第2話 始まる最後の年   ルディウス視点

「みなさん、進級おめでとうございます。この学院で学べるのもあと一年です。みなさんにとってとても貴重な一年となります。これまでに引き続き、精一杯励んでください」


王立学院。

ここは貴族の子息令嬢が多く通う、全寮制の学校だ。


国内には数々の学校が存在するが、特に貴族の中ではこの学院を卒業することが必須といってもいいぐらい重要視されている。

そうして入学した子どもたちは7歳から17歳の卒業まで最大10年間をここで学び、生活することになる。


この学院に庶民はほんのわずかだった。通うためには多額の資金が必要だからだ。

そのためか1年単位で生徒が入れ替わることも珍しいことではない。

普通の学校なら考えられないが、『王立学院に在籍したことがある』それだけでステータスとしては十分なんだという話をして去っていった学友がいた。


進級した生徒への教師からの挨拶が終わる。


入学や卒業には力を入れているようだが、進級式なんて簡単なものだ。

式典から解放された生徒たちは一度寮に戻るのだろう。

顔ぶれのあまりかわらない友人たちと連れ合いながら、のんびりと歩き出す。


この中に7歳で入学してから今まで在籍し続けているものがどれくらいいるだろうか。

そういう俺も10歳からの途中入学だ。

そして本気で勉学に励んでいるものはどれだけいるだろう。


ここは普通の学校とは違う。

学びたい者だけではない。将来の伴侶を探しに来る者、家同士のつながりを作る目的の者など、内に秘めた目的はそれぞれだ。自分のためでなく、家のために在学しているものも多い。

それでも本気で勉強しようと思えば、家庭教師に教えを乞うよりも多くを得られる。

この学院で学び、生活することで人生を成功させたものは多いと聞く。

俺もそうありたい。そのためにここにいる。

卒業は17歳。この国では18歳で成人として扱われる。


そして今年、俺は17歳になる。

ヴィクトール侯爵家の三男、ルディウス・ヴィクトールの学院最後の一年が始まろうとしていた。

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