34話 お祭りその2
「……ふぅ」
「お疲れ様。 はいこれ」
ルラはタオルをサウルとリラに渡す。
「ありがと」
「ありがとう」
二人はタオルを受け取ると、自分の身体を拭く。
「もう今日はいいんじゃないかな?」
「そうね。 今日はもう十分訓練したし、私はいいと思うわ」
ルラが言うリラもそれに賛同する。
「もしかして、お祭り行きたいんですか?」
言い方が気にかかったのでサウルがそう言うと、二人は目を反らす。
「な、何の事?」
図星とサウルは確信する。
「そ、そうよ。 ほら、私達も村の安全を守らないと……」
「それだけですか?」
言い訳をしようとするリラに、サウルは意地の悪そうな顔でそういう。
リラはどう言い訳しようか必死で考える。
「そうよね!? ルラ」
「そ、そうだよ! サウルこそそんな風に言うってことはサウルも行きたいんじゃないの?」
「まぁ、行きたいですね」
そう言うと、二人は勝ったと思ったのか、勝ち誇ったような顔でサウルを見る。
この顔嫌だなぁ~っと思いながら二人を見る。
「何ですか?」
「サウルも行きたいんじゃない」
「それはまぁ、お祭りですし」
「なら決まりね、家に帰って着替えたらリビング集合ね!!」
「いえ、今日は魔法の研究を……」
「い・い・わ・ね!!」
サウルが言い終わる前にそういうリラ。
こういう時の彼女は、例え勉強中でも引きずられて連れていかれるので、サウルはもう諦める。
「はいはい、わかりました。 じゃあ帰りましょうか」
そう言うと三人は家に帰り、支度を済ませる。
今日は二人の誕生日だ。
サウルは忘れたふりをして密かにプレゼントを用意している。
喜んでくれると良いなっと思いながらプレゼントの箱を開ける。
きっと似合うだろうな。
そう思いながらプレゼントをポケットにしまう。
部屋を出ると、隣の部屋に声をかける。
「準備できました? 二人とも」
「こうして、こう……よし、出来たわ」
声をかけるが、何かをして聞こえていないと思いもう一度ノックする。
「あの~、入りますよ」
「ちょっと待って! 開けないでよ!?」
開けかけるところで再び閉じる。
前にそれで着替え中で殴られた経験があるので、直ぐに閉じる。
「早くしないと、美味しいのが売り切れますよ」
そう言うと扉が開く。
目の前にはヒルダが、扉を開けてサウルを見る。
「大丈夫よ。ほら入って」
サウルはそう言われ入っていくと、彼が前世で見た祭りの定番とも呼べるべき服装の二人がそこにいた。
西洋風の世界観で浴衣を拝めるなんてサウルは思っていなかったのでサウルは少し驚く。
「浴衣?」
「あら、浴衣を知ってたの?」
「え、えぇ……本で少し読んでいたので」
「そう、それで? 何か言うことはない?」
ヒルダにそう言われ、サウルは二人を見る。
正直に言うと、似合っているの一言に尽きた。
リラは紅をルラは蒼を基調とした浴衣だ。
日本の正式な浴衣ではなく、浴衣スカートだ。
足は少し出て、上は浴衣というスタイルだ。
二人は恥じらいながらサウルの方を見ている。
「二人とも、とってもかわいいです」
そう言うと二人は顔を真っ赤にしてリラに頭を叩かれる。
「痛いです!」
「うるさい。 それじゃあ行くわよ。 ほら、ルラも」
「あ、うん」
全くなんだよっとサウルは思いながらリラを見ると、二人は部屋を出ていく。
「何でしばかれたんだ?」
「ふふっ」
サウルが言うとヒルダは微笑ましそうにしている。
「行くわよ! サウル」
「はいはい」
下からリラの声が聞こえたので、サウルは二人の元へ向かうのだった。
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