6話 お話
「ただいま帰りました~」
「………」
「………?」
何も声が帰ってこない……。
中に入っていくとガタ!っと大きな音が鳴り響き、上から二人が下りてくる。
ウオラとミリーが下りて来た。
「おかえりなさい……」
「早かったな……」
「えぇ……」
降りてくる二人を見て僕は悟った。
この二人はイチャコラといたしていたのだと……。
急いで着替えたのか、少しはだけている服に仄かに火照った顔で汗が少し流れているミリー。
邪魔したかな……。
ここは邪魔するのは悪いので、
「あ、今日僕は二人に晩御飯に誘われたんです。 行って来てもいいですか?」
「え、えぇ……。 それは構わないけど……」
「じゃあ、僕はこのまま二人の家に行きますね……」
「えぇ、気を付けて行ってらっしゃい」
「行ってきます」
そう言って出ていく直前に、僕は二人に向き直り、
「僕、弟か妹欲しいな!」
二人は僕が何をしているのかを悟ったことを知ったのか、顔を赤くして下を向いていた。
「それじゃあ、行ってきます!」
そう言って、僕は外に走っていく……。
いいなぁ~。
そう思った僕は何も考えずに出たことを後悔する。
ご飯、どうしよう……。
しばらく時間を潰す為にふらふらと歩いていく……。
僕は取り敢えずリラたちの家へ向かう。
行ったという辻褄合わせの為だ。
話題はある、例えば明日の事でもいいし何でもいい……。
まぁ重要なこともあるのだが……。
僕は彼女達の家にノックする。
「こんばんわ~」
彼女達の父ルースが出てきたので挨拶する。
「リラとルラかい? 今ちょうど風呂に入ってて、中で待つと良い……」
第一関門クリア!
心の中でガッツポーズをしながら、
「お邪魔しま~す」
「それにして君に会ってから、二人ともすごく楽しそうにしてるよ」
「こちらこそいつも二人にはお世話になっております」
「サウルじゃない、どうしたの?」
「こんばんわリラにルラ、ちょっとお話がありまして」
「じゃあ僕達は席を外すよ、三人でごゆっくり……」
「いいえ、今日はルースさんにも聞いてほしいことがあります」
「僕に? なんだい?」
いずれ話さなければならない事だ。
なら今話しておいた方が良いだろう。
「リラが剣を学びたいと言っているのを、知っていますか?」
これは大事なことだ、彼女は話すと言っていたが表情を見るにまだ話していないのだろう。
「剣? リラどういうことだ?」
「リラ?」
母ヒルダは心配そうにリラを見ている。
「お父さん、私、剣の修行がしたいの!」
ルースは大きくため息をつきながら、
「駄目だ、君は女の子だ。もし、怪我でもして一生消えない傷が残ったらどうする?」
「私はやってみたいの!」
「駄目だ。 そんな危ないこと……」
ルースの気持ちはわかる。
大事な娘にそんな危ないこと、僕が親でも止める……。
「でも」
「駄目なものは駄目だ」
リラは認めてもらえなかった事を不満に頬を膨らまし、
「お父さんなんて嫌い! 大っ嫌い!」
怒りながら走って部屋の方に向かって行く。
「待ちなさい!」
「ルースさん、少しいいですか?」
「今はそれどころじゃ……」
「ルラ、お願いできる?」
コクりと頷きルラはリラを追いかけていく。
ルースが追いかけたところでリラは余計に怒って外に出るかもしれない。
ルラなら姉妹なので何とかなるだろう。
「何を勝手に!」
「今行っても逆効果です。 それにルラがいます。 彼女がいるので大丈夫でしょう?」
「だが……」
そう言うとルースは椅子に座りなおす。
「あの、まだお話があるのですが」
「話? 剣の修行ということなら……」
「いえ、それとは違います。 ルラの事です」
「ルラ?」
ルラの事を話し、話題を変える。
「実は彼女は魔法に興味があるみたいなんです」
「魔法? ルラはそんなこと一言も……」
「彼女は自分の意見を言えないところがありますから、僕も何となくそう思っただけです。」
確信はないが、彼女はよく魔法の出てくる本を読むし、リラのあの言葉……。
「ルラもどう?」という言葉は恐らく、ルラもミリーさんに魔法を教えてもらえるようにお願いしたら?っていう意味に思えるのだ。
「魔法、いいじゃないか……」
先程のリラの時とは裏腹に、嬉しそうな顔をしている。
魔法は剣と比べれば危険度は低い。
撃ち合いとなればそうはいかないが、学ぶ分には問題はないからだ。
「僕の母は元冒険者で魔法使いでヒーラーなのは知っていますよね?」
「あぁ、村で怪我した者の治療してくれているからな」
「まだ確認を取ってみないとわかりませんが僕の父ウオラと母ミリーにお願いして僕と一緒に修行しようかと考えています」
「二人がそう言っていたのか?」
「剣についてウオラに教えてほしいとリラに言われただけなので」
「剣は良いが魔法はな……」
ここで一気に畳みかける
「そうするとルラだけとなってしまい、二人の仲が悪くなってしまいます」
「………じゃあ、リラに魔法に行くように説得を……」
「彼女がそんな簡単に自分の意見を曲げると思いますか?」
彼女はいい意味で意志が強い、悪い意味では頑固なのだ。
二人もそれは知っているようで、
「そうだよな……」
ルースはそう言うと黙っている。
僕も彼が考えているので声を発するまで黙る。
「貴方、もういいじゃない……」
ヒルダがそう言うと、ルースははぁ~っと深くため息をついて、
「わかった。 でも一つ条件がある。」
「条件?」
「あぁ、もしリラに大きな傷が出来たら、サウル君責任を取ってもらうからね」
「責任?」
「あぁ、リラを嫁にもらってもらうよ」
「………えぇ!?」
いや、ちょっと待って僕には蒼という心に決めた子がいるのに……
「どうする?」
六歳の少年にいきなりそんなこと言うか?
「………両親の返答を聞いてからでもいいですか?」
「そうだな、話はその後でもいい」
「ありがとうございます」
「それじゃあ二人を呼んできてくれ。 飯にしようサウルも食べていきなさい」
「いいんですか?」
「構わないよ。 君は家族同然だと思っているからね。 遠慮しなくていい」
「ありがとうございます」
「それじゃあ二人を呼んできてくれ。 後は任せたよ」
「わかりました。 あとお願いがあるんですが」
「ん? 何かな?」
「ルラには僕から聞くので、魔法の件は言わないでもらえますか?」
「わかった……」
僕はヒルダさんに彼女達の部屋に案内される。
僕を案内すると、ヒルダさんは下に降り、晩御飯の準備を進める。
大丈夫かな……。
僕は彼女達の部屋をノックすると、ルラが現れた。
「大丈夫?」
「うん、もう落ち着いた……」
「中に入っていい?」
「どうぞ」
僕は中に入ると、眠っているリラがいた。
目には泣き喚いていたのか、目が腫れている。
「大変だったでしょ……」
「もう慣れっこだよ」
ルラにそう言うと、彼女の寝顔を見ると疲れたのか、スヤスヤと完全に熟睡してしまっている。
「見過ぎだよ」
ルラに本で頭をこつんとされる。
「女の子の寝顔を見つめ続けていいのは王子様か、旦那様だけなのです」
「えぇ~」
「それで? どうだったの?」
「あ、うん家の両親がオッケーならいいってさ……」
「よかったね、リラ」
自分のことのように喜ぶルラ
だけどそこには嬉しそうな中に羨望の顔が垣間見えた
やっぱりやりたいんだな……。
「とにかくご飯だから降りて来いってさ……」
「うん、リラを起こしたら行くわ。 寝起きの顔を見られたら彼女暴れるもの……」
「違いない。 それじゃあ下で待ってるよ」
そう言って僕は下に降りた。
暫らくして、リラは走って降りて来た。
「お父さん本当にいいの!?」
「あぁ、ウオラさんが良ければな……」
ルースは僕の方に目配せしてくる。
僕の約束はウオラの返答次第だ。
リラの方はというと、喜びでウサギのようにピョンピョンはねている。
「落ち着きなさい。 リラ」
「だってだって、楽しみなんだもん!」
「ほら早く食べなさい」
「はーい!」
ルラが下りてくると僕達は席に着き、ご飯を食べるのだった。
夕食を食べ終え、僕は帰宅しようとする。
「それじゃあ僕は帰りますね」
「泊まっていけばいいのに」
「両親が祝杯を挙げそうなので……」
あの両親ならリラたちの家にお泊りな時点でやりそうな気がするのだ
「そ、そうか。気を付けてな」
「はい、リラ、少しいい?」
「?」
「耳貸して……」
「どうしたの?」
僕は彼女の耳元であることを話した。
「わかったわ!」
快く快諾してくれる。
「それじゃあ僕はこれでルラ、またね」
僕はそのまま家に帰ろうとする。
僕は二人に手を振ると、二人は僕がいなくなるまで玄関から手を振るのだった。
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