第3話 入学   ルディウス視点

学院に在籍できる最後の一年にすべりこみでわざわざ入学してくるなんて…目的は学びではないだろう。

家の事情は様々だ。それはわかってはいるが、必死に毎日を積み重ねてきた俺はそんな風に冷めていた。


他の生徒たちは新たに加わる学友に期待し、ざわざわといつになく騒がしく、落ち着きをなくしていた。

冷めてはいるが、俺はここで学ぶ以外にもやらなくてはならないことがある。

多くの貴族と、そしてあらゆる分野の家としっかりとした良好なつながりを作ること。

だから当然、新入生とも友人と呼べる関係にならなければ。


入学式を終えた生徒らが、教師に連れられて学院内を移動している。

その新入生を一目見ようと、遠巻きに人だかりができている。


「ここからだとよく見えないね~」


友人のクリスがのんびりとそう漏らす。


「そうだな。まぁどうせあとのパーティーで見れるだろ」


ごちゃごちゃした場所に割って入るなんて紳士じゃない。

そう思ってその場を立ち去ろうとした、そのとき――周囲がざわついた。


「わ、すごい…お人形さんみたい…」


そんな声があちこちから聞こえた。


「わぁ~!すごい可愛い子がいるよ!」


クリスにはその人物が見えたようだ。

俺の袖を引っ張って見える位置に誘導する。

引っ張られることに眉をしかめながら、俺の目にもその姿がチラッと見えた。


「…エルミナ…?」

「え?知り合い?」


口の中で呟いた彼女の名前を、クリスは聞き逃さなかった。



そこにいたのは、人形のように可憐な――俺の婚約者だった。

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