第9話 不安 エルミナ視点
「エルミナ?どうした、大丈夫か」
名前を呼ばれて見上げると、ルディがいつの間にか目の前に来ていて、俯く私を覗き込んでいた。
「あ、あの…」
「もう部屋に戻ろう。送る」
短くそう言うと、周りを確認するように視線を巡らす。
「え…戻るの?いいの?」
ミリーゼたちも心配そうにまだ帰らないでくれている。
(大事な出会いの場、ルディはいいの?)
口には出せない不安が積もっていく。
「俺はお前を送るために残ってただけだから。でもこれ以上はダメだ。寮長、エルミナもらってくけどいいか?」
「は、はい。どうぞ!!」
「行こう」
そして私の手を握って、ぐんぐん出口に向かって歩いていく。
(は…速いっ)
足がもたつく。
目の前で談笑している男子生徒たちがいる。避けられないかもしれない。
ぶつかるのを覚悟で、心の中で先に謝る。
その時、ぐっと強い力で手を引かれた。腰にはルディの手が添えられている。
(!!)
力尽くで進行方向を変えられたのだとわかった。
男子生徒とはぶつからずにすんだが、強い力と速いスピードに翻弄されている。
この力強さが、すごく好きだった。
まっすぐ、迷わず、私を一人ぼっちの世界から連れ出してくれた――とても元気な男の子。
(好き、好き…大好き)
ホールを抜けたルディが一息ついて、私の顔を見て…驚いた表情をした。
そして目を閉じて、「悪かった」と一言謝って――
そのあと私たちは何も話すことなく、女子寮の前…さっき再会したあの場所で別れた。
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