57話 査定
試合が終わり、僕達5人は教官に呼び出された。
「さて、集まってもらったのは他でもない…君達の中で今回の試合を見て誰か、推薦する奴はいるか?」
今回、この試合を見に来ていたのは僕とセシア…レアの3人だけだった。
「いない……」
「私は一応言っておくわ…無理でしょうけど兄を推薦するわ」
嫌そうな顔をして言うセシア。
彼は2回戦負け、しかもその勝った相手は次にミリスがあっさり倒してしまっているのだ。
「……あなたも大変ね」
「………」
マックハート家にウェルサを推薦するようにいわれたのだろう。
「他にはいるか?」
推薦か……。
正直、決勝は何故Aクラスに居なかったのか不思議な程、実力があった。
勿論、今回参加しているAクラスの面子ウェルサを除けば弱くはない。
決勝の男子生徒やミリスが圧倒的すぎたのだ。
「居ないのか、なら……」
手を挙げる。
ここで推薦するなら一目瞭然だ。
「僕は決勝戦の二人を推薦します」
「ほう、理由は?」
「二人は決勝以下で普通に魔法で倒していました…それに決勝では違う二人の本来の戦いだったと思います……そこから見ても分かる通り、決勝以下の試合でAに居た者達を倒した時点で推薦する価値はあると思われます」
教官は暫く考え込み、
「他には居ないのか? なら、推薦の件を考慮してAクラスを発表するものとする」
そうしてその場は解散となるのだった。
「ねぇ……」
帰りの準備を終え帰宅しようとすると、セシアが声をかけてくる。
「どうしたの?」
「見えてた? あの二人の動き」
動きとは恐らく魔力のオーラのことだ。
通常魔法というのはオーラを出し、属性を決め魔力を練り放つが基本だ。
スムーズにいくとオーラを出して魔法を放つのが早くなるのだ。
早さに的確にそして綺麗に編むことなど、相当な技術がいる。
「見えた時には放ってましたねぇ」
「………」
セシアは黙る。
自分が出来ないことをあっさり出来る彼女たちはセシアにとって脅威なのだ。
「サウル〜準備できた〜? 帰るよ〜」
教室の外からミリスが顔を出していう。
「あら、知り合いだったの……」
「えぇ、下宿してる所の娘さんです」
ミリスがセシアの方へ近づき、
「ミリス・レインです」
「私はセシア・マックハートよ。 凄かったわね、試合」
笑顔で言うセシア。
何故か僕だけにはキツい気がするのは気のせいだろうか?
彼女は他の人には厳しい事を言う事もあるが、基本的には優しいのだが…僕の時は一切容赦がない。
「ありがとうございます…セシアさんはAクラスなんですね。 マックハートって事は……あれ? 試合で聞いたような……」
「あぁ、私の兄が叫んでたわね」
トーナメントでは決勝以外は名前を呼ばなかったのだが、ウェルサは名前を出し、相手を威嚇しようとしてなんとか準決勝まで行きミリスに魔力切れで敗北した。
今思えば、学習しないなっと思ってしまう。
「あぁ、魔力切れで倒れた」
「えぇ、私の兄よ」
「なんか、すみません」
「兄の事はいいわ、率直に聞くけど…あの詠唱スピードどうなってるの?」
そう言うと、ミリスは口元に手を当てる。
「うーん、どうなってるといわれても」
「………そう」
答える気のないミリスにセシアは素直に引き下がる。
「A…くるのを楽しみにしてるわ」
「………それって……」
セシアがそう言うと、ミリスは驚いたのか目を見開き、僕の方を見てくる。
「今回のトーナメントを見て僕達と教師で空いていたAの人選をしていたんですよ……僕達は推薦する形でそれを考慮してAにいく人を決めるそうです」
「それで、私たちは決勝にいた貴方達を推薦したの」
君はしていないんだけど……っと言いたかったが、言うと後々ぶちのめされそうなので黙る。
「私とテイル君が……」
そういうと、セシアは歩き出す。
「校門まで一緒に行きましょう? 後、敬語はいいわ…これからよろしく」
「………えぇ、よろしく」
僕達は校門まで何気ない話をしながら向かうのだった
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