第16話王立図書館にて

 ここが王立図書館か……。

 

 目の前には表現のしようのない大きい建物があった。

 

「さぁ、入りましょう?」


 ミリーはそう言い入ろうとすると、兵士がミリーの方を向く。

 ポケットから冒険者カード取り出し兵士に見せる。

 すると兵士は僕達の方を見ると、


「この子達の身柄は私が責任を持つわ、いい?」


 ミリーがそう言うと兵士は頷く。


「了解した、どうぞ……」


 兵士は扉を開ける。 


「さ、行きましょ……」


 僕達は図書館に入っていく。

 

「わぁ~」


 まるで宝物でも見つけたかのような、キラキラした瞳でルラが辺りを見回している。

 

「テンション上がってるね……」


 ルラはいつになくテンションをあげ僕の方に顔を近づける。


「そりゃそうよ、だって私はここに行くのが夢だったんだから!」


 いつも物静かな雰囲気の彼女が、リラのように生き生きした顔をしていた。

 

「さぁ、どれから読もうかしら!!」


 辺りを見渡すと、手を掴み引っ張ってくる。


「行くよ!! サウル!!」


 彼女の手が触れ、鼓動が早くなる。

 

「え、ちょっ……」


 彼女は駆け出し、引っ張られるようについて行く。


「二人とも、迷子にならないでよ~!!」


 後ろの方からミリーの声が聞こえるが、ルラはまるで聞こえていないのか、本を見渡しながら走っていく。

 走っていくとルラは突然立ち止まった。

 彼女が立ち止まった彼女の方を見ると、何かを見つけたのかそこを見ている。

 恋愛小説の本……ではなく、魔法の本のコーナーを見つめていた……。

 

「恋愛の本はいいの?」


 彼女は先程のキラキラした顔ではなく、真剣な表情で首を横に振る。


「目的が違うから、今日は……」

「目的?」

「うん。 魔法の本を見られる場所は、ここだけだから……」


 確かに外にある本は魔法は乗っていても基礎的な物が多く、本格的な魔法についての本を置いているのはここだけなのだ。


「ふ~ん」


 彼女を見ながらそう言うと、口を尖らせながら、


「………何よ」


「何か言いたげね……」と言わんばかりの眼で僕を見つめる。


「いや、好きだねぇ~。 魔法……」


 そう言うと恥ずかしそうに顔を反らす。


「悪い?」


 向こうを向きながらそう言う彼女に僕は思ったことを口にする。


「いいや、いいと思う……やりたいことがあるって凄い事だから」


 何かに熱中できるのは良い事だ。

 彼女は「ふ~ん」っと向こうを向きながら言うと、本の方へ向かっていく。

 本棚に着くと、一個一個しまってある本を指を差し、しっかり確認する。

 やがて、本の前で指がぴたりと止まる。


「あった!」

 

 そう言い、その本を手に取ると再び何かを探す。

 そうしてまた本の前で指が止まり本を手に取るとこちらに戻ってきた。

 1つは「聖魔法について」と書かれた本だ。

 

 そういえばルラは聖魔法だったな……。


「はい、サウル……」


 もう一つの本、「陰魔法について」と書かれた本をルラから渡される。


 これは僕にも勉強しろということなのか!?


 だが、彼女は楽しそうな笑顔で渡してくるので受け取るしかない。


 この笑顔、反則じゃないか……畜生!!


 ルラは早く読みたいのか僕の方を見ながら走り出し、


「あっちに読める机があるよ、早くいこ?」


 ルラはテンションが上がり、周りが見えてない。 


「前見ないとぶつかるぞ」

「大丈夫だよ……リラじゃないもん!!」


 そう言うと案の定、人にぶつかる。


 言わんこっちゃない……


「ご、ごめんなさい!!」


 ぶつかった人の方を見るとルラの方を見て心配そうに、


「大丈夫かい? けがはない?」

「あ、はい!」

「気をつけなよ。 危ないから……」


 一瞬女性かと思ったが、声は男だった。

 男はルラを起き上がらせると、僕の方を見て、

 

「君も彼氏ならしっかりと守ってあげないとね」


 彼は男の僕から見ても綺麗な顔立ちだった。

 風貌は中性的な顔立ちで、女性と言われても違和感が無い程、綺麗な容姿をした蒼い髪の男だった。

 ルラはというと、顔を真っ赤にして何かを呟いていた。


「か、彼氏……」


 何かブツブツ言っている。

 まさか……一目惚れ!?

 いやいやまさか、僕の幼馴染がそんなちょろいわけ……。


「それじゃあ、気をつけなよ」


 そう言って男と連れの二人は歩いていった。

 ブツブツ言っているルラに駆け寄る。


「大丈夫? ルラ……ルラ?」


 ブツブツ言ってるルラ……。

 これは重症だな。


「お~いルラ?」

「―――――――――」


 小声で何を言っているのかさっぱり聞こえない。

 何度も声をかけるが、こちらの声に全くと言っていい程反応しない。


「お~いルラ?」


 肩を揺すると、ようやく我に返ったのかこっちに向く。


「へっ!? あ、うんどうしたの?」

「大丈夫? 顔真っ赤だけど……」


 目が合うと彼女の顔がさらに赤くなる。

 あの男に惚れたかな?

 まぁあれだけのイケメンだ、ほれたって仕方がない。

 蒼い髪で蒼く透き通った瞳のイケメンで少女漫画に出来るような男?だった。

 ルラは目を白黒させながら、 


「あ、その……大丈夫!! ほら行こう?」


 オドルラになっている。

 目を合わせることなく、数歩先を歩いている。

 

「待ってよルラ~」


 彼女を追いかけるのだった。

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