に対してセシアは気づき、前に出て障壁を張る。

 吹っ飛んできた人が障壁にぶつかる。


「グヘェ!」

 

 変な声と共に現れたのはウェルサだった。

 それを見た瞬間、セシアは障壁を解除して蹴りを入れる。

 蹴った〜!?

 先程の筋肉痛で鈍かった身体が嘘のように機敏にそして的確だった。

 再びテイルの方にウェルサが吹き飛んでいく。

 再び戻ってきたウェルサに驚いたが、すぐに先程とは違う方向に蹴りを放つ。

 ドーン! っとぶつかる音が響く。

 

「さ、いくわよ……」


 セシアは何事もなかったように振る舞い入っていく。


「あぁ、うん……」


 ウェルサ……生きてるかな……。

 少なくともあれだけ攻撃を喰らっていては無事ではないだろうが……。

 そう思っていると、ホイッスルが鳴り響く。


「なにしてるの!?」


 恐らくこの学院の風紀委員? が中に入っていく。


「ほら、2人とも……いくわよ」


 いつのまにか僕とミリスの2人だけがここにいた。

 ミリスは心配そうに騒動の方を見ている。


「すみません、僕達少し呼ばれてるんでした……行きましょう? ミリス」

「え? あぁ、うん……」

「そう」


 ミリスがそういうとセシアはそっけない感じで言う。

 

「ほら、行くよ」


 ミリスの手を握り歩き出す。

 現場へ着くと、テイルが先程来た1人と何か話している。


「えぇ、そう言う事です……」

「分かりました……では彼からも……っと言いたいところですが……」


 そういうと、ウェルサがよろめきながら歩いてテイルの方へ歩き出す。


「お前……」


 テイルを睨む。

 あれだけやられたのに、睨むだけの度胸はあるようだ。

 頑丈だなぁ〜。


「お前は死刑だ! 貴族である僕にこんなことして! 覚悟しておけよ!」


 ウェルサが勝ち誇ったように言うと、女生徒は前に出る。


「ほう、君は自分の立場がわかっていないようだね……学院内での魔法禁止区域での魔法使用に権力の誇示……この学院の禁止事項を君は知らないのかい?」


 そう言われ、思い出したのかウェルサの顔が青ざめる。

 

「よし、君は停学だ……あぁ、もしも報復とか考えたら……わかってるね?」

 

 この瞬間、彼には半年の留年が決まったのだった。

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