56話 トーナメントその1

「先程の人は知り合いですか?」


 会場に向かう途中で気になった。


「いいえ、初対面だわ」

「え、そうなんですか?」

「えぇ、入り口で突然声をかけられて妙な事を言われたわ」

「妙な事?」

「ファリオスの森に行く際には気をつけろって」


 ファリオスの森のアガレス皇国の領土にある森だ。

 普通なら遠くて行く事はないのだが……。


「意味がわからなくて色々質問したんだけど、答えが全て曖昧だったわ」

「怪しすぎません?」

「そうだけど、ファリオスの森なんて行く機会なんてないでしょ」

「それもそうですね……」


 そんな話をしていると、対戦表の前に着く。

 一回戦は半分が終わったところだ。

 ウェルサは……お、一回戦勝ってるな。

 対戦表のウェルサは一回戦Eクラスの生徒に勝っていた。


 ミリスは………あ、勝ってる。

 ミリスの試合は、先程終わってしまったようだった。


「次の試合の者! 前へ!」


 試合試合がどんどん進んでいく。

 そうして、2回戦…準々決勝…準決勝…決勝と進んでいく。

 残ったのはミリスと男子生徒。

 ウェルサはあっさりミリスに敗北し、他のウェルサの取り巻きやテレス…ティア…シアはあの男子生徒にやられてしまった。

 二人は知り合いなのか、親しそうに何か話している。


「では決勝戦! Bクラスミリス・レイン対テイル・ラノスの試合をはじめる! 始め!」


 合図と同時にミリスは構える。

 先程までの魔法の構えではなく、どちらかと言えば武術の構えだ。

 左手を前に出し、右手で突き出すような構えだった。

 ミリスの右手に魔力が込もる。

 相手は魔法を放つ。

 普通の火球だが、精度が高いのが見て分かるほど綺麗な色をした火の球だ。

 野球ボールほどの火の球ミリスを襲う。

 ミリスは大きく息を吸うと、火の球に魔力を込めた右手を前に突き出す。

 突き出した右手から風の刃が無差別に飛び交っている。

 刃は複数の火の球を無差別に切り裂くと、爆発して煙が舞う。

 何が起こっているのかわからず、見ていた。

 ミリスが風魔法で煙を消すと、男子生徒は倒れていた。


 「………勝者、ミリス・レイン!」


 皆が何が起こったのかわからず、静寂が会場を包む中で審判の教官の声が鳴り響くのだった。

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