45話 待ちくたびれ

 一方その頃……


 セシア・マックハートは待っていた。

 確かサウルだっけ? その少年が来るまで私は待っているのだが……

 彼が打開策を模索するとのことで同い年の少年ということもあり、私は少し期待していたのだが……。

 逃げたのだろう……かれこれ30分は経過している。

 結局彼も同じだったのだ……我可愛さに保険をかける馬鹿みたいな貴族と同じだったわけだ。

 深いため息をつき、マックハート家の次期党首の兄の方を見る。

 兄は落ち着いた様子で状況を見ている。

 これも試験か……。

 兄のウェルサが落ち着いている状況で察することができた。

 彼は臆病者だ……そして卑怯者でもある。

 実力もないのに権力を振りかざし、さも自分の実力のように振る舞う姿は私の見てきた貴族のお手本そのもので……嫌悪そのものだ。

 その彼がこれだけ落ち着いているのだ……ということはなんらかの試験であることは間違いない。

 制圧してもいいけど、どうしようかしら?

 内容がわからない事には下手には動けないし……。

 あたりには泣き喚いている生徒や、怯えて端に蹲っている生徒で気が滅入りそうになる。

 立ち向かう子はいないかしら。

 ウェルサを除けば、3人の生徒が震えずに状況を見ていた。

 ウェルサのように試験を知っていた……若しくは実力があるかの二択だ。

 考えていると、男は数人の生徒を指差す。


「そこのお前は釈放だ……ついてこい」


 呼ばれた生徒は嬉しそうな顔でローブを被った人についていく。

 貴族の特権と言わんばかりの顔で出ていく姿は鬱陶しさを極めている。

 そうして人数は40人程いたクラスが、10人に減る。


「こんなところですか……今年のAは」


 そう言うと、男は拍手を送る。


「おめでとう、君達は優秀だ……これからも精進したまえ」

「ちょっとまってください」

「どうした? えっと……」

「コロナです……コロナ・ウィンベル」

「どうしましたか?」

「これは何の試験でしょうか?」


 コロナという少女は物怖じする事なく、質問する。

 

「これは状況把握と、適した行動ができるか……それのクラス分けですね」


 そう言うと、ローブを被っていた人たちの顔がそれぞれ顕になる。


「ここにいるのは皆教師陣と……」

「先程、君たちの前で話した生徒会長のルミリナだ……」


 その立ち姿は優雅の一言に尽きた。

 その場所だけ、雰囲気が違って見えるほどだ。


「この教師陣の他にも教師がいるが、主にここに居る教師が君たちに教える」


 各教師の自己紹介が済み、解散となるのだった。

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